学習通信060130
◎本来の成果は……
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闘争戦術を考える基本
労働組合の闘争戦術とは、すでにみてきた闘争の戦略、すなわち闘争形態を基本として、労働組合がその要求を実現するという目的を達成するための、闘争の際に採用する、さまざまな種類の行動形態のことをいいます。
労働組合の闘争戦術としては、ストライキをはじめ、集会、デモンストレーション、ワッペン・リボン闘争、署名運動、請願運動、世論に訴える宣伝行動などさまざまなものがあります。そのなかでもっとも基本的な戦術は、あとで詳細にみるストライキです。
闘争戦術を考えるうえで、重要なことは、労働組合の闘争戦術はあくまでも要求を実現し、団結を強化するための手段であって、どのような闘争戦術を採用するかは、運動の目標や課題、客観的情勢、相手の態勢や労働組合の主体的力量などを十分に考慮したうえで選択されねばならないということです。同時に労働組合の闘争戦術は要求を実現し、団結をいっそう強化するという目的を達成するための手段であって、それ自体が目的ではありません。したがって目的と手段を混同してはならないことです。
わが国の労働組合運動の長い歴史のなかにも、目的と手段を混同した苦い経験がいくつもあります。一例をあげれば、まだ組合が結成されて間もないある労働組合がストライキという戦術を採用することをきめ、その成功のため執行部は全力をあげて奮闘しました。ところが資本の側は、労働組合をストライキに突入させ、それを利用して労働組合幹部を弾圧し、労働組合の分裂をねらっていたのです。そのため、ストライキは実行されたものの、要求にたいするまともな回答を獲得することができず、資本の庇護のもとに第二組合がつくられ、残った第一組合は、少数組合となり、長期の苦難の道を歩まざるをえなくなりました。こうした苦い教訓に学ぶことが大切です。
労働組合の闘争形態の基本が、職場を基礎とし、産業別統一闘争を軸に、地域的・全国的統一闘争、全国民的共同闘争の方向に発展させることにあることは、すでにみてきたとおりです。したがって労働組合の闘争戦術も、この基本的な方向で闘争を前進させるために最も適した手段は何か、という観点から選択されることが必要なのです。
つまり、第一に、そのときどきの情勢のもとで、敵に効果的な打撃を与え、要求が実現できる可能性がある戦術はどれか、
第二に、労働組合の団結をいっそう強化し、労働者の自覚を高めることができる戦術はどれか、
第三に、広範な国民との連帯がいっそうひろげられる戦術はどれか、
などを組合指導部は十分に考慮にいれ、どのような闘争戦術を選択するのかを決定して、組合員に提起し、職場討議などの討論をへて、全組合員の合意をかちとる努力をしたうえで実行することが大切です。
同時に、ストライキが闘争戦術の基本だからといって、なんでもかんでもストライキをというストライキ万能主義におちいることは正しくありません。それぞれの掲げている要求、課題に応じ、また闘争の条件に応じて、ストライキをふくむ多様な闘争戦術を組み合わせてたたかうことが重要なのです。
(猿橋真著「労働組合とはなにか」新日本出版社 p142-144)
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闘争の妥協
労働組合の闘争は、いつでも要求を完全にかちとれるわけではありません。それどころか、要求どおり実現しない場合がほとんどだと考えなければなりません。したがって、労働組合は闘争にあたって、「すべて」か「ゼロ」かといった態度をとるわけにはいきません。
情勢や敵・味方の力関係その他を冷静に判断して、団結を維持し、つぎの闘争にそなえるために隊列をととのえなおす必要があれば、大胆に妥結を決意しなければなりません。
妥結にあたっては、要求づくりのとき以上に、労働者一人ひとりの意見をくみつくす民主的な討論をてっていし、闘争をしめくくるにあたっては、要求がどれだけ実現したか、統一と団結が企業のわくをこえてどれだけ拡大したか、組合員の階級的自覚がどのように成長したかなどについて、前進面と消極的な面をあきらかにして、こんごの教訓をひきだし、一つのたたかいをつぎのより積極的な闘争への跳躍台にすることが必要です。
(労働者教育協会編「私たちと労働組合」学習の友社 p191)
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ときには労働者たちは勝つこともあるが、それはただ一時的でしかない。彼らの闘争の本来の成果は、直接の成功ではなくて、労働者たちがますます広く自分のまわりにひろげてゆく団結である。
労働者たちの団結は、大工業が生み出して、種々の地方の労働者たちを互いに結びつける交通手段の増大によって促進される。しかし、いたるところで同じような性格をもっている多くの地方的闘争を、一つの全国的な闘争に、一つの階級闘争に集中するためには、団結だけが必要なのである。しかし、どの階級闘争も政治的闘争である。そして、中世の市民が市町村道をもってして数世紀を要した団結を、鉄道をもつ近代的プロレタリアはわずかの年数でなしとげる。
(マルクス・エンゲルス著「共産党宣言」新日本出版社 p64)
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◎「妥結にあたっては、要求づくりのとき以上に、労働者一人ひとりの意見をくみつくす民主的な討論をてっていし、闘争をしめくくるにあたっては、要求がどれだけ実現したか、統一と団結が企業のわくをこえてどれだけ拡大したか、組合員の階級的自覚がどのように成長したか……」と。