学習通信060523
◎出発点はあいさつから……

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あいさつ

 若者から来る携帯メールや電子メールに抜けていて、大人のそれにはあるものは何でしょう?

 このなぞなぞの答えは、「あいさつ」だ。「いよいよ春めいて来ましたが……」「ごぶさたしていますが、その後お元気でご活躍のことと……」といった時候のあいさつはもちろん、「こんにちは」といった簡単なあいさつさえ若者のメールには書かれていない。「新年あけましておめでとう。今年もよろしく」と、ほとんどあいさつをするのだけが目的の新年のメールでも、若者は「アケオメ、コトヨロ」と省略形で書いてくる、といった記事が正月の新聞などにはよく載る。たしかに彼らは、日常の場面でも「ちゃ(こんにちは、の略)」「ちす(こんにちはっす、の略)」など省略形のあいさつをよく使う。もちろん、立ち止まったり頭を下げたりといった動作も省略、せいぜい軽く手をあげるくらいだ。

 あいさつは省略。この傾向はことばだけではなく、ほかのことについても言える。たとえば今、大学生は講義中はもちろん、教室の前に出て発表するときでも、まず帽子やコートを取らない。寒い時期だと、手袋やマフラーをしたまま「よろしくお願いします」のあいさつもなく、「え〜と、僕の研究なんですけどぉ」と話し出す学生さえいる。他人の家を訪問するときは、玄関の戸を開ける前にコートを脱いで、と教えられてきた世代にはショッキングな光景だろう。

 もちろん、だからと言って彼らの発表そのものが劣っているわけではない。あいさつ抜きでコートも着たままボソボソ話し始めた内容が、よく考えられまとめられていて感心することも少なくない。ただ、教師によっては、そういう学生に「態度が悪い」と辛い点をつけることもいまだにあるだろう。会社などではその傾向はもっと顕著なはずだ。あいさつやちょっとした手間を省いたために、せっかく実力があるのに認められず損をしてしまうのは、なんとも気の毒、もったいない話である。

 社会に出た卒業生と話していると、「あいさつを省くと損だなんて知らなかった」と言われることがある。「会社で一生懸命、企画書を書いてもなかなか採用されず、明らかに自分より劣っている人のが採用されたりする。よく聞くと、それはその人の方がきちんとあいさつして印象がいいから、と言うじゃないですか。どうしてそんなことで大人は決めてしまうのか、納得いかないですよ」。たしかに、実力とは関係のないあいさつや礼儀だけで評価を決めるのは、彼らにとっては許しがたいことだろう。

 しかし問題は、「大人にはそういう人もいる」ということをだれも教えていないことだ。そうやって腹を立てる若者に、「まあ、だまされたと思って、ちょっとあなたも朝はおはようございますと言い、プレゼンのときはスーツくらい着てみたら?」とアドバイスすると、「なんだ、そんなことくらい簡単ですよ」と実行し、「企画書、通りましたよ」とうれしい報告をしてきてくれたこともあった。彼らは、大人の社会に対して反抗的な気持ちを持っているからあいさつしないのではなくて、「した方がいい」ということを知らないから、自然に「ムダなことはやめよう」と省いているだけかもしれないのだ。

 ここで、「どうしてあいさつした方がいいんですか? 理由がわからないことはしたくないな」と食いついてくる若者がいた場合は、どうやって説明すればよいのか。これはむずかしい。ただ、そういう気骨のある若者は、あいさつ抜きで実力だけで認めてもらえるような場所を探し、力強く生きていくことだろう。

 大人にとっては身についた習慣になっているあいさつや礼儀も、「とにかくムダはやめよう、合理的に行こう」と思いながら育ってきた若者にとってはナゾめいて見えているわけだ。今でもあいさつは必要だ、と大人が確信しているなら、「やった方がこんなにいいことあるんだよ」と、きちんと若者に説明してあげる義務があるはずだ。
(香山リカ著「若者の法則」岩波新書 p122-125)

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(1)労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくる

 まず最初に強調したいのは、労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくるという問題です。

 「政策と計画」という場合、それを難しく考えないことが大切です。その土台は、労働者と日常的に結びつき、人間と人間との信頼関係をつくることにあります。

 大会決議では、このことについて、「支部と党員がまわりの人々と日常的に広く深く結びつくことは、あれこれの党活動の手段ではなく、それ自体が党の活力の根本にかかわる問題であり、党の基本的なありかたにかかわる問題として、重視されなければならない」と強調しました。この見地は、資本の労働者支配によって分断がもちこまれている職場では、とりわけ大切だと思います。

 全国のすぐれた経験では、例外なく、労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくることを、党活動の根本に位置づけています。聞き取り調査から大切だと感じたいくつかの経験を紹介したいと思います。

出発点はあいさつから
 一つは、出発点はあいさつから、ということであります。

 東京の出版関係の職場支部からこういう報告がよせられました。「党大会での『お茶を飲んでいきな』『野菜を持っていくけ』という言葉をおろそかにしてはなりませんという発言の報告を『印象的だった』と聞いた同志が、人間的結びつきで自分自身が変わらなければと思い、これまで会釈しなかった人には会釈を、会釈してきた人には『おはよう』と声をかけ、『おはよう』といってきた人とは会話する努力をし、これからは選挙での支持を広げ、読者も増やせるようにしたいと決意をのべている」。

 北海道の民間の職場支部からはこういう報告がよせられました。「支部では『実践する三項目』を支部の『政策と計画』として確認した。(1)職場に入ったら元気よくあいさつすること、(2)会議を欠席するときは必ず連絡すること、(3)月一回の宣伝紙を活用すること。これを実践してみたら、『合理化』で党員もくたくたになっていたが、半年たったら党と労働者の関係がよくなった。この積み重ねが支部の団結につながっている。こつこつ増やしてきたら、結果的には日刊紙で130%を達成し、日曜版もあと少しで130%目標に達するところまできた」。

 ここでも「元気よくあいさつする」ことが冒頭にすえられていることが、たいへん印象的でした。支部会議についても、「会議に100%出席」といわないで、「欠席するときは必ず連絡する」というところが、柔軟でリアルな知恵が働いていると感じました。
(「職場問題学習・交流講座への報告 幹部会委員長 志位 和夫」しんぶん赤旗 2006.4.25)

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◎「今でもあいさつは必要だ、と大人が確信しているなら、「やった方がこんなにいいことあるんだよ」と、きちんと若者に説明してあげる義務があるはず」と。