学習通信061020
◎「北朝鮮とドミノ」……

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核武装 「検討の上 持たないことも」
外相が議論否定せず

 麻生太郎外相は、十七日の衆院安全保障委員会で中川昭一自民党政調会長の発言以来、問題となっている「核武装」をめぐる議論について、「いろんなものを検討したうえで持たないというのも一つの選択肢だ」などとのべ、核武装の議論そのものをおこなうことを否定しませんでした。核兵器廃絶の先頭に立つべき被爆国の外相として重大です。

 麻生外相は、答弁の途中、「何の検討もしないまま、無知のままで」といいかけるなど、核武装の議論を否定することをやゆするような姿勢も示しました。

 また、二〇〇三年の毎日新聞のアンケートに、核武装を「検討すべきだ」と回答していたことについて、「その当時、核兵器保有について検討すべきか、だんだん隣がみなもってくるときに、日本だけ何の検討もされていないというのはいかがなものか(と考えた)」と説明しました。

 一方、麻生外相は、「そもそも日本において、核兵器保有の選択肢は考えられないという政治の立場については従来から説明してきた」などとのべました。社民党の辻元清美議員への答弁。
(「赤旗」20061018)

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止まらない外相の「核武装」発言
改憲タカ派政権の地金か

 麻生太郎外相の「核武装」発言が止まりません。

 核武装をめぐる議論について「いろんなものを検討した上で持たないというのも一つの選択肢だ」(十七日、衆院安保委員会)と容認。十九日には「核保有の議論はいいことか」との質問に「言論を封殺するという考え方にはくみしない」(衆院テロ・イラク特別委員会)と開き直ったのです。

 問題なのは、麻生外相の発言が一時の「失言」ではなく、本心ではないかということです。

 麻生外相といえば、昨年末の訪米時にチェイニー副大統領らに「北朝鮮がこのまま核開発を進めていくなら、日本でも核武装しなければならない」と発言した、と『週刊文春』(三月九日号)に報じられた“前科”があります。このときは外務副大臣が否定会見を行いました。

 さらに「朝日」十九日付は、「麻生氏は十七日夜、自民党議員との会合で、同党の中川昭一政調会長が『核保有の議論はあっていい』と発言したことについて『タイミングのいい発言だった』などと支持する考えを表明していた」と報じています。

 いずれも、本人が認めたものではありませんが、国会の場での発言は「核武装」発言が本心ではないかと疑わせるにたるものです。

 北朝鮮に対して、世界が核計画の放棄を求め、一致して対応しようとしているなか、麻生外相の発言はそれに逆行し、アジアと世界の緊張を高めるもの。唯一の被爆国の外相としての資格もありません。

 見逃せないのは、安倍晋三首相まで「議員個人の発言まで(抑制できない)。日本は言論が自由だ」とかばいだてしていることです。

 首相もまた、官房副長官時代に講演で「核兵器保有合憲」発言を行い、米ニューヨーク・タイムズ紙(二〇〇二年六月九日付)も「日本で核兵器のタブーが挑戦受ける」と大きく報じたことがあります。その際も、「核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところではない」(〇二年五月二十八日、参院予算委員会)との答弁を繰り返し、批判をあびました。

 北朝鮮の核実験実施に対して、どう対応するかという岐路で、「核武装」論議をめぐって改憲タカ派政権の地金がみえてきたとしたらあまりにも重大です。(藤田健)
(「赤旗」20061020)

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核保有論が公然化
韓国、保守派が政権攻撃

 【ソウル18日共同」北朝鮮の核実験を受け、韓国で在韓米軍基地への核兵器配備や自主開発を公然と求める声が出ている。韓国政府は米国の「核の傘」で安全保障は保たれているとして沈静化を図リたい意向だが、盧武鉉大統領の安保政策に批判を強める保守派による「政権攻撃の材料」の色合いも濃く、論議は容易に収まりそうにない。

 「心理的、戦略的な安心を得るためにも米軍の戦術核兵器を(韓国に)投入するか、核を持たねばならない」

 野党ハンナラ党の高照興議員は十三日、国会で、現在計画されている六百兆ウォン(約七十四兆四千億円)以上を投じる軍の新鋭化計画では北朝鮮との戦力の均衡を保てないとし、約二千億ウォンで実現可能な核保有が現実的だと主張。朴哲彦元議員はラジオなどで、日本が北朝鮮の実験を口実に核武装に乗り出すと予想しながら韓国の核保有論を展開している。

 韓国では在韓米軍に配備されていた戦術核が一九九一年に撤去され、海外の米軍基地からの核戦力支援が安保政策の軸だ。米韓定例安保協議(SCM)の文書にも「核の傘の提供」が明記されている。ただ、核使用でフリーハンドを確保したい米国の意向で具体策は示されず「抽象的な合意」(韓国紙の京郷新聞)とみられる。

 核実験を南北が同年に合意した朝鮮半島非核化共同宣言への違反だと批判する韓国政府・与党には核の再配備も保有も選択肢にない。当面二十日からのSCMで、「核の傘」の具体的内容の公表を米国に求め安保不安を和らげたい考えだが、受け入れられる可能性は低く、逆に北朝鮮包囲網ヘの関与拡大へ圧力をかけられる場になりそうだ。

 一方で研究者の中に核保有論はほとんど見られない。徐東晩尚志大教授はハンギョレ新聞への寄稿で、北朝鮮の核を非難し制裁を強硬に唱える人ほど韓国の核保有を主張するという矛盾があると指摘。核保有論は「北の核武装を正当化させ、制裁の根拠を自ら失わせる」と批判している。
(京都新聞 20061019)

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全アフリカ議会議長

 アフリカ連合(AU=加盟五十三力国・地域)のモンゲラ全アフリカ議会議長はこのほど日本経済新聞記者と会い、北朝鮮の核実験を非難する一方で「『世界の警察』を標榜(ひょうぼう)する国が核兵器を大量に持つ一方で、別の国には持つな、と追っている」と米国が主導する現状の核不拡散体制に批判的な立場をにじませた。

 議長は現状の核不拡散体制を「ダブルスタンダード(二重基準)」と表現。「核兵器の廃絶に向け、国際的な条約を考える時機にある」と述べ、保有国と非保有国の立場を固定化している核拡散防止条約(NPT)に代わる枠組みを模索すべきだとの考えを示唆した。

 核技術の流出防止については「アフリカ議会としても論議することになるだろう」と表明した。
(日経新聞 20061020)

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時勢2006年10月
核兵器の全面廃絶
−非核三原則の堅持を−
    井ヶ田良治

 十月九日午前、北朝鮮は同国の東端に近い咸鏡北道の山中で、予告していた核実験をおこない、実験は安全かつ科学的に成功したと発表した。その地震波の大きさは、日本の観測ではマグニチュード四・九度であり、たとえ一O%の放射能もれがあったとしても、日本本土は安全だという。この報道が事実とすれば、大量虐殺兵器の核兵器の開発保持は許せない行為であり、とりわけ非人道的な拉致問題を引き起こしている北朝鮮政府の核開発であるから、東北アジアの安全と平和を脅かす危険が深まったといわなければならない。

 専門家によれば、北朝鮮のそれは、プルトニウム系の核爆弾であり、一個の核弾頭約五キログラムとして、すでに六ないし八個の核兵器を製造するプルトニウムを有しているという。世界にこれ以上の核の拡散をゆるしてはならない。北朝鮮の暴挙を強く非難し、平和な外交交渉の場に北朝鮮を引き戻さなければならない。

 だが、同じことは、すでに核兵器を保有している諸国に対してもいえることではないか。核兵器保有国は核兵器の縮減・廃棄を求められている。しかるに、世界全体では、すでに核弾頭は約三万個あるという。ロシアの一万六千発をはじめ、アメリカの一万三百五十発、中国の四百二発、フランスの三百四十八発、イギリスの百八十五発、そのほかインド・パキスタン核実験をおこない、イスラエルが核弾頭を有している疑惑があり、イランが核実験の権利を主張し、そして、今回北朝鮮が実験を強行した。文字通り、核戦争の危険がせまりつつある。

 人類どころか、地球全体が核兵器に覆いつくされ、破滅の危機にさらされている。既存の核保有国が核兵器の全面廃絶を宣言してこそ、新しく核武装を企図する国に核実験をやめさせる説得力が生ずる。だが、残念ながらその気配はない。

 北朝鮮の核実験予告に心を痛めていたさなかで、私が一番心配になったのは、日本の核武装化の懸念という報道である。というと、まさかと言う気がするかもしれない。非核三原則は世界唯一の被爆国日本の悲願とも言うべき鉄則ではないかと。だが、のんきなのは日本国内だけである。世界では、北朝鮮の核実験を機に日本が核武装にふみきるのではないかという懸念が高まっている。

多くの米メディアは「日本の技術力があれば数ヶ月で核兵器を保有できる」という専門家の見方を紹介している。ワシントン・ポスト紙は「米当局の主な懸念は、日本のこれからの反応(核武装)だ」と指摘している。十月六日付のニューヨーク・タイムズ紙は「北朝鮮とドミノ」と題して、日本の核武装の可能性に警鐘を鳴らした。米国務省筋は、日本が非核の公約を破ることになりかねないと注目されているのは、「タカ派とみられている安倍政権の誕生が大きい」と分析している。

 安倍首相は、首相になる以前に、小さな核兵器を日本ももってよいと発言していたという。世界の懸念は憲法改正を目指すと公言する安倍首相の就任と相まってのことである。

 格差増大を野放しにし、社会福祉切り捨て政策、国民の思想を国家統制する愛国教育の教育基本法改悪、平和憲法改定を掲げた安倍内閣の登場は、世界中でもアメリカでも日本の核武装の不安をまき散らしているのである。

 事態は流動的で、日本の新政権がどう反応するのか未知数である。けれども、十月九日ソールでの記者会見で、安倍総理が北朝鮮の核実験によって「新しいより危険な核の時代にはいった」と述べたのが気になって仕方がない。新しい核時代にはいったとなると、平和憲法を捨て、愛国心教育を復活するとなれば、危険な北朝鮮の核武装に対抗するのに、日本は核武装も辞さないというのであろうか。力には力でと、核抑止力で核を抑えようというのでは、報復戦がくりかえされるだけである。けっして平和にはならない。

 人類の運命がかかっている核戦争の危険を回避し、日本が世界の核のなかで日本と世界の平和を回復する道は、平和憲法を守り、国家間の対立を煽る国粋主義的愛国心を抑制し、非武装中立を守り通すしかないのではないか。

 核兵器を全面的に廃絶し、非核三原則をまもり、アジア地域に非核地帯をひろげる。日本が助かる道はこれしかない。
(「京都学習新聞」200610)

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──安倍総理が北朝鮮の核実験によって「新しいより危険な核の時代にはいった」と述べたのが気になって仕方がない──と。