学習通信050618
◎湿気の多い仕事場……

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トンネル工事・鉱山……
 坑内労働も女性に解禁
  2007年度にも労基法を改正

 長らく女性が働くことを禁じてきたトンネル工事や鉱山などの坑内労働について、厚生労働省の専門家会合は7日、女性の就業制限を撤廃するよう求める報告書をまとめた。報告書は労働環境が改善され女性を排除する事情に乏しい」と指摘した。同省は来春の通常国会にも労働基準法改正案を提出し、女性差別の解消を目指す。

 女性の坑内労働排除は、「女性が坑内に入ると山の神が怒る」という迷信も一因となり定着してきた。制限が撤廃されれば、女性の就業を一律に禁じる規制は全廃されることになる。

 女性の坑内労働を禁じているのは1947年に制定された労働基準法。当時は石炭産業が盛んで、炭鉱など過酷な環境で働く女性も多く、母体を保護する必要から規制が設けられた。

 その後の男女雇用機会均等法施行に伴う改正で、医療行為や新聞・テレビ取材などの目的に限り女性の入坑は認められたが、今でも労働のための入坑は禁じられている、このため女性の土木技術者がトンネルや地下鉄工事に従事できないなどの支障が発生。昨秋には均等法の精神に反する新たな性差別問題だとして、日本経団連や東京都から女性の入坑を解禁するよう労基法改正を求める要望が出ていた。

 昨年一二月から議論してきた専門家会合がまとめた報告書では、粉じん対策や機械化など技術の進歩で坑内の労働環境は改善されたと指摘。「女性の就労を一律に排除しなければならない事情は乏しい」と結論づけ、解禁を求めた。今後は審議会で解禁する範囲を議論し、早ければ二〇〇七年度から施行される見通しだ。

 土木専門家の女性約二〇〇人で構成する「士本技術者女性の会」の佐藤厚子会長は「労基法が女性の坑内労働を阻んでいた面もあり、解禁により働く機会が広がるのは喜ばしい」と歓迎している。

▼坑内労働の禁止
 労基法六四条二項はトンネルや地下鉄、鉱山など地下にある工事現場で女性を働かせることを禁じている。工事が完了し安全衛生が保証されている場所は除外される。海外ではドイツ、フランスが鉱山で女性を働かせることを禁じているが、それ以外で女性の坑内労働を規制している国はない。
(日経新聞 20050618)

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 コーンウォルの炭鉱では、一部は地下で、一部は地上で、一万九〇〇〇人の男性とI万一〇〇〇人の女性と子どもが雇用されている。鉱山そのものの内部では、ほとんど成年男子と一二歳以上の子どもだけが働いている。──これらの労働者の物質的状態は、児童雇用委員会の報告によると、かなりよいように思われる。そしてイギリス人は、海底の下までも鉱脈をさぐっていく頑強で勇敢なコーンウォルの鉱夫のことをよく自慢すら。しかし、児童雇用委員会の報告書は、これらの人びとの頑強さについては、違った判断をしている。

この報告書は、バラム博士のすぐれた報告のなかで次のようなことをしめしている。

鉱山の坑底で見られるように、酸素が少なく、ちりや、発破のときに使う火薬の煙のまじった空気を吸うと、肺はいちじるしく冒され、心臓の働きがさまたげられ、消化器が弱められること、はげしい労働、とくに、若干の鉱山では若い頑強な男でさえ一時間以上かかるような、そして仕事のはじまる前と終わったあとに毎日おこなうはしごの登りおりが、こういう病気をひどく進行させること、その結果、小さいときから鉱山に働きにいっている男性は、地上で働いている女性に見られるほども身体が発達していないこと、多くの人が若いうちに奔馬(ほんば)性結核で死亡し、またたいていのものは働きざかりに長期にわたる結核で死んでしまうこと、彼らは早くからふけこんで、三五歳から四五歳のあいだに働けなくなること、非常に多くのものが、汗をびっしょりかきながら苦労してはしごを登ったあとで、立坑のあたたかい空気から地上の冷たい空気のなかへ急にでていくために、もともと病弱な呼吸器が急性に炎症をおこし、そのため死亡することもしばしばあるということ。

──鉱石の破砕や選別という地上の労働は、女性や子どもによっておこなわれているが、戸外でおこなわれるので、非常に健康的であるとのべられている。

 イングランドの北部、ノーサンバランド州とグラム州との境界に、オールストン・ムーアの大きな鉛鉱山がある。この地域からの報告は──児童雇用委員会報告のなかのミッチェル委員の報告も同様に──コーンウオルからの報告とほとんど完全に一致している。ここでもまた、坑道の空気中の酸素の不足、ちりや火薬の煙、炭酸ガス、硫黄ガスが充満しているという苦情がのべられている。

そのため、ここの鉱夫たちは、コーンウオルと同じように、身体が小さく、三〇歳をこえるとほとんどすべての人が胸窄症にかかっており、ついには、たいていそうなのだが、とくに、この労働を継続していると、完全な肺結核となるので、こういう人たちの平均寿命はごく短い。この地域の鉱夫がコーンウォルの鉱夫よりいくらか長生きなのは、コーンウォルでは、すでに見たように、一二歳からこの仕事をはじめるのに、ここでは一九歳になってから立坑にはいりはじめるからである。

しかしここでもまた、医師の陳述によれば、たいていの人は四〇歳から五〇歳のあいだで死亡する。この地域の公式の名簿に死亡が記録されている七九人の鉱夫の平均死亡年齢は四五歳であるが、そのうち三七人は肺結核で、六人は喘息で死んでいる。この周辺のアレンデール、スタノップ、ミドルトンという村落では、平均寿命はそれぞれ四九歳、四八歳、四七歳であり、胸窄症による死亡件数はそれぞれ全休の四八、五四、五六パーセントである。

注意すべきことは、これらの陳述はすべて、一九歳以前には仕事についていなかった鉱夫のみにかんするものであるということである。これをいわゆるスウェーデン表──スウェーデンの全住民についての詳細な死亡統計表──とくらべてみよう。この表はイギリスでは現在までのところ、ブリテンの労働者階級の平均寿命のもっとも正確な標準と考えられているものである。これによると、一九歳以上の男子は平均して五七歳半まで生きているとされ、したがって北部イングランドの鉱夫の寿命は、その労働のために、平均して一〇年ちぢめられていることになる。

しかしスウェーデン表は労働者の寿命の標準とされているものであって、もともと恵まれない状態にあるプロレタリアートの生存のチャンスをしめしたものであるから、ふつうの寿命よりも短い寿命をしめしているのである。──この地方では、大都市ですでに見たような木賃宿や宿泊所が見られるが、それは大都市のものと同じくらい不潔で、吐き気をもよおすようなところで、人間がつめこまれている。

ミッチェルはそういう部屋をおとずれたが、その部屋は長さ一八フィート、幅一五フィートで、四二人の男性と一四人の子ども、合計五六人を一四のべッド──その半数は、船内のように、ほかのベッドのうえにつくられていた──に収容するようになっていた。ここには汚れた空気を外にだす換気口は一つもなかった。ここでは三晩もだれも泊まらなかったのに、悪臭と空気があまりにもひどかったので、ミッチェルは一刻もこれを我慢することができなかった。暑い夏の夜に五六人も泊まり客がいたら、どんなにひどいことであろうか! しかもこれはアメリカの奴隷船の中甲板ではなく、「自由の身に生まれたブリテン人」の住居なのだ。

 次にイギリス鉱業のもっとも重要な部門である鉄鉱山と炭鉱へうつることにしよう。児童雇用委員会の報告は両者をまとめてあつかっており、しかもその対象の重要性にふさわしく、きわめて詳細にあつかっている。この報告の第一部は、ほとんど全部、これらの鉱山に雇用されている労働者の状態をあつかっている。しかし工業労働者の状態については詳しくのべたあとなので、ここでは本書の大きさから考えて必要とされる制限内で簡単にしてもよいであろう。

 炭鉱と鉄鉱山はほとんど同じ方法で採掘されているが、ここでは四歳、五歳、七歳の子どもが働いている、しかしたいていは八歳以上である。彼らは、採掘された鉱石を切羽から馬車道や本立坑まではこんだり、鉱山の各部門を仕切っている通気ドアを労働者と鉱石をとおすために開き、また閉めるために使われている。

このドアの番には、たいていいちばん小さい子どもが使われるが、この子たちはこのようにして、狭くて、たいていじめじめした坑道に、毎日一二時間もたった一人で座っていなければならず、しかも、なにも仕事をしなければ人間は愚鈍になり、動物のようになってしまうのだが、そういうなにもしない退屈さをしのぐのに必要な程度の労働さえないのである。

それにたいして石炭や鉄鉱石を運搬するのはたいへんな重労働である。というのは、これらの鉱石は、車のついていないかなり大きな箱にいれて、坑道のでこぼこした地面をはこんでいかなければならないからである。しかも、しばしばじめじめした粘土のうえや水のなかをとおったり、ときには急勾配をのぼったり、ときには非常に狭くて労働者が四つんばいになって這わなければならないような坑道をとおっていかなければならない。したがってこういうきつい仕事には、年上の子どもと成人した娘が使われる。

そのときどきの事情によって一人の労働者が箱をうけもつこともあり、二人の若い労働者がついて、一人がひっぱり、もう一人が押すこともある。採掘は成人男性か、一六歳以上の頑強な若者によっておこなわれ、これもきわめて骨の折れる仕事である。──ふつうの労働時間は一一時間から一二時間であり、しばしばもっと長く、スコットランドでは一四時間におよび、しかもしばしばその二倍の時間も働くこともある。したがってすべての労働者が二四時間も、いや三六時間も、地下にもぐって働くことも珍しくない。食事時間はほとんどきまっていないので、彼らは腹がへって時間があるときに、食事をする。

 炭鉱夫の状態は一見したところ、きわめて貧困なスコットランドの若干の地域とアイルランドの炭鉱地区を除けば、一般的にはかなり良好で、その賃金も、周辺の農業日雇労働者(もちろん彼らは飢えている)にくらべれば高いとのべられている。われわれは、イギリス全体でもっとも貧しい階級と比較した、もともと相対的なこういう陳述に、のちにたちもどる機会をもつであろう。さしあたり、われわれは、坑内労働の現在のやり方から生ずる害悪を考察しよう。そして、労働者にたいしてこのような苦しみをつぐなうことが、なんらかの貨幣賃金によって可能かどうかを、読者に判断していただきたい。

 石炭と鉄鉱石をひきずっていく仕事に従事している子どもや若者は、一般にひどい疲労を訴えている。どんなにひどい経営の工業施設でも、これほど疲労が一般的で、そしてこれほど極度にまでたっしたのを見ることはない。その点についてはこの報告の全体にわたって、どのページにも実例がならんでいる。

子どもは家に帰るとすぐ炉の前の石の床に身を投げだし、すぐ眠りこんでしまい、一ロも食事をとることができず、眠ったまま両親に身体を洗ってもらい、ベッドヘはこんでもらわなければならず、それどころか、帰る途中で疲労のため倒れてしまい、夜遅く両親がさがして、眠っているところが見つかったというような話は、いたるところにある。これらの子どもは、一週間の疲労をいくらかでも回復するために、日曜日には大部分をベッドですごすのがふつうのようだ。教会や学校に通うものはほとんどいない。そして学校へ通うものも、勉強をしたいという気持はあるものの、ひどく眠そうで、反応が鈍いと教師は嘆いている。年上の娘や女性の場合にも同じようなことが見られる。彼女たちはきわめて野蛮な方法で酷使されている。

──こういう疲労はたいていの場合、しだいに高まって非常な苦痛となるが、その影響は体質におよばざるをえない。こういう限度をこえた疲労のまず最初の結果は、すべての生命力が筋肉の一面的な発達についやされるので、ひっぱったり押したりするときに主として動かされる腕や脚や、背や眉や胸の筋肉がとくに異常なほど発達してもり上がり、他方、そのほかの部分は栄養不足となって発育がとまるのである。とりわけ、身長が低いままで伸びない。

炭鉱夫は、とくに恵まれた条件のもとで働いているウォリックシアとレスターシアを除けば、ほとんどすべて身体が小さい。また少年も少女も性的成熟がおくれており、少年の場合はしばしば二八歳になるまでおくれている。サイモンズ委員の前にあらわれた一九歳の少年にいたっては、歯を除くと、身体のどの部分も一一歳か一二歳の少年と同じくらいしか、発達していなかった。少年期がこのように長びくのは、根本的にはやはり成長がおさえられているということの証明にほかならず、もっと年をとってから、必ずその結果があらわれてくるのである。

このような事情のもとでは、しかも仕事のさいにいつも無理な姿勢を強制されているために体質が虚弱になっているので、脚が湾曲し、つまり膝が内側へ、足が外側へ曲がり、脊椎も湾曲し、そのほかの奇形もいっそうおこりやすく、そして実際にしばしばおこっているので、ノーサンバランドやダーラムでも、ヨークシアやランカシアでも、炭鉱夫は百人のうちに一人いるだけでも、身体つきで見分けられると、多くの人が、医師さえも、主張している。

とくに女性は労働のために非常に身体をこわしているらしく、ほかの女性と同じようにまっすぐな姿勢をしているものは、たとえいるにしても、きわめて少ない。骨盤の奇形と、その結果としての難産、ときには死にいたるほどの難産が、やはり坑内の女性の労働から生ずるということも、ここで証言されている。しかし、こういう局部的な奇形のほかに、炭鉱夫はさらに一連の特殊な病気に苦しまなければならない。それは炭鉱以外の鉱夫の病気ともかなり一致していて、作業の仕方から容易に説明される。

とくに下腹部をやられる。食欲がなくなり、胃が痛み、吐き気、嘔吐が多くの場合におこり、さらにはげしいのどのかわきがおこるが、これは鉱山の不潔な、ときにはなまぬるい水でいやす以外にない。消化の働きは妨げられ、そのため、ほかの病気がおこってくる。心臓病、とくに心臓と心嚢(しんのう)の肥大と炎症、心耳(しんじ)室の通路と大動脈の入口の収縮も、同じように鉱夫がひんぱんにかかる病気として各方面から報告されており、過度な労働によって容易に説明される。

ほとんど一般的に見られるヘルニアも同じで、同じように筋肉の使いすぎの直接的な結果である。一部は同じ原因から、一部は──これは容易に避けられるのだが──汚れた、炭酸ガスと炭化水素ガスがまじった、粉塵でいっぱいになった坑内の空気から、痛みがひどくて危険な肺の病気がたくさんおこる。とくに喘息がおこるが、それは、若干の地域では四〇歳ぐらいで、ほかのところではすでに三〇歳ぐらいで、たいていの鉱夫にあらわれ、短期間のうちに彼らは働けなくなる。

湿気の多い坑道で働かなければならない鉱夫たちの場合には、胸苦しさが当然もっと早くからあらわれる。スコットランドの若干の地方では二〇歳から三〇歳のあいだにあらわれ、一方、この年ごろにはそのほかに衰弱した肺は炎症や熱病に非常におかされやすい。この種の労働者に特有の病気は黒唾病であって、これは炭塵が肺全体にしみこむためにおこり、全身の衰弱、頭痛、呼吸困難および黒くて粘り気のある痰という形であらわれる。ある地域ではこの病気はそれほどひどくならないが、ほかの地域、とくにスコットランドではまったく不治の病気のように見える。

ここでは以上にのべたような症状がさらにひどくなっているほかに、呼吸が非常に短く、ぜいぜいといい、脈拍が速くなり(一分間に一〇〇以上)、とぎれとぎれに咳こむ。やせて衰弱がすすみ、患者は間もなく働けなくなる。ここではあらゆる場合にこの病気は死にいたる。イースト・ロージアン州ペンケイトランドのマケラー博士は、換気のよい鉱山ではどこでも、こういう病気はまったくおこらないが、換気のよい鉱山から換気の悪い鉱山へうつった労働者は、よくこの病気にかかるとのべている。したがって換気装置のついた立坑の建設を怠っている欲張りな鉱山所有者が、これらの病気がそもそも存在していることに責任があるのである。

同じようにリューマチも、ウォリックシアとレスターシア以外では、鉱夫の一般的な病気であり、とくに湿気の多い仕事場でおこっている。──これらすべての病気の結果、鉱山労働者は例外なくどの地方においても早くふけこみ、四〇歳をこえると間もなく──これは地域によって差はあるが──働けなくなる。四五歳をこえて、さらに五〇歳をこえて、鉱山労働者がなお仕事をつづけることができるというのは、きわめて稀である。

四〇歳でこういう労働者は老年期にはいりはじめると、一般的にいわれている。これは石炭を採掘する労働者にあてはまる。重い石炭の塊を箱にいれてつねにもちあげなければならない積込夫は、すでに二八歳か三〇歳でふけこんでしまうので、炭鉱地帯では、積込夫は青年になる前に老人になる、という諺がある。鉱山労働者が早く老化するために早死にをもまねくというのは、分かりきったことであり、彼らのあいだでは六〇代の人はきわめて少ない。鉱山が比較的健康的な南スタフォードシアにおいてさえ、五一歳にたっする人はほんのわずかである。

──労働者がこのように早く老化するために、まったく当然のことだが、エ場の場合と同じように、両親がしばしば失業し、ごく若い子どもたちに養ってもらっているのが、よく見られる。──炭鉱労働の結果をもうー度簡潔にまとめると、委員の一人であるサウスウッド・スミス博士の言葉を借りれば──一面では少年期が長くなり、他面では老化が早くなっているために、人間が十分にカをもっている時期、つまり壮年期がいちじるしく短縮され、またー般に早死にするために寿命がちぢめられているということに気づくのである。このこともまたブルジョアジーの負うべき責任なのだ!
(エンゲルス著「イギリスにおける労働者階級の状態 下」新日本出版社 p83-91)

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このこともまたブルジョアジーの負うべき責任なのだ!

労働者の状態……学習通信050617 を重ねて深めてください。