学習通信030722
 
◎話法、説得術 あなた自身が、そのものの魅力を十分に知っていて、ほかのものといかに違うかを実感していないと
 
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笑いの話法≠ニいう以上、笑い≠ェある話し方であるのは当然ですが、これから述べる話し方は、より有効で実り多い話の成果を目的としたものであります。
 
 だからといってこの本は、浸才や落語の手引き書ではありませんから、駄洒落やおふざけの笑いを各所に盛り込んでお茶をにごそうというものではありません。
 
 ややもすると真面目な話にうっかり、いや逆に骨を折って笑い〃を入れたために語の品位がなくなる、そんな危険にさらされるなどということにもなりかねません。
 
 だからうっかりこの本を読まないで、しつかり読み取ってほしいものです。
 
 もっとも、しつかり出来る位なら、うっかりはしないでしょうが。
 
 話が面白くないというのは、話し方が上手だとか下手だとかいうためにだけ起こるのではありません。主にその話の内容、特に、その場の聴衆に深いかかわりがある材料であるかどうかが大きな役割りを果たします。
 
 それから話し手の人柄。非常に親しみを感じさせるとか、尊敬できる人柄、そういうものが重なり合って、その話し手の話を聞こうとする姿勢が会場にいる人たちに聞き耳を立てさせ、話し手が安定した状態で話を進めるような雰囲気が生れて来て、やがて、話し手と聞き手の間に、共有できるあらゆる条件ができ上がって来る。そんなとき下手であるべき話し手は、偉大な雄弁家になっているわけです。
 
 ところがそんな誠に都合の良い状態で話が進んでいても、それは五分かそこいらのことで、十分十五分と時が経つと、だんだんその話し手に飽き、話にも飽きて来るのです。
 
 そんなとき、話″に笑い″が必要になって来ます。
 
 例えば暴力の取り締りをもっとしっかりやってほしい。そのことについては誰の考えも同じです。ところがこの話が五分位で終るのなら問題はないのですが、十分も十五分も続くとなると聞き手は飽きてくる。それを飽きさせないために笑い″を挿入します。
 
 「みなさん暴力の取り締りを政府はいい出して何年経ったか。なるほど、時おりそれらしいことはやっているが、さて幕がしまってみると大物はいつもご安泰、捕ってるのは全部小物ばかり、これでは取り締りなんぞやらないよりましか程度のこと、大きい根が生きているのだから、かえってあっちからも、こっちからも芽がふき出して、やがて悪の花盛り、てなことになる。
 日本の政府は警察網という世界に誇る強い大きな網を持っているといいます。
 私たちが海や河でバァ一っと網をうてば、小さな魚は網の目から逃げ出して大きいのだけが捕れます。
 だのに日本の政府がうつ警察網という網は、大きいのが逃げて、小さいのがつかまる。一体、どんな網を使ってるのでしょう」
 
 という具合に笑い〃を使います。いうまでもなく風刺の笑いですが、話そのものの邪魔にならないで、どころか話にふくらみがつき、さらに、笑いがあるから話の印象がより強くなって、聴衆の耳から身体の中にすべり込んでゆきます。
 
 話〃にそういう形で笑い〃が生かされる、それが私のいう笑いの話法〃なのです。
 
 あくびを噛みしめて我慢している会場の人たちに、ちょうど夏の暑い日中、突然カミナリが鳴って、ザーと来る夕立のようなうるおいを送り込む。そんな役目をもっている笑い〃は、これからの日本の政治、経済、その他ありとあらゆる国民生活に大きな変化をあたえる役目を果たすことでしょう。
 
 そんな話し方〃を研究してゆこうと。これは読者のみなさんと著者の私とが、ともかくそんな大それたことを、お互いに手を取りあって考えていきたいと思います。
 
 特に私は、一人の雄弁家を作り上げることではなく、数多くの雄弁家を現代の世の中に送り出すことを念願としてこの本を書いています。
 
 若い人はあなた方のために、この日本を良くし、そしてその背に背負ってほしいし、年老いた人も、若い者に負けないで、それこそ老若男女の別なくお互いに手を取り合って、祖国のために全部雄弁家になってほしいものです。
 
 その中からまた、達人や名人が数多く出て最後には全部名人に──これはとほうもない願いでしょうか。私はそう思いません。
 必ず、そんな時が来ると信じています。
(大空ヒット著「笑うの話術」新日本出版社 12-14)
 
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《説得術・交渉術》
 
 説得すること、交渉すること。これは我々が生きていくうえで、すべての場で必要になる重要なコミュニケーションです。ましてやビジネスの場ともなれば、時としてお金や生活・人生など、一度壊れてしまうと修復できないほどのダメージを与えたり、受けたりすることになります。だからこそ、説得や交渉はとても大切なことです。誠実に説明し、相手にわかってもらうことがすべてです。でも、なかなかその説明ができないから失敗してしまうのです。
 
[結論から先に話す]
 
 それなら、どうすれば誠実な説明は相手に伝わるのでしょうか? それは最初に「結論」を話してしまえばよいのです。「結論」を先に言ってしまったら、その時点で断られてしまうじやないか? そう思う方も多いでしょう。でも、そうではないのです。もう一つ言うならば、それは「結論」の説明のしかたが悪いのです。
 
 何かを売ろうというとき、例えば、「○○を売りに来ました」と言うのではあまりに直接的です。そうではなく、そのものがいかに魅力的であるかを説明する、それが結論です。そのためには、あなた自身が、そのものの魅力を十分に知っていて、ほかのものといかに違うかを実感していないといけません。そうでなければ、それはだれかの使いでものを売りに来ているのと、何も変わりがないのです。自分の目的と、お願いする(勧めている)理由をはっきり伝える。ここが重要です。
 
 放送局の仕事も同じです。放送予定の番組の趣旨を十分理解したうえで、相手に何の話を聞きたいのか、なぜ自分が取材に来たのかという「結論」を先に説明しないと、初めから話を聞いてもらえません。「結論」を先に……、ダラダラ説明された側にとつても、プラスにならないことはやめたほうがいい、要するにそういうことです。
 
[相手の話をよく聞くこと]
 
 次に大切なのは、「相手の話」をよく聞くことです。放送局の仕事で、出演をお願いに行くこともありますが、突然出演をお願いして言われることがあります。「私のことをよく知らないのに、なぜ私が出演に適していると言えるの?」 そうです。相手のことをよく知らないのに、こちらの勝手な思い込みで相手にお願いするのは大きな間違いにつながります。
 
「まず、お話を聞かせてください」というのが、正しいはず。でも、気ばかりが焦ってしまうときに思い込みに陥りがちです。ビジネスの場面では、期限や、ノルマが迫っているとついつい、とにかく契約だけでもという落とし穴にはまりがちです。そのことで、「この人はものを売ることしか考えていない」と相手に思われてしまいます。
 
せっかくいい商品、いい商談であっても、こちらの都合だけでは相手を説得することはできません。自分の結論、すなわち目的や理由を最初に相手に伝えてあれば、次はじっくり「相手の話」を聞くことが重要と言えるでしょう。話し上手は聞き上手ってよく言いますよね。
 
[相手に誤解を与えない]
 
 相手に過大な期待を与えることは、その瞬間きっと盛り上がるでしょぅ。でも、それは後から大きな代償を払うことになります。当然のことながら、嘘・偽りは厳禁ですが、できないことをさもできるように話をするのはいけません。その瞬間はよくても、嘘がばれたとき、相手はきっと「二度と話をしたくない」と思うでしょう。それは、可能性として期待させることも同じです。
 
相手は夢を膨らませて期待をし、そのための準備をして待っているかもしれません。あなたにその気がなくても、相手は「せっかく準備したのになんだ!」と怒ってしまうでしょぅ。交渉が途中で失敗する背景にはそういう何か理由があるはずです。
 
 もし、相手が交渉途中で打ち切ってしまった場合、相手にその理由を開いてみてはどうでしょうか? 確かに今回の交渉は失敗したかもしれませんが、次の交渉で成功するヒントがそこにあるはずです。もし、相手のほうが理由を教えてくれれば、次回はその方とまた交渉できるかもしれません。「誤解」以外の理由であっても、相手の話を素直に聞いて、次回に生かす、それが交渉術のレベルアップにつながるのです。
 
[具体的に説明する]
 
 「7月4日(火曜日午後4時から30分間、○○町を紹介する番組を、役場の前の広場から生中継で放送します。地元の皆さんが、あなたの自慢の◇◇が、地域の特徴だと話しています。ぜひ、ご出演いただき、◇◇を5分くらい披露していただけないでしょうか? ついてはその◇◇についてお話を伺いたいのですが?」
 
 こんなスタートならどうでしょう? ◇◇をあなたの特技に置き換えて、想像してみてください。なんとなく想像できませんか? 説明というのは、相手にわかりやすく、しかも相手が「具体的」にそのことを想像できるようにするのが特徴です。「具体的」に日時や、場所、目的と理由を説明できれば、相手にも納得してもらえます。次は相手の条件を聞く番です。放送を例に説明しましたが、これはすべての場合に同じことが言えるでしょう。
(「NHKアナウンサーの はなすきくよむ」 40-43p)
 
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◎私たちだけが理解していても、世の中変わりません。大いに話さなければなりません。その話し≠ノも法則があります。それを身につけることが大切です。この秋私たちの説得力が問われます。