学習通信060714
◎つぎつぎと生産関係が……

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 生産において人びとは、たんに自然に働きかけるだけではない、またたがいにも働きかけあう。彼らが生産するのは、ただ、一定の仕方で協同し、彼らの活動をたがいに交換することによってであるにすぎない。

生産するために、彼らはたがいに一定の関連と関係とに入りこみ、、そしてただ、この社会的関連と関係との内部でのみ、自然にたいする彼らの働きかけ、すなわち生産がおこなわれるのである。

 生産者たちがたがいに入りこむこれらの社会的諸関係、そのもとで彼らがその活動を交換し、生産行為の全体に関与する諸条件、これらはも
ちろん、生産手段の性格におうじて異なるであろう。

火器という新兵器の発明とともに、軍隊の内部組織全体は必然的に変化し、その内部で諸個人が軍隊を形成し、軍隊として活動することができる諸関係は変転し、さまざまな軍隊相互の関係もまた変化した。

 だから、諸個人がそこで生産する社会的な諸関係、つまり社会的な生産諸関係は、物質的な生産手段、生産諸力の変化および発展とともに、変化し変転するのである。

生産諸関係は、総体としては、社会的な諸関係、つまり社会とよばれるものを、しかも一定の、歴史的な発展段階における社会、他と区別される独特の性格をもった社会を、かたちづくる。

古代社会、封建社会、ブルジョア社会は、このような生産諸関係の総体であり、同時にそのいずれもが、人類史における特殊な発展段階をしめしているのである。
(マルクス著「賃労働と資本」新日本出版社 p49-50)

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生産関係(経済制度)

 前の章では、人間が道具を用いて自然界に働きかけ、物質的な富を生産したということを述べてきた。ところが、このばあい、生産にたずさわっている人間と人間とのあいだでは、かならずなんらかの社会的な関係がとりむすばれる。人びとはたがいに一定の関係をむすび、それをつうじて生産をおこなうのである。このような、生産における人と人との関係(社会的関係)を生産関係とよぶ。前章で述べた「生産力」が人間と自然との関係をあらわしたのにたいして、「生産関係」は、人間と人間との社会的関係をあらわしている。経済制度とはこの生産関係のことであって、この生産関係をもとにしてそれぞれの社会(「経済的社会構成体」)の骨格が形成されるのである。

 生産関係(経済制度)の基本を決定するのは、生産がおこなわれるとき、「生産手段をだれが所有しているか」ということ、つまり生産手段の所有形態である。生産関係のタイプは大きく分けてつぎの二つからなる。

 第一は、生産にたずさわる人びと全体が生産手段の所有者であるというばあい。たとえば原始時代の共同体がそうであった。ここでは生産手段の私有ということは存在しなかった。生産手段の所有者は共同体全体であった。また社会主義社会でもそうである。社会主義では生産手段は私有物でなく、社会全体の共有物である。人びとはそれを共同でわがものとするのである。

 生産手段が社会全体の所有であるばあいには「階級」というものは存在しない。人びとは、たがいに平等な間係におかれており、搾取ということがおこらない。したがって搾取のシステムを維持するための、階級間の支配・従属という関係は生じないのである。

 第二は、生産手段が人びと全体の所有ではなく、特定の人間集団だけが生産手段を所有し、ほかの人間集団は生産手段を所有していないというばあいである。このように生産手段の所有関係、そこから生じる生産上の地位によって区別される人間集団が階級である。あとで述べる奴隷制度、封建制度、資本主義の三つが階級制度である。

奴隷制度では奴隷所有者が、封建制度では領主が、資本主義社会では資本家がそれぞれ生産手段を私有している。


奴隷や、封建農奴や、賃労働者は、生産手段をもっていない(ただし農奴は生産手段のごく小部分にあたる農具だけは自分で所有している)。

これらの生産手段を所有する階級と、生産手段を(全然またはごくわずかしか)所有しない階級とのあいだには支配──従属の関係が生まれた。そして所有階級は、労働することからはなれ、もっぱら労働を監視・管理する立場にまわり、生産物の大きいわけまえをとった。

これにたいして、所有しない階級は、労働の仕事を一手に引きうけながら、生産物の少ないわけまえしかもらえなかった。つまり、その労働の生産物の一部分を搾取された。そこで二つの階級のあいだには、階級的な利害対立にもとづく階闘争がくりひろげられたのである。

 以上のような、生産手段の所有ということを中心としてかたちづくられる人間と人間との関係、すなわち生産手段の所有関係、生産における人間と人間とのたがいの地位(相互協力か支配従属か)、生産物の分配関係などを、ひっくるめたものが「生産関係」である。
 以上のところを整理してまとめるとつぎの表のようになる。

 これらの生産関係は、生産力(自然に働きかけて物を生産する力)のそれぞれの発展段階におうじて形成された。たとえば、生産力がきわめて貧弱なために人びとが共同で労働する以外に自然の猛威にうちかつことができなかったころには、それにふさわしい原始共同体という生産関係が存在した。生産力が発展してゆくと、それに対応した新しい生産関係が出てこざるをえなくなり、この新しい生産関係は生産力のいっそうの発展に道をひらく。

ところが、やがてこの生産関係も古くなり、生産力の発展に役に立たなくなって、またべつの新しい生産関係にとってかわられる。……のように生産力の発展を基礎として、つぎつぎと生産関係が交替してきたのである。原始共同体、奴隷制度、封建制度、資本主義、そして社会主義、というのがそのおもな形態であった。

 これらのうちで、原始共同体が崩壊して奴隷制度に移ったばあいのほかは、経済制度の交替は階級闘争と社会革命をつうじておこなわれるのがふつうであった。
(林直道著「経済学入門」青木書店 p182-185)

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◎「生産諸関係は、総体としては、社会的な諸関係、つまり社会とよばれるものを、しかも一定の、歴史的な発展段階における社会、他と区別される独特の性格をもった社会を、かたちづくる」と。