学習通信050603
◎労働者自身のあいだの避けられない競争……。

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 職人の団結ということはよく耳にするけれども、親方の団結については滅多に間かない、といわれている。だが、そうであるからといって、親方たちは滅多に団結しないなどと考える人があれば、その人はこの問題に無知なのはもちろん、世間知らずというものである。親方たちは、いつどこにあっても、一種暗黙の、しかし不断の、統一的な団結をむすんで、労働の賃銀を現在の率以上に高くしないようにしている。

この団結をやぶることは、どこでも、最も不評な行動の一つであって、親方にとっては近隣や同輩のあいだで一種の不名誉となるのである。たしかにわれわれは、こういう団結については滅多に耳にしないが、そのわけは、だれも耳にすることがないほど、それがものごとの通常の状態、いうなれば自然の状態だからである。親方たちは、ときとして労働の賃銀をこの現在の率以下にさえ引き下げようとして特定の団結をむすぶことがある。こうした団結は、その実行の瞬間まで極度の沈黙と秘密のうちにことが運ばれるのが普通である。

よくあることだが、職人たちが無抵抗で屈伏する揚合には、かれらこそこうした団結の存在を深刻に感じるけれど、かれら以外の人々の耳にはその団結の話はけっしてはいらないのである。しかしながら、そのような団結は、しばしば労働者たちから、それと対立する防衛的な団結によって抵抗をうけることがある。すなわち職人たちも、ときとして、この種の挑発がぜんぜんなくても、自分たちの労働の価格を引き上げるために自発的に団結することがある。

職人たちがふつう主張するのは、あるときは食料品が高価であるとか、あるときは親力たちが職人たちの仕事によって儲ける利潤が大きすぎるとか、などということである。ところが職人たちの団結は、それが攻撃的であろうと防衛的であろうと、つねに頻繁に人々の耳にはいりやすい。

職人たちは、争点を迅速な解決にもちこむために声高くさわぎたてるような手段に訴えるのがつねであり、ときにはたいへんショッキングな暴力や不法行為に訴えることもある。かれらは絶望的になり、絶望的な人間の愚かさと無謀さをもって行動し、自分たちが餓死するか、さもなければ親方たちをふるえあがらせて、自分たちの要求に即刻に服従させるかせずにはおかないのである。

こうした場合には、親方たちも、相手側にたいして同じようにさわぎたてるのであって、官憲の援助を声高くもとめ、また使用人、労働者、職人の団結をきびしくとりしまるために制定されている法律を厳格に適用するように、声高くもとめてやまないのである。したがって、職人たちがこのような騒然とした団結の暴力からなにかの利益を引き出すことは、ごくまれである。

このような団結は、一つには官憲の干渉のために、一つには親方たちががんとして方針をまげないために、また一つには、大多数の職人が目前の生活に追われて余儀なく屈伏してしまうということのために、指導者たちの処罰または破滅のほかにはなに一つ得ることもなしに終るのが普通である。
(アダム・スミス著「国富論@」中公文庫 p114-115)

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労働組合。その過去、現在、未来

その過去。

 資本は集積された社会的な力であるのに、労働者が処理できるのは、自分の労働力だけである。

したがって、資本と労働のあいだの契約は、けっして公正な条件にもとづいて結ばれることはありえない。

それは、一方の側に物質的生活手段と労働手段の所有があり、反対の側に生きた生産力がある一社会の立場からみてさえ、公正ではありえない。

労働者のもつ唯一の社会的な力は、その人数である。しかし、人数の力は不団結によって挫かれる。労働者の不団結は、労働者自身のあいだの避けられない競争によって生みだされ、長く維持される。

 最初、労働組合は、この競争をなくすかすくなくとも制限して、せめてたんなる奴隷よりはましな状態に労働者を引き上げるような契約条件をたたかいとろうという労働者の自然発生的な試みから生まれた。

だから、労働組合の当面の目的は、日常の必要をみたすこと、資本のたえまない侵害を防止する手段となることに、限られていた。一言でいえば、賃金と労働時間の問題に限られていた。労働組合のこのような活動は、正当であるばかりか、必要でもある。

現在の生産制度がつづくかぎり、この活動なしにすますことはできない。反対に、この活動は、あらゆる国に労働組合を結成し、それを結合することによって、普遍化されなければならない。

他方では、労働組合は、みずからそれと自覚せずに、労働者階級の組織化の中心となってきた。それはちょうど中世の都市やコミューンが中間階級〔ブルジョアジー〕の組織化の中心となったのと同じである。

労働組合は、資本と労働のあいだのゲリラ戦にとって必要であるとすれば、賃労働と資本支配との制度そのものを廃止するための組織された道具としては、さらにいっそう重要である。
(マルクス著「個々の問題についての暫定中央評議会代議員への指示──労働組合。その過去、現在、未来」マルクス・エンゲルス8巻選集 大月書店 p172)

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◎「労働組合は、資本と労働のあいだのゲリラ戦にとって」「賃労働と資本支配との制度そのものを廃止するための組織」……。