学習通信060224
◎一人は万人のために……
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階級および階級対立をもつ古いブルジョア的社会の代わりに、各人の自由な発展が、万人の自由な発展のための条件である連合体が現われる。
(マルクス、エンゲルス「共産党宣言」新日本出版社 p86)
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一人は万人のために…の言葉の由来は?
〈問い〉……「一人は万人のために、万人は一人のために」の言葉が好きですが、語源、由来を教えてください。(東京・一読者)
〈答え〉……この言葉は、古代ゲルマン人の昔からの言い伝えであって、特定の賢人が考えだした標語ではないとみられ、航海する船の人たちの助け合いに由来するという説もあります。文献では早くは、フランスの作家、アレクサンドル・デュマの『三銃士』(1844年)にみられ、銃士たちの友情を表すモットーとされています。1823年に英国のラグビー校で始まったとされるラグビーの精神もこの言葉でいまに引き継がれています。これらからみて、ヨーロッパではかなり前から広く使われていたと考えられます。
18世紀末から産業革命が進行して資本主義社会の矛盾が現出するとともに、さまざまな社会思想が生まれます。この言葉もそのなかに援用されていったようで、協同組合運動の創始者オーエンの影響を受けた仏のユートピアン、カベは『イカリア旅行記』に明記しています。経済学者の服部文男氏は、同旅行記の第3版(1845年)の表紙と扉の両方に、「万人は各人のために、各人は万人のために」の標語がみられると指摘し、「結論的には…表紙と扉という、いちばん人の目につきやすいところに印刷されたのがこの標語の初出ですから、これが流布したのではないか」といっています。
協同組合運動では、ドイツ農協運動の父とされるライファイゼンが『信用組合論』第2版序文(1872年)に使ったのが由来といわれています。
標語の各国語訳とも関連して、服部知治氏は、イギリスの協同組合卸売連合会編の1930年版『人民年鑑』に「ひとりひとりはみんなのために、みんなはひとりひとりのために」(Each for All and All for Each)と記されていることを紹介し、「国際的には『各人』か『一人』かの概念が一致しないままで併記されており、この標語が社会思想としてはまだ十分に吟味されていないように思われる」といっています。しかし現在では、「One for all…」は「Each for All…」と同義として、生協やJA、保険業界はじめ、インターネット上の検索でも数多くのヒットがあるほどにふつうに使われています。(喜)
〈参考〉『日本の科学者』86年9月号、同87年2月号「談話室」服部知治、副島種典の文、服部文男著『マルクス探索』(新日本出版社)、加藤整著『協同組合のルーツを探る』(コープこうべ・生協研究機構)、『協同組合事典』(家の光協会)
(「しんぶん赤旗」2006.2.16)
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社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である。社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される。
生産手段の社会化は、人間による人間の搾取を廃止し、すべての人間の生活を向上させ、社会から貧困をなくすとともに、労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす。
生産手段の社会化は、生産と経済の推進力を資本の利潤追求から社会および社会の構成員の物質的精神的な生活の発展に移し、経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする。
生産手段の社会化は、経済を利潤第一主義の狭い枠組みから解放することによって、人間社会を支える物質的生産力の新たな飛躍的な発展の条件をつくりだす。
(「日本共産党綱領」)
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◎「各人の自由な発展が、万人の自由な発展のための条件である連合体が現われる」と。