学習通信030615
 
◎お金がなかったら、まわし読みしなよ。いいと思ったら、あらためて買えばいい。
 これ最高だね。労働学校の校長先生が言っていたよ。
 
■──
ドブの中から、星が飛び出すこともある。死んでしまえばいいような人間が、たたんでいた翼を広げて大空に舞い上がることもできる。そんなことを、証明してくれた男が、現にいるではないか。
人間の一生は、トーナメント戦じゃない。勝ったり負けたりをくりかえすリーグ戦だ。敗れっぱなしなんてない。
親父も負けた。おまえも序盤戦で負けた。いいよ、中盤戦から盛り返せよ。
逆転しろよ!
矢沢は、そんな内容の歌を、この本の中で歌い続けてくれたと思う。
「成り上がれ!」とシャウトしているのだ。
ロックンローラーになりなさい、とは言っていない。
スターになれとも言っていない。
「オレみたいにやってきて、成功した例は、何十万にひとつだろうな」
あとに続く気があれば、どうぞ、彼は言う。
しかし、道は、たったひとつではない。自分に合った道を見つけて、そこで「成り上がれ!」
可能性は、山ほどあるはずだ。黄金の山も、いまはかくれていて見えないかもしれないが、現代の「ゴールドラッシュ」は、もう始まっている。
矢沢永吉は、重いスコップで掘りまくっている。自分の腕で、汗を流して。
「成り上がり」を軽蔑するのは簡単なことだ。しかし、どんなに由諸正しい家系の、立派な紳士でも、先祖がどこかで成り上がったはずだ。
「自分が、まず、やんなよ、色々と、ノーガキをたれる前に」
自分のスコップを持って、ひとりで街に出て行く。それしかない。疲れて帰る。また出て行く……。
幸運にも、両親が健在で、経済的にも豊かで、学校に通っているあなただって、やっぱり選ぶなら、「成り上がり」にしてほしい。
もうひうとつは、「ぶらさがり」しかないと思うから。
数多くの読者をつくること以上に、矢沢永吉や、僕らが期待しているのは、そのことなのである。お金がなかったら、まわし読みしなよ。いいと思ったら、あらためて買えばいい。
そんな本だ。
(矢沢永吉著「成り上がり」(1980年に出版 角川文庫)の解説 糸井重里 305〜307p )
 
成り上がり≠ヘ単なるハングリー精神ではない。自分が見えている、仲間を見ている、社会も見えている、それだけものごとが見えていないと成り上がり≠ヘ出来ない。努力すればナントカなる∞努力してもしかたない≠フ間をゆれる私たち。これまでの学習通信≠ニ合わせて深めて下さい。私的にも社会的にも行動の時ではないかと……。