学習通信030617
 
◎秘訣は「できる人オーラ」を極力発散しないことだ。なんていやなことだ。働く本質的な目的から疎外され成果主義、業績主義に追いまくられる結果は、ちょっと考える以上に深刻な結果を生むことになる。
 
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成果主義時代ゆえの「出る杭」の悩み 職場に渦巻く査定嫉妬 
成果主義で、給与も昇進も差が広がる中、「できる奴」が妬まれる。悪い噂をメールで告げ口されたり、同僚に「いじめ」られたり。職場の嫉妬をうまくかわす方法はあるか? 
 
その方法は
 
同期より常に2、3年早く昇進してきた。年収1300万円は成績下位の同僚の約2倍だ。当初は、陰口もたたかれたが、最近ではなりを潜めている。秘訣は「できる人オーラ」を極力発散しないことだ。
 
背広もネクタイも流行最先端ではないけれど、適度に洗練された好感度の高いものを選ぶ。がりがり残業をしないで、仕事が終わればさっさと帰る。趣味のサッカーや車の話をして、仕事人間ではないことをさりげなくアピールする。──常に、人より一歩後ろに下がる気持ちだ、ひいては円滑な人間関係につながるのだ。……
(アエラ NO.26 30〜32p)
 
■ これでほんとうになんとかなるのだろうか? 
 
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労働力という商品を売ってしか生活と生命を維持できない労働者は、その商品を少しでも高く買ってもらうため、まねかれることができない競争関係におかれます。けれども、そこから労働者は長いあいだのたたかいをかけて学び、資本と対抗するためには、団結以外に道はないことを知ったのです。「成果主義」はそこに攻撃の目標をおきました。労働者間の競争を激化させ、労働者をバラバラにして団結を弱めることを目的にしたイデオロギー攻撃です。
 
かつて「日経新聞」は、労働組合の一部が「成果主義」賃金を支持したとき、次のような主張をだしています。「組合員は団結して全員の賃金を引き上げるというのが労働運動の存在意義ではないか。『成果主義』賃金などを支持したら、労働運動の存在そのものを否定することになるではないか」と批判しました。
 
「成果主義」というイデオロギーを支えている要因は、一つは日本の労働市場が閉鎖的であることです。多くの企業が、たしかに中途採用も導入してきていますが、それはやはり期間があり、外国のようにいつでも採用試験があるわけではありません。もう一つは構造的失業者群と不安定雇用労働者の増大です。つまり、労働者の雇用不安という実態に支えられたイデオロギー攻撃です。その意味では「新企業主義」と言えるかも知れません。
(荒堀広著「職場をたたかいの拠点に」新日本出版社 8p)
 
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多様な個性による能力競争では、優劣の上下差はできない、と言う人がいる。しかし、それは、社会が異なる価値を認め、多様な才能を認めて、それぞれに生きる場を与える社会であったときに、はじめて一般にそう言えることだ。利益一辺倒の効率社会では、利益に適合するか否かの基準でしか能力を評価しない。
 
人間の生活は、生命の全体の営みであり、競走馬のような単一の目的のために走っているのではない。
 
生活には、人間的な全体性がある。
生活の中では、病気や障害をもつ子どもは、よりいっそういたわられ、大事にされる。親は、子どもの心配事や喜びを共有するだろうし、愛情に効率主義は問われない。地域社会は福祉政策や安全を優先して求める。そこでは競争原理よりも助け合う依存原理が土台になっていることを人びとは十分にしっている。安心と安全と信頼できる人間関係は、生活にとって競争よりも大切なものなのだ。全体をもつ生活から、はじめて総合的判断が生まれる。
 
たとえばより多く稼いだとしても、社会保障が後退すれば、所得の増加分も水の泡となり、生活の安心はなくなる。成果主義で賃金が増えたとしても、疲れ果てて、自分で教養を高める時間もなく、子どもとの団欒の時さえもてないのでは、人間らしい豊かな生活はできない。
 
要するに、生活のもつ全体性(生活の質といいかえてもいい)は、部分の利益の欺瞞性を見抜く。
(暉峻淑子著「豊かさの条件」岩波新書 119〜123)
 
成果主義、業績主義が人間の生活を破壊する。ぎすぎすした職場の人間関係、労働者という人間の使い捨て……家庭も壊れていく。
 
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地上に降りた人類の祖先はの猿たちはどうやって猛獣から身を守ったか。
第1は、緊密な集団をつくり、団結の力で身を守りました。そもそも樹からおりたのは集団として、群れとしての行動だったと考えられます。個として、ばらばらに樹から降りたのでは、地上での生活は危険で不可能であったでしょう。彼らは群れとして地上に降りたにちがいありません。そして固く団結して猛獣に対抗できた群れだけが生きのびることができました。十分に団結できなかった群れは滅びてしまったでしょう。人間にとって団結できるかどうかはまったく生死を分ける重大事であったのです。
(鰺坂真著「哲学入門」学習の友社 28p)
 
連帯・団結には今日でも人間にとって生死に関わって有効な力をもっている。