学習通信060706
◎なにによって決定される……
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価格
言いかえれば「値段」のことですが、こっちはなんたって「格」がついています。だから「値段」と言うよりも格調高くひびきますね。
「コレ、値段ナンボ?」は、自然ですが、「価格ナンボヤ?」は、どうもネ、でしょ?
しかし、どちらもヤマトコトバで言って「あたい」(=「価」、「値」)のグレード(=「格」、「段」)という意味。つまり、「あたい」の大小ということです。
しからば、「あたい」とは何ぞや。仇とか敵という字に「あた」という読みを当てることでわかるように、「あた」とは当面する相手ということです。「あた」と「あう(合う)」もの、つまり相手と対決、対応、適合するもの、それが「あたい」なのです。私は、「あたい」というヤマトコトバが、実によく価格の本質と機能とを表現していると、感心せざるをえません。
では、価格の本質と機能とは、どんなことでしょうか。
まず第一に、価格とは、買手から言えば、商品を手に入れるために提供しなければならない対価のことです。さらに正確に言えば、その対価として使われるおカネの額のことです。スーパーなどで、おカネを払わないで商品をもち出したりすれば、もちろん立派に犯罪。合法的に商品を手に入れたければ、売手の合意、同意を得なくてはなりません。その合意、同意の条件が、売手の要求する対価を払うということです。
では、なぜ対価を払うことが条件になるのか。それが第二のポイントです。その理由は簡単、明白。売手にもまた、自分の売っている商品とは別に、手に入れなければならないものがある。それを手に入れるには、おカネがいるからです。売手は、売ることによって買手になれる条件をつくるわけです。だから、売りも買いも、「相身互い」、つまり相互依存、相互制約という関係になります。
そこで、価格には、基本的に二つの性格、言いかえれば二つの顔がつきまといます。
第一。払う人にとって、価格は、ものを手に入れるコストです。第二。受け取る人にとって価格は、所得です。コストなら、低ければ低いほど望ましい。所得なら高ければ高いほど望ましい。そこで、同じ一つのものの価格をめぐって、売手と買手のあいだで利害が対立します。
では、価格は両者のあいだの対立を生むだけか。そうではないのです。生産性を高めてコストを安くするとか、薄利多売(単位あたりの利益率は低くても利益額は大きくなる)とか、両者の利害を調整するメカニズムもまた、経済のなかにあります。
(岸本重陳著「新版 経済のしくみ百話」岩波ジュニア新書 p88-89)
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こうして、一つの商品の供給がこの商品にたいする需要よりも弱いときには、売手たちのあいだには、競争がわずかしか生じないか、あるいはまったく生じないかである。この競争が減少すれば、それと同じ程度に、買手たちのあいだの競争が増大する。その結果は、多少の差はあれ商品価格のかなりの上昇である。
これとは逆の結果をともなう逆のばあいがもっとしばしば生ずるということは、よく知られている。需要にたいして供給がいちじるしく超過すると、売手たちのあいだの絶望的な競争。買手がないと、ばかげた安値での商品の投げ売り。
しかし、価格の上昇、下落とはどういうことか? 高い価格、低い価格とはどういうことか? 一粒の砂も、顕微鏡でみれば高く、一個の塔も山とくらべれば低い。そして、価格が需要と供給との関係によって決定されるとすると、需要と供給との関係はなにによって決定されるのか?
任意のブルジョアに問い合わせてみよう。彼は一瞬もためらわずに、第二のアレクサンダー大王のように、この形而上学的な難問を九九の表で一刀両断するであろう。彼はこう言うであろう、「私が売る商品の生産に一〇〇マルクかかっていて、私がこの商品を売って一一〇マルクを手に入れる──もちろん一年後に──とすると、それは世間なみの、正直な、正当な利得だ。しかし、私がひきかえに一二〇マルク、一三〇マルクをうけとるとすると、それは高い利得だ。そして私が二〇〇マルクも手にいれるということになれば、それは異常な利得、法外な利得というべきだろう」。
こうして、このブルジョアにとって利得の尺度となるのはなにか? 彼の商品の生産費である。
彼がこの商品とひきかえに、それよりもわずかしか生産の費用がかからなかった他の商品の分量を回収するならば、彼は損をしたのである、彼が彼の商品とひきかえに、それよりも多く生産の費用がかかった他の商品の分量を回収するならば、彼は得をしたのである。
そして、彼が利得の下落または上昇を計算するのは、彼の商品の交換価値がゼロ──生産費──より下か上かの度合いによってなのである。
(マルクス著「賃労働と資本」新日本出版社 p41-42)
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◎「彼が利得の下落または上昇を計算するのは、彼の商品の交換価値がゼロ──生産費──より下か上かの度合いによって」と。