学習通信050609
◎少なくともたしかなこと……

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賃金にはそれ以下には引き下げえない一定の率があり、それは労働者家族の生活の維持に足りるものでなければならない。

 だが、親方たちは職人だちとの争議においては一般に勝つにちがいないが、しかし賃銀には一定の率があって、最低の種類の労働についてさえ、通常の賃銀をかなりの期間この率以下に引き下げておくことは不可能なように思われる。

 人間はつねに働いて生きてゆかねばならないし、かれの賃銀は少なくともかれの生活を維持するに足りるものでなければならない。いや、たいていの場合、賃銀はこれよりいくぶん多くさえなければならない。そうでないと、家族の扶養ということが労働者にとって不可能となり、職人たちの家族は一代かぎりになってしまうだろうからである。こうした理由からカンティョン氏は、最下層の労働者でも、平均して二人の子供を育てるためには、自分自身の生活維持費の少なくとも二倍はどこへ行っても稼ぎださねばならない、と考えている。

この場合、妻の労働は、子供たちを世話する必要があるために、やっと彼女自身を扶養するに足りるだけだと想定されている。ところが、生れた子供の半数は成年に達するまでに死亡するものと推定されている。

したがってこの計算によれば、最も貧しい労働者でも、二人の子供がともに成年まで生きてゆけるためには、平均して少なくとも四人の子供を育てようと覚悟しなければならない。しかし、四人の子供の生活維持費は一人の成年のそれにほぼ匹敵するだろうと考えられている。

この著者はこれに付言して、強健な一人の奴隷の労働はその生活維持費の二倍に値すると計算されると述べ、また、最も卑しい労働者の労働でも一人の強健な奴隷の労働に値しないはずはないと考えているのである。

そういうわけで、最低種類の労働の場合でさえ、一家族を扶養するためには、夫と妻の労働をいっしょにして、かれら自身の生活の維持に正確に必要なものよりもいくらか多くを稼がなければならないということは、少なくともたしかなことのように思われる。けれども、このいくらかということがどれだけの割合なのか、すなわち前述の割合なのか、それとも他のある割合なのか、私は、それをあえて定めることはしないことにしよう。
(アダム・スミス著「国富論 T」中公文庫 p116-117)

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 さて、一般に商品の価格を規制するところのその一般的法則は、おのずからまた、労賃、すなわち労働の価格をも規制する。

 労働の賃金は、需要と供給との関係におうじて、労働力の買手たち、すなわち資本家たちと、労働力の売手たち、すなわち労働者たちとのあいだの競争の状態におうじて、あるいは上昇し、あるいは下落する。一般の商品価格の変動に、労賃の変動が照応する。しかし、この変動の範囲内では、労働の価格は生産費によって、労働力というこの商品を生産するのに必要な労働時間によって、決定されるであろう。

 それでは、労働力の生産費とはいかなるものか?
 それは、労働者を労働者として維持し、かつ彼を労働者として育成するために必要な費用である。

 したがって、ある労働が必要とする養成期間が少なければ少ないほど、それだけ労働者の生産費はわずかであり、またそれだけ彼の労働の価格、すなわち彼の労賃は低い。ほとんどまったく修業期間を必要とせず、かつ労働者のたんなる肉体的生存だけで十分であるような産業部門では、彼の生産に必要な生産費は、ほとんどただ、彼が労働しうる生活を維持するために必要な商品だけにかぎられる。したがって、彼の労働の価格は、必要な生活手段の価格によって決定されるであろう。

 ところが、これにくわえてもう一つ別に考慮すべきことがある。製造業者が彼の生産費を計算し、かつこれに従って生産物の価格を計算するにあたっては、彼は労働用具の消耗を見積もる。一個の機械がたとえば一〇〇〇マルクかかり、そしてこの機械が一〇年間で消耗されるとすると、彼は一〇年後には消耗された機械を新しい機械にとりかえられるように、年々一〇〇マルクを商品の価格にくわえる。同じやりかたで、単純な労働力の生産費のなかに繁殖費を算入して、労働者種属が自分を増加させ、かつ消耗された労働者たちを新しい労働者たちにとりかえることができるようにしなければならない。こうして、労働者の消耗も、機械の損耗の場合と同じように計算されるのである。

 こうして、単純な労働力の生産費は、総計すると、労働者の生存費および繁殖費となる。この生存費および繁殖費の価格が労賃をなす。このように決定された労賃は、労賃の最低限とよばれる。この労賃の最低限は、一般に生産費による商品の価格の決定と同じように、個々の個人にあてはまるものではなくて、種属にあてはまるものである。個々の労働者たち、何百万という労働者たちは、生存し、かつ繁殖することができるほど十分にはうけとっていない。しかし、全労働者階級の労賃は、その変動のなかで平均されてこの最低限となるのである。

 いまではもう、われわれは、どの他の商品の価格とも同じように労賃を規制するもっとも一般的な法則について理解できたので、われわれは、もっとくわしくわれわれの問題に立ちいることができる。
(マルクス著「賃労働と資本」新日本出版社 p46-48)

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◎「最も貧しい労働者でも、二人の子供がともに成年まで生きてゆけるためには、平均して少なくとも四人の子供を育てようと覚悟しなければならない。しかし、四人の子供の生活維持費は一人の成年のそれにほぼ匹敵するだろうと考えられている」

◎「単純な労働力の生産費は、総計すると、労働者の生存費および繁殖費となる。この生存費および繁殖費の価格が労賃をなす」と。