学習通信060619
◎女子をだんだん理科から

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木切れとクギで創造の喜びを

 ことしの夏、デパートを中心に売られた昆虫はなんと八十万匹、四千万円にも達したということです。売らんかなの商業主義は、いっぽうプラモデル、ブロックのような半完成玩具も売り出しています。しかし、このような半完成のおもちゃでは、ほんとうの創造性は育ちにくいものなのです。

 ブロックのばあいには、まだ東京タワー、飛行機、自動車、ビルディングのように、いくつかの形の違ったものをつくりだすことはできますが、それとても、直方体のブロックをつないでゆく、なんでもつくるという点でおもしろさがありますが、自分で創造するという点からみるとやはり限界があります。

 ブラモデルのばあいには、最初から何ができるかわかっています。できあがった物に、じょうず、へたの違いがあるだけで、創造的にものをつくることはできませんし、またできあがれば、それでおしまいです。プラモデルは落着きのない子や、ものごとを最後までやりとおす根気のない子には効果をあげることがありますが……。

 テレビを見せたり、おもちゃを買い与えて消費文化にふれさせることを悪いとはいいませんが、とくにものをつくり出す働く者の家庭では、もっと自分でものをつくり出す態度を大切にしたいと思います。はさみや色紙、ねん土、ペンチ、針金、金づち、木切れをあたえて、自分でものを創造する、工夫する喜び、楽しさにふれさせることが必要です。

 木切れにクギを打ったりばかりしていて、全然勉強しない子のおかあさんが困っていたことがありました。その話を聞いた教師が、子どもがなにをつくったか、どこを工夫したか記録するノートをつくらせ、おかあさんと相談して子どもの要求する道具や材料を少しずつ買い与えてゆきました。

 四年生になるとたんなる遊びから、チリ取りやくつの泥ぬぐいのような実用的なものをつくるようになりました。それとともに記録したことから、読まない、書かないという文字にたいする抵抗もとれてきました。中学へすすんでからは理科、工作へと発展し、中学三年のころには近所のラジオの修理を頼まれるまでに成長しました。

 すべてこういう方式でやれというのではありませんが、おもちゃ産業やデパートの販売政策にのせられるだけでなく、創造するあそびに子どもをなじませてゆく方法は身近にあるという一例です。
(近藤・好永・橋本・天野「子どものしつけ百話」新日本新書 p90-91)

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女子は理科ぎらい?

 みんなは理科は好き? 理科とはいっても、学校の勉強だけじゃなくて、科学読み物とかSFも入れていいよ、と言われれば、けっこう多くの人が「好きかも」って答えるんじゃないだろうか。

 ある調査では、中一男子の六五・四%、中一女子の五三・一%が理科は「好き」か「どちらかといえば好き」って答えたんだって。ところが、中二になると、理科好きは男子が六〇・五%、女子では四三・七%まで減ってしまう。だんだん勉強がむずかしくなるからだとは思うんだけど、女子の減り方が目立つよね。

 この結果を見て、みんなはどう思う? 「やっぱり女子は理科に向いてないんだな」と思っちゃった人、いる? 実は、多くのおとながそう思うみたい。そして、「いいんだよ。女の子は将来、結婚してお母さんになるんだから、むずかしい理科なんてわからなくても、だいじょうぶ」と言うおとなも少なくない。

 ところが、「女子の理科ぎらいは、本当に理科に向いてないからなの?」と疑問を持って、調査や研究をした人がいる。その内容が、毎日新聞に連載されていた「理系白書」で紹介されていた(『理系白書』はその後、単行本にまとめられて講談社から刊行された)。

 ある社会学者は、全国の一〇〇〇人近い中学生に何度かアンケートを実施、「中学生の理科ぎらい」について調べた。その中の質問項目に、「先生は、自分が理科でいい成績をとると期待している」「父親は自分が将来、科学技術にかかわる仕事に就いたら喜ぶ」というのがある。

 みんなはどうだろう? 「きみは理科が得意だよね。来学期もがんばって」と先生から期待されてる? もし「おとなになったら、科学者になりたい」と言ったら、親は「それはいいことだ。がんばれ」と喜ぶ?

 中二へのアンケートでは、「先生が期待している」と答えた生徒は、男子で一八・五%、女子ではたったの六・五%。「父親が喜ぶ」と答えた生徒は、男子で三一・四%、女子で二〇・七%だった。

 こういった結果を分析して、その社会学者は言っている。「科学への基本的な関心に、もともと男女差はない。それなのに、周囲の期待の低さや親の考えなどの社会的原因が、女子をだんだん理科から遠ざけるのではないか」

 そうか。せっかく理科が好きなのに、女子は先生や親が「女の子が理科好きでも、幸せになれないよ」なんて思っているのを感じ取って、理科好きをやめてしまう場合もあるのか。それって、なんだかつまらない。私もずっと理科が好きで、医師という理系の仕事についたけど、ぜんぜん不幸せじゃないよ。理科好きの女子のみんな、元気出してがんばって!

□あなたは理科や科学が好き? それともきらい?
□理科は将来、生きていくために必要だと思いますか
□もしどうしても科学者にならなければならないとしたら、なにを研究しますか
(香山リカ著「10代のうちに考えておくこと」岩波ジュニア新書 p42-44)

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◎「ものをつくり出す働く者の家庭では、もっと自分でものをつくり出す態度を大切にしたい」と