学習通信051014
◎魅力ある幹部になろう……E
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一九三九年一月一八日
巣鴨拘置所の顕治から目白の百合子宛
久し振りで疲れたことだろう。キリキリ舞いしても、まあよく迷児にならないでやって来られたのだから、おめでたいことだ。血色は思ったより良いが、矢張り当然に力が入ってないね。退院してもよいと云われるのは、臨床上の処置が一応なくなったので、決してその時が完全な健康恢復ではないのだから、今は一番大切だね、呼吸器などでも「全快」と云われて退院して、普通人のように即日くらしはじめてたちまち再発する例は多々あるのはこの点のはき違えから来て居る。いくら好きな音楽会でも当分はやめること。
十二日付の手紙有難う。切開後三四日目に、「この分なら大丈夫」と「一筆」数枚の手紙を書いてくれても、心持は全く有難いが、こちらは、却ってそのこと自体から、「この分なら乱暴すぎる」と思わざるを得ない。代筆でよいのだ。誰も直接来ないと、悪くて、手が放せないのだろうかとも思ったりする。一日おきになど註文して居るのではない、誰が考えてもタイムリイな頃には、経過は知り度いのが当然だからね。キリキリ舞いして居るだろうと疑って、かたずを呑んで待って居るのだから。
手術前に、友人の手配や、その後も正月用鉢のことなど配慮してくれて居るのだが、こちらはキリキリ舞いそのものに最大の注意を払って居るとき肝心の点が分らぬことになって困る。こう云う場合は度々あるのではないのだから、特に頼んでも知らして貰い度いことだ。十二月の初旬、風邪前面会宅下として『太平洋における衝突』他二冊出て居るから、車ででも誰かと来たとき持って行って貰おう、今正月の福寿草がひらきつつあるときだから、今度は二十三日の鉢はいい。万両も勢が未だあるし。
さて、今年は僕は健康を本物にし上げることに最大の努力をそそぐ。努力と言っても条件内での持久的努力だが、それだけに本気でやる。
そちらも折角「虫」を退治した幸先で、先ず規則的日常を身につけることでの健康の完成、基礎的勉強の継続、事務的日常処理の把握と、三つの目標を仕上げてくれることだろう。
書きもののあるなしに拘わらずこれは努力が必要だと思う。書きものなどで時聞がいるときこそ、これらの自律性体得の修行の場面だから。
事務的と云うことは結局、その日の用事を明日に延ばさないと言うことになるだろう、もと、一月に一二度来て居たころは、この間にしておけばと云う心持から自然直ちに処理するとは行き兼ねたことだろうが、いつ病気になって了うか分らないのだから、──今度のように──聞いたことは即時即日、手紙での用事は届いた当日中に片附けると云う習慣を確立するとよいと思う。普通一時間足らずで実行に移せる位の用事が多いのだから、一寸した注文とか手紙とか。こうして出来るだけの範囲で片附いて居れば、急に動けなくなっても安心して養生出来ると云うものだ。
正月に際して、お互に今年度の向上を心掛けて、かく希い度い。そちらは今賑やかだね、まあ皆さん元気で。アイスクリーム・ホームは適切だね、冬の冷蔵車や夏の温室かサンルームでないだけに結構だよ。新法学全集は全集見本をみて御覧。七日に書いた速達(島田宛)は八日についた由レコードだね、達治へは世界知識は届いて居るのだね。風はないが冷い日だ、がホームでは風邪をひかぬよう御用心。『太平洋の景観』はやさしい文章。よく眠って、ゆっくり着実に丈夫になるよう。では又。
(宮本顕治・宮本百合子「十二年の手紙 上」筑摩書房 p143-144)
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仕事のスタイル
──略──
このスタイルの特徴はなにか。その特質はどんなものか。
この特質は二つある、──
(イ)ロシア的な革命的進取の精神と、
(ロ)アメリカ的な事務能力である。
──略──
ロシア的な革命的進取の精神は、不活発、千篇一律、保守主義、思想の停滞、祖先伝来の伝統への奴隷的な態度にたいする解毒剤である。ロシア的な革命的進取の精神──これは生気をあたえる力であって、思想を呼びさまし、前進させ、過去のものを打ちくだき、見通しをあたえるものである。これなしには、どんな前進運動も不可能である。
だが、これを仕事のアメリカ的事務能力と結びつけないならば、それは、実践のうえで中身のない「革命的」マニロフ主義に退化する恐れを十分にもっている。このような退化の例は──いくらでもある。「革命的」な作文癖や「革命的」な計画作りの病気は、だれ知らぬものはないだろうが、その源は指令の力ですべてのものをととのえ、すべてのものをつくりなおせるという信仰である。
──略──
アメリカ的事務能力は、反対に、「革命的な」マニロフ主義と妄想的な作文癖にたいする解毒剤である。アメリカ的事務能力──これは障害物を知らず、またこれをみとめず、ありとあらゆる邪魔物をその事務的な頑強さでおしのけ、一度はじめた仕事は、たとえそれが小さな仕事でも、最後までやりとげずにはおかない、あのおさえることのできない力であり、これなしには、まじめな建設の仕事は考えられない。
だが、アメリカ的事務能力は、それをロシア的な革命的進取の精神と結びつけなければ、狭い、無原則な実利主義に退化する恐れが十分ある。一部の「ボリーシェヴイキ」をしばしば堕落させ、彼らを革命の事業からはなれさせる、あの狭い実用主義と無原則な実利生首の病気は、だれ知らぬものもない。
──略──
ロシア的な革命的進取の精神とアメリカ的事務能力の結合──ここに、党活動と国家活動におけるレーニン主義の本質がある。
このような結合だけが、レーニン主義的活動家の完成された型、仕事におけるレーニン主義のスタイルを、われわれにあたえるのである。
(「スターリン全集E」大月書店 p199-202)
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◎「ロシア的な革命的進取の精神とアメリカ的事務能力の結合」と。
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