学習通信040512
◎「金の欲望にはきりがない」と。

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 人間は自己を生かす為には他人と必ず衝突するもののように思っている人がある。利己心はたしかに他の利己心と衝突する。金もうけは多くの場合、他人と利害衝突する。現世では利益をあげようとすれば他と衝突する。
 しかしそれは人間をつくったものは金というものを人間が発明するということに気がつかなかった。金は人間のつくったものである。そして金への欲望というものは自然の知らないものだ。自然の人間に与えた欲望はすぐ満たされればそれで満足する欲望だ。腹がへれば飯が食いたくなる、痛切に食いたくなる。しかし食えば少量で腹がはり満足する。他人の食物を奪ってまで食う必要はない。

例外の時もあるが、そう他人の食を奪わなければ腹がはらないということはない。水をのみたい時でもそうである。その他自然が人間に与えた欲望は性慾であろうと、その欲望は無限ではない。それを満足させることは簡単で、短時間ですむ。しかし金の欲望にはきりがない。そしてそれが又いろいろの欲望を満たす必要品でもある。

かくて人間は金をとることに熱中してとどまるところを知らない。その結果、経済上の複雑な関係で人々が動くようになるが、しかしこれは自然の知らないものだ。だからその欲望は宗教家や、人間性の強い人々には軽蔑される欲望である。人間を益々自然に健康にする欲望ではなく、人間を益々人間らしくなくなす力を持っているものだ。

 金が存在するようになってから、文明が進んだことは事実だ。しかし同時に人間社会が病的になり、人間同志の関係が不自然になり、病的になったのも事実である。

 しかしこれが人間の本当の関係だと思うとまちがいで、他日、金よりも人間の生活の方が主になる時代が又くるであろう。

 金をもうけることは悪いとはきまらない。しかし他人を不幸にすることは悪いことだ。
(武者小路実篤著「人生論・愛について」新潮文庫 p49-50)

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 資本が剰余労働を発明したのではない。

社会の一部の者が生産諸手段を独占しているところではどこにおいても、労働者は、自由であろうと自由でなかろうと、生産諸手段の所有者のための生活諸手段を生産するために、自分の自己維持のために必要な労働時間に余分な労働時間をつけ加えなければならない。

この所有者がアテネの貴族≠ナあろうと、エトルリア〔イタリア中西部の古代国家〕の神政者であろうと、ローマの市民≠ナあろうと、ノルマン人〔中世スカンジナヴィア地方〕の領主であろうと、アメリカの奴隷所有者であろうと、ワラキア〔ルーマニア南部〕のボヤール〔ロシアやルーマニアなどの領主〕であろうと、近代のランドロード〔イギリスの地主〕または資本家であろうと、そうである。

 とはいえ、ある経済的社会構成体において、生産物の交換価値ではなくそれの使用価値が優位を占めている場合には、剰余労働は、諸欲求の範囲──狭いとか、広いとかの差はあっても──によって制限されているのであって、剰余労働にたいする無制限な欲求は生産そのものの性格からは発生しないということは明らかである。

それゆえ、古典古代において、交換価値を自立的な貨幣姿態で獲得することが問題である場合に、金銀の生産において過度労働は恐るべきものとなる。

ここでは、死ぬまで労働を強制することが過度労働の公認の形態である。シチリアのディオドロスを読みさえすればよい。

 それでもやはり、これは古典古代世界においては例外である。

しかし、その生産がまだ奴隷労働、夫役労働などというより低い諸形態で行なわれている諸民族が、資本主義的生産様式によって支配されている世界市場に引き込まれ、この世界市場によって諸民族の生産物を外国へ販売することが、主要な関心事にまで発展させられるようになると、奴隷制、農奴制などの野蛮な残虐さの上に、過度労働の文明化された残虐さが接木される。

それゆえ、アメリカ合衆国の南部諸州における黒人労働は、生産が主として直接的な自家需要に向けられていた限りでは、穏和な家父長的な性格を保っていた。

しかし、綿花の輸出がこれら諸州の死活の利害問題となるにつれて、黒人の過度労働が、所によっては黒人の生命を七年間の労働で消費することが、打算ずくめの制度の要因になった。黒人から一定量の有用生産物をしぼり出すことは、もう問題ではなくなった。

いまや、剰余価値そのものの生産が問題であった。夫役労働、たとえばドナウ諸侯国〔ワラキアとモルダヴィア侯国〕におけるそれについても同様である。
(マルクス著「資本論A」p399-400)

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◎「死ぬまで労働を強制することが過度労働の公認の形態」……。現代社会ではいたるところに存在する形態だ。

◎「他日、金よりも人間の生活の方が主になる時代が又くるであろう。」と。他日∞又=c…学習通信040511 と重ねてください。