学習通信040811
◎準備がすすんでいる……。

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一人の馬鹿が道ばたに立って、槍や火縄銃を肩にかついだ一隊の軍勢が行進してくるのを見ていた。兵隊がすぐそばを通りかかったとき、馬鹿はたずねた……

馬鹿──「みなさんは、いったい、どこからおいでですか」
兵隊──「平和からだ」
馬鹿──「どこへ行くのですか」
兵隊──「戦争へさ」
馬鹿──「戦争で何をするんですか」
兵隊──「敵を殺したり、敵の町を焼いたりするんだ」
馬鹿──「なぜ、そんなことをするのです」
兵隊──「平和をもたらすためにさ」
馬鹿──「はて、おかしなこともある、平和からやってきて戦争に行く、それも平和をつくるためにだと。なぜ、はじめの平和に止っていないんだろう」
   ──中部高地ドイツの伝承寓話−

生きている恐竜

 第二次世界大戦がたけなわな一九四三年五月、アメリカの評論家ウィリアム・アレン・ホワイトは、「有力な大会社が戦線の両側で活動していること」、「これらの巨大な独占体が、戦争を私的な致富の種に利用していること」に憤激して、つぎのように書いた──「これらの軍需工業独占体の国際的結合は、ものすごいカをもち、しかも、一片の道義心をも持ちあわせぬ恐るべき恐竜、怪竜の類である。彼等は、この巨大な爬虫類がはるか昔死滅したと信じられている現代でも、なお、キリスト教文明のうえにのしかかり、我物顔で世界を徘徊している」。

 ホワイトが、「死の商人」を「生きている恐竜」、「生きている怪竜」にたとえたのは、まことに適切だといわねばならぬ。たしかに、これらの恐竜、怪竜は、まだ現代に生きており、その恐ろしい赤い舌の先から、たえず戦争の脅威を吐き出しているのである。

 リチャード・サシュリーが『IGファルベン』という本を出版したとき、当時アメリカの上院でその人ありと知られていた正義派の議員クロード・ペッパーは、この本に寄せた序文のなかで書いた──「IGファルベン、およびIGファルベンがもっともダイナミックな標本を提供しているこの種の国際カルテルの慣行は、今日、なお、われわれのまわりに存在している。世界は、まだ、第二次世界大戦の死者の数を数え切っていないというのに、これらの国際カルテルは、もう、世界平和にたいする新しい脅威となっている」。

 たしかに、戦時、終戦直後のこのようないくつかの警告は真実をふくんでいた。これらの恐竜や怪竜は、古くは普仏戦争、近くは第一次世界大戦、さらに第二次世界大戦にかけて、ずっと猛威をたくましくしてきた。第二次大戦後にも、やはり、同様であった。いや、もしも、われわれが充分警戒を払わないならば、彼等は、第三次世界大戦をさえひきおこすかもしれない。

 さて、われわれが、これまで検べてきたところによると、この恐竜、怪竜、つまり「死の商人」の生態は、ほぼ、つぎのようなものであった。

 まず、第一に、彼等には、祖国というものがあるようでない。彼等にとって、何よりも大切なのは利潤であって、愛国心とか、隣人愛とか、人道主義とかいうものは無用の長物である。その結果、戦いをまじえている両方の陣営に武器を提供するというような、ちょっと考えると矛盾することでさえ、彼等にとっては、いささかも矛盾ではないし、それどころか、その方がはるかに合理的であった。

 第二に、彼等には祖国はないが、「死の商人」同士のあいだには、きわめて緊密な結縁関係が存在し、国際的な連携が維持されている。むろん、「死の商人」が資本主義の原則のうえに立っているかぎり、おたがいのあいだの競争や弱肉強食はもちろんあるし、ときには、これが尖鋭なかたちをとることもある。しかし、このことは、他面における彼等の国際的結合をけっして妨げるものではない。

 第三に、彼等にとっての最大の敵は、本当の意味の平和──ことばのうえだけの「平和」ならば、彼等自身がかえって口にし、いな強調さえすることもある──である。なぜならば、彼等の生命を維持するのに不可欠な血液は、戦争ないし戦争準備であるからである。

 第四に、彼等は、これまでのところ、「不死身」であった。彼等の属する国家が戦争で敗れようとも、彼等は戦争で荒れた廃墟のなかから、フェニックスのように、いつでも、蘇生してきている。われわれが、これまでに見てきた、クルップやIGファルベン、日本の財閥などの「死の商人」の歴史は、以上のことを裏書きしているようである。
(岡倉古志郎著「死の商人」新日本出版社 p172-175)

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ヲブセルウェーション 第17回

いいのか、それで

 日本経済団体連合会が、武器輸出三原則の見直しを提言した。世界の防衛産業は高度ハイテク化し、何ヵ国もが参加する共同開発が主流だ。だが、日本はあらゆる国に対し、部品に至るまで武器輸出は禁止。この制約で、共同開発はおろか、シンポジウムの出席すらかなわず、技術力が劣化する一方だ、と経団連は言う。例外は日米関係で、一兆円をつぎ込むミサイル防衛システムを共同開発中だが、現規定では日本企業の部品は使えない。見直しなくば、次世代安全保障が成り立たない──。

 われわれは、転換点にある。技術力維持の必要性、部品輸出の妥当性。三原則を見直すことで国が失うものとの比較検証。ここは、多様な視点からの精緻な議論が必要だ。戦車、銃器などの武器輸出拡大に歯止めをかける規定は、むろん必須だろう。だが、経済界には単色、思考停止の危険が見える。

一〇年前に経団連で同様の議論が起きたとき、久米豊・日産自動車会(当時)は絶対反対を貫いた。しかし、戦争経験世代が退場、いまや反対者はない。経団連は憲法九条改定も議論中だが、慎重派は勝俣恒久・東京電力社長くらいだ。検証の深まりもないまま、奥田経団連はこの二点を連動し、刺激的提言で世論を動かそうとしている。「世界の常識だから」程度の認識でいる指導者たちの軽さが不安でたまらない。(辻)
(週間 ダイアモンド 2004 8 7)

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経済・財界気流
増税へ 改憲へ 米政権と示し合わせたように
「絶好のチャンス」と圧力強める

 参院選挙の直後から消費税増税、憲法改定にむけた動きが加速しています。財界側も、衆院が解散されなければ次の参院選まで国政選挙がないこの時期が、「黄金の三年間だ」として政治への圧力を強めています。

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A 財界首脳はこの時期、「諸課題処理の絶好のチャンス」とみている。問題は二つだ。一つは消費税増税を含む社会保障「改革」。二つ目は、憲法問題。そして武器輸出の解禁および宇宙の軍事利用がからんでくる。

首相の任期中に「あり得る」と

B 消費税増税問題では、細田博之官房長官が七月二十九日の記者会見で小泉首相の任期中にも「(引き上げ方針を決めることは)あり得る」と発言した。いよいよきたな、と思ったね。

C どういうこと。

B 二〇〇七年度までに消費税を10%に引き上げることを求めている日本経団連は、〇六年春には、増税法案を成立させたいと狙っている。細田官房長官の発言は、日本経団連が描くシナリオとぴたり一致するんだよ。

A 消費税増税を含めた議論をするために設置した「社会保障の在り方に関する懇談会」(細田官房長官の私的懇談会)には、日本経団連の西室泰三副会長(東芝会長)が入り、にらみをきかせている。

「改憲論者」発言どんどん過激に

B もうひとつの課題の憲法問題。日本経団連は、改憲へ向け「国の基本問題検討委員会」を発足させたが、その初会合で奥田碩会長(トヨタ自動車会長)は「(参院選後の)政治的にも安定したこの時期が、国の基本問題を検討する好機」と強調してみせた。

A 七月下旬に開いた恒例の夏季セミナー後の会見では、奥田会長は「(自分を)改憲論者と思ってもらっていい」といった。

C その奥田会長、今年四月の会見では「(憲法問題は)私としてはいいにくい」と明言を避けていたが。

B 奥田会長の発言は、どんどん過激になっている。アーミテージ米国務副長官が参院選挙後、憲法九条を「日米同盟の妨げ」と発言した。この発言にも、奥田会長は「九条は外国人にも分かりにくいのではないか」などといって、理解を示した。

C まるでブッシュ政権と示し合わせたようだね。

A もともと、改憲論はアメリカ発だし、奥田経団連が見直しを求めている武器禁輸問題や宇宙の平和利用原則も、実は、アメリカから発信されてきたものだ。

B 日米の軍事企業が参加している「日米安全保障産業フォーラム」(一九九七年に発足)が出した共同宣言(〇二年十二月)では「武器輸出三原則によって防衛装備・技術協力の推進が大きく妨げられている」と見直しを求めた。

A 技術交流を目的として九〇年に設置されたのが日米の「技術フォーラム」。毎年会合を開いているが、〇三年の会合では、米国のシンクタンク(調査研究機関)側が「日本が武器輸出三原則を堅持し続ければ、国際共同プログラムが成り立たなくなる」と強調していた。

C 今年七月に日本経団連が発表した提言では、武器禁輸原則が障害となって「先進国間の共同開発プロジェクトの流れから取り残されて(いる)」と同じようなことをいっていたよ。

B 宇宙の平和利用原則については、軍事戦略に強いアメリカのシンクタンク(CSIS=国際戦略研究所)が一年前に日米安保の障害になっているとして見直しを求める提言を出している。

宇宙軍事利用へ日米軍事産業が

A 日本経団連が、初めて、宇宙の軍事利用に道を開くよう提言したのは今年の六月のことだった。日米安保のもとで情報・通信も含めた日米軍事産業の関係が深まっていることが背景にあるのだろう。

C 憲法九条が改悪されたら、アメリカのように軍事と産業が一体となった軍産複合体ができ、それが権力の中枢を占めてしまう危険があるね。

A 戦後、日本の企業は、九条があったから日本帝国主義が侵略をしたアジア諸国でも資本進出ができた。日本経済は、九条とともに復興し発展をとげてきたんだ。

B 日本経団連の奥田会長が「軍事力がなければ外交力がない」などというのは時代錯誤もはなはだしい。財界人やエコノミストの中にも、九条は日本経済の宝だと思っている人は数多くいる。

A 軍事がなによりも優先される事態になれば経済活動は統制され、市場メカニズムをゆがめてしまう。資本主義を信奉している人たちからみても、それは許せないはずだね。

C 奥田経団連が「黄金の三年間だ」というのなら、こちらにとっても世の中を変えるたたかいの三年間だ。政治の「あつい季節」は夏だけじゃないね。

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日米安全保障産業フォーラム委員企業

<日本側>
 三菱重工業
 石川島播磨重工業
 川崎重工業
 島津製作所
 東芝
 アイ・エイチ・アイ・エアロスペース
 小松製作所
 ダイキン工業
 日本電気
 日立製作所
 富士通
 三菱電機

<アメリカ側>
 ボーイング社
 エアロジェット社
 ジェネラルエレクトリック社
 ロッキード・マーチン社
 ノースロップ・グラマン社
 レイセオン社
 サイエンス・アプリケーションズ・インターナショナル社
 ユナイテッド・ディフェンス社

(2004年8月10日(火)「しんぶん赤旗」)

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◎「黄金の三年間だ」=c…歴史的値打ち≠る大闘争を闘い抜く理論武装を学びながら闘い 闘いながら学ぼう=B

学習通信≠ェ難しなどとぼやいているゆとりはない。(古典などの本格的な)独習の出来る活動家がいま求められているのだから。急いで鍛えなければならない。