学習通信050818
◎戦争は大衆をおしえるのに十分……

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二 講和についての報告
   十月二十六日(十一月八日)

 講和の問題は現在の焦眉の問題、至難の間題である。この問題については多くのことがかたられたし、書かれもした。そして諸君も、おそらく、それについてすくなからず審議してきたであろう。だから、諸君のえらんだ政府が公布すべき宣言の朗読にうつらせていただきたい。


平和についての布告

 七月二七日──二十五日の革命によって樹立され、労働者・兵士・農民代表ソヴェトに立脚する労農政府は、すべての交戦諸国民と彼らの政府に、公正な民主主義的講和についてただちに商議をはじめることを提議する。

 公正な、すなわち民主主義的な講和は、戦争で疲弊しくるしみ苦悩している、すべての交戦国の労働者階級と勤労階級の圧倒的多数の者が渇望しているものであり、またロシアの労働者と農民がツァーリ君主制の打倒後このうえなくきっばりと根気づよく要求してきたものであるが、政府がこのような講和とみなすのは、無併合(すなわち、他国の土地を略奪することのない、他民族を強制的に合併することのない)、無賠償の即時の講和である。

 ロシア政府はこのような講和をただちに締結することをすべての交戦諸国民に提議し、すべての国とすべての民旅の人民代表の全権をもつ会談がこのような講和のすべての条件を今後最終的に確認するまで、あらゆる断固たる行動をいささかの遅滞なく即刻とる用意のあることを表明する。

 政府が、民主主義派一般、とくに勤労諸階級の法意識にしたがって、併合、すなわち他国の土地の略奪と解するものは、すべて、弱小民族が同意あるいは希望を正確に、明白に、かつ自由意志にもとづいて表明していないのに、強大な国家が弱小民族を合併することである。そのさい、その強制的な合併がいつおこなわれたか、また、強制的に合併されている、あるいはある国家の境界内に強制的に引きとめられている民族が、どれだけ発展しているかおくれているかには、かかわりない。また、この民族がヨーロッパに住んでいるか、遠い海外諸国に住んでいるかにも、かかわりない。

 もしなんらかの民族がある国家の境界内に強制的に引きとめられているなら、もし、この民族が希望を表明しているにもかかわらず──その希望が印刷物で表明されていようと、あるいは人民集会で、あるいは政党の決定で表明されていようと、あるいは民族的抑圧に反対する憤激や蜂起のうちに表明されていようと、おなじことである──この民族にたいして、合併するがわの民族、一般により強力な民族の軍隊が完全に撤退したうえで、この民族の国家的存立の形態の開題をいささかの強制なしに自由な投票によって解決する権利がこの民族にあたえられていないなら、そういう合併は併合であり、すなわち略奪であり暴行である。

 富強な諸民族がその略奪した弱い民族を自分たちのあいだでどのように分けあうかということをめぐるこの戦争をつづけることを、政府は人類にたいする最大の犯罪と考え、例外なくすべての民族にとってひとしく公正な上記の条件にもとづいてこの戦争をやめる、そういう講和の協定に即時調印する用意があることを、厳粛に声明する。

 それと同時に、政府は上記の講和条件をけっして最後通牒的なものとは考えないこと、すなわち政府は他のどんな講和条件をも検討するのに同意することを声明する。ただしそのさい政府は、いかなる交戦国であれその講和条件をできるだけ早急に提案すべきこと、講和条件を提案するにあたってはそれがまったく明白であって、あいまいさや秘密はすべて無条件に除去されるべきことを主張する。

 政府は秘密外交を廃止するとともに、すべての交渉を全国民の面前で完全に公然とおこなう確固たる意向があることを表明し、一九一七年二月から十月二十五日までに地主と資本家の政府が確認または締結したすべての秘密条約を全部公表することにただちに着手する。これらの秘密条約の全内容は、大多数のばあい、そうであったのだが、ロシアの地主と資本家に利益と特権をあたえるためのものであり、大ロシア人の併合地を引きとめまたは増加するためのものであるかぎり、政府はこれが無条件に即時無効であることを声明する。

 政府はすべての国の政府と国民に講和締結のための公開の商議をただちに開始することを提議するとともに、この商談を、電報による文書注視によっても、また種々の国の代表の商談によっても、あるいはこれらの代表の会議によっても、おこなう用意があることを声明する。このような商議をやりやすくするために、政府はその全権代表を任命して中立諸国に派遣する。

 政府はすべての交戦国の政府と国民に、ただちに休戦協定をむすぶことを提議する。そのさい政府は、この休戦がすくなくとも三ヵ月を期間としてむすばれることが望ましいと考える。これだけの期間があれば、戦争にひきいれられたか、あるいは参戦をよぎなくされた、例外なくすべての民族の代表が参加した講和の商議を完了することがまったく可能であるし、また、講和条件を最後的に批准するためのすべての国の国民代表の全権をもつ会談が召集されることもまったく可能である。

 ロシアの労農臨時政府は、すべての交戦国の政府と国民にこの講和提案をするとともに、とくに、人類のもっとも先進的な三つの民族、この戦争に参加した三大国家、イギリス、フランス、ドイツの自覚した労働者諸君にも呼びかける。これらの国の労働者は進歩と社会主義の大業に最大の貢献をした。イギリスにおけるチャーティスト運動の偉大な手本、フランスのプロレタリアートがおこなった、世界史的意義をもった一連の革命がそうであり、最後に、ドイツでは社会主義者取締法にたいする英雄的なたたかい、ドイツの大衆的なプロレタリア組織をつくりだすという、全世界の労働者の手本になる、長期にわたる頑強な規律ある活動が、そうである。

プロレタリア的英雄的行為と歴史的創造活動のこれらすべての手本は、われわれにとってつぎのことの保障となるものである。すなわち、上記の国々の労働者は、戦争の恐怖とその結果から人類を解放するという、いま彼らに諜せられている任務を理解し、そしてその全面的な、断固たる、献身的な勢力的活動によって、われわれが平和の大業を、それとともに
勤労被搾取住民大衆をあらゆる隷属とあらゆる搾取から解放するという大業を、成功裏に最後まで遂行するのをたすけるであろう。

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 十月二十四ー二十五日の革命によって樹立され、労働者・兵士・農民代表ソヴェトに立脚する労農政府は、ただちに講和交渉を開始しなければならない。われわれの呼びかけは諸国の政府と国民の両方に向けられなければならない。われわれは諸国の政府を無視することはできない。なぜなら、無視すれば、講和をむすぶ可能性が先にのばされるからである。人民政府にはあえてそんなことはできない。だがわれわれは、同時に諸国の人民にも呼びかけることをしない権利は、いささかもない。

どこでも、政府と人民は意見がくいちがっている。だからわれわれは、人民が戦争と平和の問題に介入するのをたすけなければならない。もちろん、われわれは、無併合・無賠償の講和というわれわれの綱領全体を、極力主張しつづけるであろう。われわれはその綱領から後退することはないであろう。しかしわれわれは、われわれの敵が、自分たちの条件はこれとはちがうから、君たちと商談にはいるわけにはいかないと言ったりする可能性を、彼らの手からたたきおとさなければならない。いや、われわれは、彼らにとって有利なこういう立場を彼らからうばわなければならない。われわれの条件を最後通牒的に突きつけてはならない。

だから、われわれはあらゆる講和条件、あらゆる提案を検討するつもりだという一条もふくまれているのである。しかし、検討するということは、まだ、受けいれるということにはならない。われわれはそれらの条件や提案を憲法制定議会の審議にゆだねるつもりである。この議会は譲歩してよいことと、してはならないこととを、権能をもって決定することになろう。われわれは、すべて口さきでは講和や公正についてかたりながら、実際には侵略的な強盗戦争をおこなっている諸国政府の欺瞞とたたかう。

どの政府も、自分が考えていることを全部はかたらないだろう。だがわれわれは秘密外交に反対であり、全国民の面拙で公然と行動するであろう。われわれは困難に目をつぶりはしないし、またつぶったこともない。戦争は拒絶するということによってはおわらせることはできない。戦争は一方だけでおわらせることはできない。われわれは三ヵ月間の休戦を提案するが、もっと短い期間でも、拒否はしない。それは、たとえしばらくの期間でも、へとへとになっている軍隊がほっとI息つくことができるようにするためである。なおそのほかに、すべての文開国で、条件を審議するために人民集会を召集することが必要である。

 休戦協定を即時とりむすぶことを提案するにあたり、われわれはプロレタリア運動のために多くのことをなしとげた国々の自覚した労働者諸君に訴える。われわれは、チャーティスト運動が存在したイギリスの労働者に、かずかずの蜂起のうちになんども自己の階級意識の力をあますところなくしめしたフランスの労働者に、また、社会主義者取締法との闘争に耐えぬき強力な組織をつくりだしたドイツの労働者に、訴える。

 われわれは三月十四日の宣言で、銀行家を打倒することを提案した。しかし彼らを打倒しなかったばかりでなく、彼らと同盟しさえした。いまやわれわれは銀行家の政府を打倒した。

 諸国の政府とブルジョアジーは、連合して労農革命を血まみれにおしつぶしてしまうために、全力をふるっている。しかし三年間の戦争は大衆をおしえるのに十分であった。他の国々でソヴェト運動がおこった。死刑執行人ヴィルヘルムのユンカーによって圧しつぶされはしたが、ドイツ艦隊が反乱した。最後に、われわれが住んでいるのはアフリカの奥地ではなく、すべてが急速に知れわたるヨーロッパであることを、思いおこす必要がある。

 労働者の運動は勝利をおさめ、平和と社会主義への道を切りひらいていくであろう。(長く鳴りやまぬ拍手)
(レーニン著「労働者・兵士代表ソヴェト第二回全ロシア大会」レーニン全集26巻 大月書店 p249-253)

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 ポーランドを殺すことはできないことを、ポーランドは、一八六三年に証明したし、いまも日々証明している。ヨーロッパ諸国民という家族のなかで独立の生存をもとめるポーランドの要求は、これを拒むことはできない。しかし、ポーランドの再興は、ことに二つの国民にとって、すなわちドイツ人にとってもロシア人自身にとっても、必要事なのである。

 他国民を抑圧している国民は、自分自身を解放することはできない。他国民の抑圧に必要とされる権力は、結局のところ自国民自身にたいして向かってくる。ロシアの軍隊がポーランドにとどまっているかぎり、ロシアの国民は、政治的にも社会的にも自分を解放することはできない。

だが、ロシアの発展の現在の状態からみて、ロシアがポーランドを失う日に、ロシア自体のなかで運動が、現在の秩序をくつがえすにたりるほど強力になるだろうことは、疑いない。ポーランドの独立とロシアの革命は相互の条件となっている。

ポーランドの独立とロシアの革命──際限のない社会的、政治的、財政的紊乱と、公的なロシア全体を侵蝕している腐敗との結果、革命は、表面に現われているよりもはるかにさしせまっている──が、ドイツの労働者にとって意味するところは、ドイツのブルジョアジーと諸政府、要するにドイツの反動が自分自身の独力でやるほかなくなるということ──やがて時のたつにつれて、われわれはかならずやこのカをかたづけるであろうが──である。
(エンゲルス著「亡命文献」M・E八巻選集D 大月書店 p190)

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◎「他国民を抑圧している国民は、自分自身を解放することはできない」と。