学習通信051013
◎その根本にかかわる問題……

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今、やりたいことをやる

 二〇〇三年九月六日、中学を卒業したばかりの一五歳の少年が、プロ格闘家としてデビューした。その彼、中嶋勝彦選手が立ったのは、総合格闘技「X−1」という団体のリングだった。総合格闘技は、プロレスよりさらに過激な勝負の世界。ボブ・サップさんが登場する「K−1」ならテレビで見たことある、という人もいるだろう。

 中学を出て一五歳、ということは高校生? と思うかもしれないが、中嶋選手は高校には進まなかった。中学に入学したときから「格闘家になる」と空手の練習に明け暮れ、卒業してそのままプロ団体に就職≠オたそうだ。それからは、さらにきびしい練習。プロといったって、デビューしなければお金ももらえない。ふつうの高校生には考えられないような、きつい毎日だ。引きしまった顔にギラギラ輝く目、ルックスも街を歩いている高校生とはまったく違う。

 ある雑誌に、中嶋選手のインタビューが載っていた。「どうして高校に行かなかったの?」という質問に、中嶋選手はこう答えている。「勉強は年をとってからもできるが、格闘技は今でないとできない。高校に行くよりプロになって集中したかった」

 そういえば、私の中学、高校にも同じようなことで悩む友だちがいた。「高校に行くより、弟子入りして寿司の板前になりたい」「大学に行かずに宝塚(音楽学校)を受験する。ダメなら劇団に入る」などなど……。そのとき、学校の先生やその子たちの親は必ず「芸能活動は高校、大学を出てからでもいつでもできるんだから、今はまず、上の学校に行きなさい」「学校を出ておかないと、おとなになってから後悔するよ」などと言っていた。そして結局、「受験をやめる!」と言っていた友だちも「そうかなぁ」とおとなに説得されて、ふつうに高校受験、大学受験をしていた記憶がある。

 でも、中嶋選手はその逆。「勉強ならいつでもできる」と高校に行くのをやめた。これってすごく勇気がいることだと思う。その気持ち、すごく大切。でももっと犬切なのは、中嶋選手のように「今、やりたいことをやる!」と学校とは違う道を選んだ人が、おとなになってから「さて、やりたいことも思う存分やれたし、そろそろ勉強しようか」と思ったときに、スムーズに高校や大学に戻れるシステムが、きっちり用意されることだ。せっかく「さあ、次は勉強だ」と思ったときに、三〇歳の高校生や五〇歳の大学生を受け入れてくれるところが見つからない、なんてことにならないようにしなければ。

 みんなとあまり年の変わらない中嶋選手、デビュー戦では見事、勝利をおさめた。これからもっともっと強い人たちと戦って、勝ったり負けたりしながらどんどん強くなっていくのだろう。高校に行くのもいいけれど、中嶋選手みたいに「今、やりたいことをやる!」という生き方も、カッコいいよね。自分の道を自分で選んだ中嶋選手の今後に、注目してみたい。

□高校や大学に行かずになにかをするとしたら、なにを選びますか
□勉強は四〇歳になっても五〇歳になってもできると思いますか
□若いうちにしかできないこと、ってなんでしょう
(香山リカ著「10代のうちに考えておくこと」岩波ジュニア新書 p33-35)

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一九三八年一月一八日
 巣鴨拘置所の頭治から目白の百合子宛

 第二信 十二月十一日付の手紙の後、二十五日付、一月八日付二通届いた。順に書いてゆくと先ずどてらは心配ない。つまり三四年いわゆるどてらをみないのと火の気ぬきの冬を迎えるので、何だかどてらというものは暖くポカポカしていたがという気持が漠然あってそのことを云っていたのだろう。ところがこの頃苦笑して自解しているのだが、実は寒気は着ているものの性質にあるのではなく、もっと広いところから来ているわけなのだ。今年はどてらを着てそれを自得し笑っている。ずっとシャツぬきで風邪を引くなら引けというつもりで暮しているが、却って風邪の方で今のところよけているらしい。

 生活の変化のこと、僕はここで近親の経済事情についても配慮はするが、いわゆる及ばない心痛をしたことはないから、そういう事情の中でも経済的処世法のことを第一のことと思い浮べてはいない。だから心配もしない。

基本的な勉強をすることは大変いいね。すくなくとも岩波文庫の哲学、経済の部の良い本(マルクス「賃労働と資本」)だけでも二三回は熟読すると随分有益だろう、経済学の大きな五分冊の本(マルクス「資本論」)を是非読んでおくがいいね。

音楽などの基本練習などとは少し違うが、基本ができていないと、新しい曲をいくら沢山弾いてもやはり技けているところができてくるのは似ているだろう。いくら・知識として音楽演奏法をよんでも、それだけではうまく弾けるようにならないことも似ている。生活事情というものは幾変転するが、良い生き方というものが自から正しい解決方向を導き出すことも違わぬことだ。だから根本的には別に新しく書くこともないが、──
(宮本顕治・宮本百合子「十二年の手紙」筑摩書房 p99-100)

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 科学的社会主義を勉強するのが、今日の主題なのですが、これは、私たちのものの見方・考え方、世界をどう見、どうとらえるか、その根本にかかわる問題です。
(不破哲三著「科学的社会主義を学ぶ」新日本出版社 p11)

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◎「生活事情というものは幾変転するが、良い生き方というものが自から正しい解決方向を導き出すことも違わぬこと」と。