学習通信030701
◎1億円以上稼ぐような一部の大金持ちと、年収300万〜400万円ぐらいの……。
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新階級社会では、日本人の働き方が大きく変わる。
いままで日本人の働き方には大きくわけて二つの選択肢しかなかった。
一つはパート、アルバイト、フリーターという形で年収100万円前後の安い賃金で働く働き方である。
もう一つが、正社員のサラリーマンになって、いやな上司やいやな顧客に歯を食い縛って我慢しながら、つまらない仕事でも、私生活や家族を犠牲にしてでも、必死になって働いて年収700万〜800万円をもらう働き方だ。
だが、いまは世界的にみてもトップレベルの日本のサラリーマンの年収は否応なく、世界の標準に近づいていかざるを得ないのだ。
ただし、いまの日本のサラリーマンの年収が一律に世界標準に向かって下がっていくという変化が、今後起こるわけではない。今後の日本社会は「所得の三層構造化」が現実になっていくだろう。
1億円以上稼ぐような一部の大金持ちと、年収300万〜400万円ぐらいの世界標準給与をもらう一般サラリーマンと、年収100万円台のフリーター的な人たちの三層構造だ。
三層のうち、上の方は自分で働くというより「資本家」の性格を強めていくのだろう。カネがカネを稼いでくれるようになるのだ。
そして、下の二層はずっと賃金労働者として働きつづける。
1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」では、雇用形態を3つのグループ、すなわち「長期蓄積能力活用型グループ」、「高度専門能力型グループ」、「雇用柔軟型グループ」に分類し、これまでの終身雇用制に近い雇用形態を長期蓄積能力活用型グループに限定し、高度専門能力活用型グループと雇用柔軟型グループについては、契約社員や、派遣社員、パートタイマーなど非正社員で対応する方針を明らかにした。
つまり、大企業の方針としては、従来のように、一律正社員として採用する時代はすでに終わっているということだ。
これまでは、学校を出て就職をして、その会社にずっと勤めるというのが、多くの国民が考える人生のビジョンだった。だからこそ、良い生活をするためには、良い学校へ進学すればよいということで、生徒や学生は余計はことを考えずに、とりあえず真面目に勉強すればよいということで、生徒や学生は余計なことを考えずに、とりあえず真面目に勉強をしておけばよかったのである。
ところが、いまやすでに、大学や高校を卒業したあと、新卒で就職して、一つの会社に3年間続けて勤務する人は、統計上でも4割を切っているのだ。日本社会の安定を支えて「普通のサラリーマン人生」というのが、猛烈な勢いで縮小していっているのである。
(森永卓郎著「年収300万円時代を生き抜く経済学」光文社 135〜136p)
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20世紀の中心的な思想だった(もちろん、今のところ揺らいでいるわけではありませんが)資本主義は、多くの人に等しく満足をもたらすシステムのはずでした。ところが、現実は決してそうはなっていないのです。
それにしても、どうして日本はこんなに問題の多い国になったのでしょうか? 充足感を味わえなくなったのでしょうか?
短いスパンで見れば、結局はバブルのツケがここにきてすべてに出ているに違いありません。リーダーたる政治家や官僚や銀行家が国の舵取りを誤ったことも事実でしょう。それこそ、架空の(バーチャルな)「満足」を求めて、すべての日本人が利益優先主義で奔走した結果の破綻ではないでしょうか。
資本主義が、利益優先主義になるのは当然ではないかという人がいますが、そうではありません。もしそうなら、もう一度、資本主義を最初から考え直さなければならないでしょう。
資本主義が登場する発端は、中世世界で失われていた「物」という価値に対する復権の動きです。中世の教会を中心としたキリスト教の精神至上主義を批判して、生きるうえでの物質の大切さを見直す思想だったのです。
現在の資本主義は、お金をひとり占めにしてみたり、物をひとり占めにしてみたりという「弱肉強食」の論理ばかりがまかり通っており、当初の目的と違う方向にあるのです。
資本家が資本(財)を投下し、生産に必要な原料や機械、その他の手段を購入し、労働者を雇用し、利潤を上げ、その利潤を適正に分配するのが資本主義であって、儲けた者がいくらもらってもいいんだというのは単なる利益主義でしかありません。
市場のおもむくままにまかせるのは、資本主義の一の形式である市場主義です。市場第一主義であるならば、たくさんのお金、あるいは、たくさんのお金を動かせる人が勝つわけです。日本人の多くがそう思ったのがあのバブルでした。
バブル崩壊後(あるいは、それ以前からそうだったかもしれませんが)、経営者達は、口を開けば「うちは会社だ。資本主義世界の一員だ。慈善事業をやっているわけじゃない。儲けなければならない。儲けることが第1だ」と偉そうに言っていますが、それは資本主義でもなんでもありません。
教養のないサラリーマン経営者が、資本主義を勝手に解釈しているだけなのです。そして、そのバブルが崩壊して十数年、資本主義の理念さえ見失い、日本はいまや先進国の座さえも失いつつあります。
資本主義の基本は、「すべての人びとは、あまねく平等に利益を受けるべきだ」ということです。
(吉村作治著「ひとのちから」麗澤大学出版会 41〜43p)
現実をリアルにとらえることが出来ても、科学的な理論を持っていなかったらその、リアルな現実も曲がって見えます。科学的社会主義を学べ、もっと学ばなければならない。学んだことを語らなければならない。学んだだけでは足りないのだから……。