学習通信030923
◎労働は一般に、奴隷によっておこなわれるより、はるかに安あがりなのである。
 
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<日経新聞 030923>
民間給与5年連続ダウン 昨年1・4%減
平均447万円賞与落ち込む
 
 民間企業に勤める人が二〇〇二年一年間に受け取った一人当たりの平均給与は四百四十七万八千円で、前年より六万二千円(一・四%)減ったことが二十二日、国税庁がまとめた民間給与実態統計調査で分かった。下げ幅と下落率は過去最大だった前年より縮小したが、賞与の落ち込みなどが響き、五年連続でダウンした。
 
 給与総額も五年連続で減少し、二百兆二千五百九十億円。下げ幅は四兆四千八百十二億円(二・二%減)で、調査を始めた一九四九年分以降で最大となった。給与所得者の総数は二年ぶりに減少し、四千四百七十二万人(三十七万人、〇・八%減)。パートタイマーの女性らの増加分を正社員の解雇や離職が上回ったとみられる。
 
 平均給与の内訳は「給料・手当」が三百七十五万二千円で、前年比一万三千円(〇・三%)減ったが、下落率は前年より〇・七闇縮小。逆に「賞与」は落ち込みが激しく、五万円減の七十二万五千円となり、下落率は史上三番目の六・五%だった。
 
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 ここからわれわれは平均賃金を決定することができる。平均的な状況のもとで、すなわち、労働者も資本家もとくにたがいに競争する理由はなく、ちょうど必要とされているだけの商品をつくるために雇うことのできる労働者とまったく同じだけの労働者がいる場合には、賃金は最低額よりいくらか高くなるであろう。
 
それが最低額をどのぐらい越えるかは、労働者の平均的な欲求と文明の程度によってきまる。労働者が週に何回か肉を食べることが習慣となっているなら、資本家は、それだけの栄養がとれる賃金を労働者に支払うことを承諾せざるをえない。それ以下にはならない。
 
なぜなら労働者はたがいに競争しているわけではないので、それ以下で満足する理由はないからである。それ以上ということもない。なぜなら、資本家もたがいに競争しているわけではないので、特別に優遇して労働者をひきつけようという動機はないからである。
 
 労働者のこのような平均的な欲求と平均的な文明のレベルは、すでに示唆しておいたように、現在のイギリスの複雑化した状況のために、きわめていりくんでおり、労働者階級の多様さに応じて多様なものになっている。しかし、たいていの工業労働は一定の熟練と規則性を必要とする。
 
したがって一定の文明度をも必要とするこれらの労働にたいしては、その平均賃金も、労働者がこういう熟練を身につけ、規則的な労働にしたがうようにさせるだけのものでなければならない。だから工業労働者の賃金は、平均すると、ただの荷物運搬人や日雇労働者などの賃金より高く、ことに農村の労働者の賃金より高いということになる。
 
それには、もちろん、都市の生活費が高いことも理由の一つとなっている──あるいはドイツ式にいえば、労働者は法的にも事実上も、有産階級、つまりブルジョアジーの奴隷であり、まったく奴隷になりきっていて、商品のように売られ、商品のように価格が上下しているのである。
 
労働者への需要が増大すれば労働者の価格も上昇する。需要が減少すれば価格も下落する。需要の減少が大きく、一定数の労働者が売れ残り、「在庫となる」と、労働者は遊んでしまい、遊んでいるだけでは生きてゆけないので餓死する。
 
というのは、経済学者の言葉でいうなら、労働者を養っていくために用いられる費用は「再生産」されず、無駄な金になるので、そういうところへは誰も資本を投じないからである。そして、そのかぎりでは、マルサス氏の人口論はまったく正しい。
 
古代の公然とした奴隷制との違いは、今日の労働者は自由なように見えるということ以外にはまったくない。なぜなら彼はいっぺんに売られてしまうのではなく、一日ごと、一週ごと、一年ごとに切り売りされるからであり、また、ある所有者が彼を別の所有者へ売るのではなく、彼が自分自身をこのような仕方で売らなければならないからである。
 
それは彼が個々の有産者の奴隷ではなく、全有産者階級の奴隷であるためである。労働者にとっては事態は根本的に同じである。そしてこういう見せかけだけの自由が、一面では彼に若干の現実的な自由を与えるに違いないとしても、他面では、誰も彼の生存を保障してくれず、ブルジョアジーが彼の雇用や生存になんの関心ももたなくなると、彼の主人であるブルジョアジーによって、いつ、つきとばされ、餓死させられるか分からないという不利な面もあるのである。
 
──これにたいしてブルジョアジーはこの制度のもとでは古代の奴隷制よりもはるかに有利な立場にある──彼らはいつでも好きなときに従業員を解雇できるし、投下した資本をそのために失うということもない。そして、アダム・スミスが計算してみせてブルジョアジーになぐさめを与たように、労働は一般に、奴隷によっておこなわれるより、はるかに安あがりなのである。
(エンゲルス著「イギリスにおける労働者階級の状態-上-」新日本出版社 p127-129)
 
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◎「民間給与5年連続ダウン 昨年1・4%減」どこまで下るのか。何が基準なのか。失業者の増大と密接に関係しています。また、日本の労働者の暮らし向き……によっても。
 
◎「イギリスにおける労働者階級の状態」は労働組合運動をやろうと志している人にとって必携論文です。