学習通信050825
◎「あなたは不必要な人間だ」……

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「失業」とは何を意味するのか

 一方では、生活と健康を破壊するような、非人間的とさえいえる猛烈な働き方をしている社員がいる。そして他方では、働きたいのに探しても探しても職がない失業者がいる。

 前に述べたように、商品経済の社会では、働いて収入を得ることが、即、自分が社会から認められ、社会に必要とされていることの証明になる。また適切な労働環境のもとで働くことができれば、人は労働によって能力を伸ばし、熟達や創意工夫を通して自己実現をはかることができる。労働を生きがいと感じるのは、このような労働の価値と本質があるからだろう。収入が事足りていても、定年退職後も働きたい人々がいるし、社会で働きたい主婦がいる。労働は人間的な欲求のひとつなのだ。

 その裏返しが失業である。だから失業は、収入がなくなるだけでなく、社会から「あなたは不必要な人間だ」と宣言され、排除され、孤立することを意味する。それは人格の否定、生きがいの喪失にもつながる。

 いったん職業を持っていた人が失業した場合は、生きがいの喪失感が大きいだけに、再就職への欲望も大きい。それに対して、学校を卒業して、はじめから職につけないまま失業している人は、喪失感の経験を持たないだけに、労働への意欲も湧きにくいのではないか。そのような若者が増えたとき、社会の将来にどんな問題が起きるのだろうか。

 一九六〇年から一九七四年のオイルショックまで、日本の失業率は一%台にあり、オイルショック後も約二%の水準にとどまっていた。九五年に三%をこえ、九八年には四%台となり、そこからは急上昇して、現在は五・五%前後にある。

 日本の失業統計は、たとえば調査期間中に一時間でも働いた人や、どんな少ないお金でも稼ぎを得た人は失業者から除かれたり、職があればすぐさま働ける状況にあっても職探しを止めている人は失業者に算入しないなど、失業率が失業者の実態からかけ離れていることが以前から指摘されている。就業を希望しているが適当な仕事がみつからない五六八万人の潜在失業者を失業率に加えると、失業率は一三・八%になる(総務省統計局、労働力調査特別調査報告、二〇〇一年八月)。

 失業者は、長年、蓄積してきた技能、知識、判断力などの能力を発揮できない。それは国富の大きな損失にほかならない。就職できない学卒者も、それまで勉強してきた学歴や成果を生かせない。経済の競争といいながら価値ある多くの富が無駄に捨て去られているのだ。
(暉峻淑子著「豊かさの条件」岩波新書 p25-27)

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 労働はあらゆる富の源泉である、と経済学者たちは言っている。しかり、労働は富の源泉である──自然とならんで。

すなわち、自然が労働に材料を提供し、労働がこれを富に変えるのである。しかしそれだけにとどまらず、労働はなお限りなくそれ以上のものである。

労働は人間生活全体の第一の基本条件であり、しかもある意味では、労働が人間そのものをも創造したのだ、と言わなければならないほどに基本的な条件なのである。
(エンゲルス著「猿が人間化するにあたっての労働の役割」M・E八巻選集 大月書店 p296)

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◎「労働は人間生活全体の第一の基本条件」と。