学習通信050628
◎人間社会を見る「科学の目」……
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時代を見るにも流れを見るにも、人間の労働生活が土台になる
また「科学の目」にもどりますが、エンゲルスの有名な論文に「猿が人間化するにあたっての労働の役割」(一八七六年)があります。この当時は、人類の最初の発祥の地がどこかということはまだつきとめられていませんでした。エンゲルスも、「熱帯のどこか」、おそらくインド洋の海底に沈んだ大陸のうえではないか、などとしていますが、そういう時に早くも、猿から人間への進化の歴史を解明したのは、「科学の目」の威力を示したものと言ってよいでしょう。
いまでは、猿から人間への進化がなしとげられたのがアフリカで、そこから世界各地へ人類が広がっていったことが、ほぼ明らかになってきています。シベリアから北海道へ、そして本州へという流れを浮かびあがらせた今度の研究は、日本人が人類のこの歴史的な流れのなかでどんな位置をしめるかがはっきりと分かるようになってきた点でも、大きな意味をもつと思います。
そして、そういう流れが分かるようになってきた最大の物的証拠が、マンモス狩りの道具・「細石刃」だったというのも、なかなか意味深長なことです。この道具は、経済学の言葉でいえば、「労働手段」に属するものです。「労働手段」とはものの生産に使う道具のことで、狩りの道具も、その一つです。
この労働手段について、マルクスは、『資本論』のなかで、興味深い言葉を残しています。いろいろなものが「どのようにして、どのような労働手段をもってつくられるかが、経済的諸時代を区別する」。
いま見てきた日本人の祖先たちの足取りも、彼らがどんな労働生活をしていたか、どのような労働手段を使っていたかということから明らかになってきたわけです。「経済的諸時代」の区別だけでなく、人間集団の流れも、労働手段の流れを見ることで、はっきりとつかむことができたのです。
そして、こういう角度から、日本人の歴史をふりかえると、モノを生産する活動、いわば人間生活の再生産が、人間と社会の歴史の土台となってきたことが、よく分かります。これが、史的唯物論で、マルクス、エンゲルスが開拓した「科学の目」の大事な内容、とくに人間社会を見る「科学の目」の核心はそこにありました。「科学の目」のこの分野での確かさも、人間知識の新しい発展を通じて実証されているのです。
(不破哲三著「二十一世紀と「科学の目」」新日本出版社 p31-33)
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「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」
第三版(1885年)へのエンゲルスの序文
──略──
しかし、これにくわえてもう一つの事情があった。マルクスこそ、歴史の運動の大法則をはじめて発見した人であった。
この法則によれば、すべて歴史上の闘争は、政治、宗教、哲学、その他どんなイデオロギー的分野でおこなわれようと、実際には、社会諸階級の闘争の──あるいはかなりに明白な、あるいはそれほど明白でない──表現にすぎない。
そして、これらの階級の存在、したがってまた彼らのあいだの衝突は、それ自体、彼らの経済状態の発展程度によって、彼らの生産、およびこの生産に条件づけられる交換の仕方によって、条件づけられているのである。
この法則が歴史にたいしてもつ意義は、エネルギー転化の法則が自然科学にたいしてもつ意義に等しいのであるが、ここでも、この法則がマルクスにフランスの第二共和制の歴史を理解する鍵をあたえた。
マルクスは、ここでこの歴史によって自分の法則を試験したのであって、それから三三年たったいまでも、われわれは、マルクスはこの試験に輝かしい成績で合格した、と言わざるをえないのである。 F・E
(マルクス著「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」マルクス・エンゲルス八巻選集B 大月書店 p152-153)
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「この法則によれば、すべて歴史上の闘争は、政治、宗教、哲学、その他どんなイデオロギー的分野でおこなわれようと、実際には、社会諸階級の闘争の──あるいはかなりに明白な、あるいはそれほど明白でない──表現にすぎない」と。