学習通信060925
◎無法状態が……

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無法状態がまかりとおっている

畠山……私も雇用情勢は大変厳しいというのが実感ですね。たしかに有効求人倍率は改善していますが、不安定雇用が依然多い。企業が求める正社員雇用は、即戦力なのでそれなりの経験、資格を持っていないと対象外になるため、多くの一般青年にとって厳しいことに変わりはありません。

 先日、職安に立ち寄って求人情報をインターネットで検索してみたのです。正社員雇用が増えているという報道がされたあとだったのですが、正社員求人のなかに、請負会社の日給月給が少なくありませんでした。正社員といえば月給という認識ですが、日給月給で請負会社に雇用される正社員では、賃金面で登録型派遣と変わりない。仕事がなければ収入にならないわけで、増えているといわれる「正社員」の求人の中身に注意が必要だと思いました。

 正社員でも、非正規であっても、無法状態といっていいひどい扱いを受けているというのがもう一つの実感です。

 正社員についていえば、いま成果主義の取材をすすめているのですが、何より長時間労働が特徴的です。先日、ある大手電機企業グループの青年労働者から話をききました。その会社では、事業部ごとに平均の残業時間が毎月集計されています。多くが技術者ですが、トップの事業部の平均値は毎月一〇〇時間前後の残業がざらでした。最長の人は一五〇から二〇〇時間ですから、いつ過労死してもおかしくない水準です。この会社に限らず、技術系の職場、とくにIT職場では異常な長時間労働が横行しています。

 *畠山さんによる「シリーズ職場 成果主義を追って 止まらぬ日立病≠フ一〇回連載が「しんぶん赤旗」七月二日〜七月一六日付に掲載されている−編集部。

 膨大な仕事量と開発期間の短期化で、人手が絶対的に不足していることが要因です。にもかかわらず、常にコスト意識がたたき込まれていますから、人を増やしてほしいとはとても言えない。あわせて労働者の「孤立化」があります。課長クラスも業務をもつプレーヤー兼任なので、マネージメントができない状態におかれているため、部下の面倒が見られない。

若い層がいくら大学院を出て知識をもっていても、企業ですぐに役立つ技術はありませんから、キチンとした援助が必要なのに、その余裕が先輩にも上司にもない。そういうなかで、一言教えてもらえばすぐにわかるようなことでも、もんもんとして時間が過ぎていく。もともと仕事量が多いので、異常な長時間労働をさらにまねくことになり、精神疾患による休職者が増えています。

会社もこれを重大視していますが、解決策は見いだせないのが現状のようです。では非正規のほうはどうかというと雇用不安が何よりも大きくて、いつクビになるかわからない。

ある大手企業の製造現場に派遣された青年ですが、派遣される際に、「とにかく派遣先のいう通りに何でもいうことをきいて働いてくださいね」と念を押されるそうです。ですから、長時間残業をいわれても、無理をいわれても働く、断ってはいけないと思っています。

こういう話をきくと、働く権利を知る機会がないので、何が違法なのか、自分にはどんな権利があるのかわからない。だから違法性がみえず、横行している無法状態が常識になってしまっている状況があるんだと感じています。

 さきほど人間扱いされない間題が出されましたが、連載「立ちあがる若者たち」の取材で、ある家電量販店で暴言まがいのひどい扱いを受けている派遣労働者たちの話をききました。

本当に奴隷のような状態におかれていて、労働基準法無視、人格を否定する言動がまかり通っています。そこの会社の若手社員たちも、店長や店長代理からひどい暴言を吐かれているのです。こうした連鎖状態にあって、一番弱い立場の非正規雇用の労働者がもっとも苦しめられている、そういう構造的なものがあると思いました。
(「座談会 青年の状態と未来を考える」経済2006.10月号 p46-47)

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 そしてなによりもまず、工場のなかでは労働者はどんな具合なのだろう! ここでは工場主は絶対的な立法者である。彼は自分の思いどおりに工場規則を公布する。彼は好きなようにその規則集を変更したり、追加したりする。

そして彼が馬鹿馬鹿しいことをそこにつけ加えても、裁判官は労働者にむかって次のようにいう。「諸君はたしかに自分自身の主人だった。諸君は、もし気にいらなければ、こんな契約を結ばなくてもよかったのだ。しかしいまや、諸君は自由意志でこの契約を結んだのだから、これに従わなければならないのだ」。──おまけにこのようにして労働者は、自身ブルジョアの一員である治安判事に嘲笑され、ブルジョアジーによって与えられた法律からも嘲笑される。

このような判決はしょっちゅう下されている。一八四四年一〇月に、マンチェスターの工場主ケネディの労働者がストライキをおこなった。ケネディは工場内にはりだしてあった次のような規則にもとづいて労働者を告発した。すなわち、どの作業室からも一度に二名以上の労働者が契約解除の予告をしてはならない! そして裁判官はケネディの主張を正当とみとめ、労働者に先にのべたような回答を与えたのである(『マンチェスター・ガーディアン』紙、一〇月三〇日)。

そしてこういう規則がなんと一般化していることであろう! 聞いてみよう。(一)工場のドアは作業開始後一〇分で閉められ、朝食まで誰もはいることをゆるされない。この時間に欠勤しているものは織機一台につき三ペンスの罰金を科せられる。

(二)それ以外の時間で機械が稼動中に不在であるのが見つかった(力織機の)織布工は、一時間あたり、また彼が監視しなければならない織機一台あたり、三ペンスの罰金を科せられる。作業時間中に監督の許可なしに作業室から出たものも、同じように三ペンスの罰金を科せられる。

(三)はさみをもってこない織布工は一日につき一ペニーの罰金を科せられる。

(四)杼(ひ)、ブラシ、油さし、車輪、窓などがこわされたときは、すべて織布工が弁償しなければならない。

(五)織布工は、退職するときには一週間前に予告しなければならない。工場主は仕事ぶりが悪いとか、態度が悪いとかの理由で、予告なしにどの労働者も解雇できる。

(六)どんな労働者も仲間と話をしたり、歌をうたったり、あるいは口笛を吹いたりしているところを見つかったら、六ペンスの罰金を科する。仕事中に職場をはなれたものも同じように六ペンスの罰金を科する。

私のところにはもう一つ別の工場規則がある。それによると、三分間遅刻したものはすべて一五分間分、二〇分間遅刻したものは四分の一日分を、賃金から差しひく。朝食前にまったく出勤しなかったものは、月曜日は一シリング、ほかの日は六ペンスの罰金など。このあとの方の規則はマンチェスターのジャージー・ストリートのフェニックスエ場のものである。

−──こういう規則は、大きな、秩序のいる工場では多様な作業を組みあわせる必要があり、それを確保するために必要なのだといわれるであろう。ここでは軍隊におけると同じように、きびしい規律が必要なのだ、と──よろしい、そうかもしれない。しかし、このように恥ずべぎ専制がなければ存在しえないような社会秩序とは、いったいなんなのか? 目的が手段を神聖化するのか、それとも、手段が不当なら目的も不当であるという結論が完全にみとめられるのか、いずれかである。

軍隊の経験のあるものは、たとえ短期間であっても軍隊の規律のもとににいるというのは、どんなものであるかを知っている。しかし、これらの労働者は、九歳から死ぬまで、精神的、肉体的な鞭のもとで生きていくよう、運命づけられているのだ。

彼らはアメリカの黒人よりもひどい奴隷である。なぜなら彼らは黒人以上にきびしく監督されているからである──それでいてなお、彼らは人間らしく生き、人間らしく考え、感じるべきだと要求されているのである! たしかに彼らは、彼らをこのような状態におとしいれ、機械と同じようにあつかっている抑圧者と制度にたいして、燃えるような憎悪の念をもつときだけは、人間らしい感覚をもう一度もつことができるであろう! 

しかし、労働者が共通して陳述しているところによれば、無産のプロレタリアから強奪したわずかばかりの金で自分のもうけをふやすために、労働者に科した罰金を情け容赦なくきびしくとりたてている工場主がたくさんいるということであり、その方がはるかに恥ずべきことである。

さらにリーチは次のように主張している、労働者は、朝しばしば工場の時計が一五分ほど進められていて、彼らが工場に着いたときはすでにドアがしまっていることがあり、作業室では書記が罰金帳をもって歩きまわっていて、たくさんの欠勤者を記録している、と。リーチ自身、かつてこのようにして閉めだされた労働者を工場の前で九五人も数えたことがあったが、この工場の時計は、町の公式時計よりも、夜は一五分おくれ、朝は一五分進んでいたのである。

工場報告もこれと似たようなことをのべている。ある工場では、作業時間中に時計をおくらせたので、規定の時間より長く働かされたけれども、労働者は割増賃金をもらわなかった。ほかのある工場では、堂々と一五分長く働かせ、三番目の工場にはふつうの時計と、主軸の回転数をしめす機械時計とがあった。機械の運転がおそいと、て一時間分の回転数にたっするまで機械時計にしたがって働かされ、仕事がうまくいって、規定された時間にならないうちにこの回転数にたっすると、それでも労働者は一二時間いっぱい働きつづけなければならなかった。

証人はさらにつけ加えている、私の知っている数名の娘は、よい仕事についていて残業もやっているが、それでもこういう専制支配のもとにいるよりは売春に身をおとした方がよいと思っている(ドリンクウォーターの証言、八〇ページ)。

──リーチは、罰金のことにもどって、次のようにのべている、出産の近い女性が仕事中にほんのちょっとだけ休むために腰をおろしたら、この違反行為のために六ペンスの罰金をかけられたのを、私は何回も見ている。

──仕事ぶりが悪いためにかけられる罰金はまったく恣意的である。商品は倉庫で検査をうける。そしてここで検査する倉庫主任が、労働者を呼びだしもしないで、罰金をリストに記入する。労働者は監督から賃金の支払いをうけたときにはじめて、自分が罰金をとられていることを知るのだが、商品はすでに売却されているか、いずれにせよ処分されている。

リーチはこういう罰金表をもっているが、それはつぎあわせると一〇フィートの長さになり、金額では三五ポンド一七シリング一〇ペンスにたっする。彼が語るところによると、この罰金表が作成された工場では、ある新任の倉庫主任が解雇されたが、それは彼の罰金のかけ方が少なすぎ、工場主に週五ポンド(三四ターレル)ずつ損をさせたという理由によるものであった(『ゆがめようのない事実』 一三〜一七ページ)。そして私は、リーチはきわめて信頼できる人物で、嘘は一つもつけない人物だということを、もう一度くりかえしておく。
(エンゲルス著「イギリスにおける労働者階級の状態 上」新日本出版社 p259-262)

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◎「本当に奴隷のような状態におかれていて、労働基準法無視、人格を否定する言動がまかり通って……若手社員たちも、店長や店長代理からひどい暴言を吐かれている……連鎖状態にあって、一番弱い立場の非正規雇用の労働者がもっとも苦しめらる……構造的なもの」だと。