学習通信051109
◎まえおきを……

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 賃上げ要求に対して、財界は、競争のグローバル化の中で「日本の賃金は世界のトップレベルだから、これ以上賃上げすれば、コスト高で国際競争に負ける」と賃上げを拒否し、賃下げさえ強行してきた。しかし、日本の賃金が世界一というのは、円高の為替レートで比べると高く表示されるということであり、それによって賃金を抑えるというのは、経営側の交易条件を有利にし、利益拡大に賃金を従属させようとすることでしかない。

 そもそも賃金は労働力の価値(価格)であり、労働力の再生産費、つまり生計費なのだから、国際比較は各国の賃金でどれだけの生活物資が買えるかの購買力平価で比べることが必要である。その基準で見ると、図に示すように日本の賃金は主要先進国よりかなり低い。

 しかも、国際競争力は技術開発力、信用力、商品・サービスカなど多くの要素の総合で決まることであり、人件費で決まるかのようにいうのは労働者を惑わすごまかしでしかない。

 失業の増加と賃下げで、家計調査の消費支出は連続低下し、自己破産やローン破綻は急増し、生活破壊が進んでいる。企業の支払能力でなく、生計費をもとにした賃上げが必要とされる。
(「05年国民春闘白書」学習の友社 p42-43)

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──いろいろな理由から、農業賃金の全般的上昇がおこった。
 私の当面の目的には必要のないことだが、諸君の誤解をさけるために、いくつかのまえおきをのべておこう。

 もしある人が週にニシリングの賃金をうけとっていたとして、彼の賃金が四シリングに上がったならば、賃金率は一〇〇%上がったことになるであろう。これは、賃金率の上昇として言いあらわせばたいしたことのように見えるが、しかし週四シリングという現実の賃金額は、やはりあわれなほどわずかな飢餓賃金であることに変わりないであろう。だから諸君は、大げさにきこえる賃金率のパーセントに心を奪われてはならない。諸君はつねに、もとの額はいくらだったのか? ということを問題にしなければならない。

 さらに、おわかりになることと思うが、毎週それぞれニシリングずつうけとる者が一〇人、五シリングずつうけとる者が五人、一シリングずつうけとる者が五人いるとすれば、この二〇人は、あわせて毎週一〇〇シリングすなわち五ポンドうけとることになる。さて、もし彼らの週賃金の総額が、たとえば二〇%だけ上がるとすれば、それは五ポンドから六ポンドにふえるであろう。

実際には、一〇人の賃金はもとのままであり、一方の組の五人の賃金が五シリングから六シリングに上がっただで、他方の一組の五人の賃金は〔合計して〕五五シリングから七〇シリングに上がったのだとしても、平均すれば一般的賃金率は二〇%上がったと言えるだろう。半数の者はその状態がすこしも改善されず、四分の一の者はその状態がほんのわずかばかり改善され、四分の一の者だけがほんとうにその状態が向上したことになるであろう。

それでも平均で計算すれば、これら二〇人の労働者たちの賃金総額は二〇%増加したことになり、彼らを雇用する総資本と彼らが生産する諸商品の価格にかんするかぎりでは、彼らのすべてが平等に賃金の平均的上昇にあずかったのとまったく同じことになるであろう。農業労働のばあいには、標準賃金がイングランドとスコットランドの各州で非常に異なるので、賃金の上昇がそれらに及ぼす影響は非常にさまざまであった。

 最後に、この賃金上昇がおこった時期には、ロシア戦争の結果課された新税や、農業労働者の住宅の大量の破壊などのような、賃金上昇を帳消しにするいろいろな力が働いていた。
(マルクス著「賃金、価格および利潤」新日本出版社 p104-105)

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諸君の誤解をさけるために
@つねに、もとの額はいくらだったのか?
A労働者たちの賃金総額は二〇%増加したことに
B新税や、……住宅の大量破壊などのような、賃金上昇を帳消しに

マルクスを本気になって読めば現代の問題が見えてくる。