学習通信061117
◎日本カード……

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非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議
(昭和46年11月24日衆議院決議)

一 政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守するとともに、沖縄返還時に適切なる手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである。

一 政府は、沖縄米軍基地についてすみやかな将来の縮小整理の措置をとるべきである。
 右決議する。

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核武装艦船
領海内の航行を容認
久間防衛庁長官が見解

 久間章生防衛庁長官は十七日の閣議後の記者会見で、政府が非核三原則で禁じる核兵器の国内持ち込みについて核武装艦船の領海内航行は容認する見解を明らかにした。三原則を事実上修正する発言だけに野党などの反発は必至だ。

 政府が核武装艦船の寄港と領海通過を認めずにきたことは「それはそれでよい」と肯定した。そのうえで、以前は沿岸三カイリだった領海が十二カイリに広がったことを指摘。「通行してよかったのが、何で(現在は)駄目かという話になる」と語り、三カイリより外の領海は対象外との認識を示した。

 日本は一九九六年に領海は十二カイリと定めた国連海洋法条約を批准した。

 久問氏は同日、宮崎礼壱内閣法制局長官、的場順三官房副長官に会い、政府見解の整理を要請した。十六日に「日本をかすめるような状態で潜水艦が動くのは持ち込みにならない」と発言していた。
(日経新聞 夕刊 20061117)

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防衛庁長官
「日本をかすめる核は持ち込みにならず」

 久間章生防衛庁長官は十八日の民放CS番組で、非核三原則で禁じている核の持ち込みに関して「日本をかすめるような状態で(核兵器を搭載した米国の)潜水艦が動くのは、持ち込みにはならない」との考えを表明した。

 政府は過去の国会答弁などで、核武装艦船の日本寄港、領海通過を認めないとしている。久間氏は「かすめる」がどのような状態かには触れなかったものの、核武装艦船の日本領海の航行を容認する発言ともとれ、波紋が広がる可能性がある。
(日経新聞 20061117)

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日本を見る目
世界の眼 日本編

核武装論
待望論に警鐘
一方で容認論

 北朝鮮核実験で緊迫した北東アジア情勢に、六カ国協議再開による平和的な問題解決への道筋が見え始めた。これより先、十月中旬以降の各国マスコミ論議の重点は、制裁など北朝鮮への直接の対応から、東アジア情勢への影響の分析に移り、日本の核武装問題も俎上(そじょう)に載った。

 十月十八日付米紙クリスチャン・サイエンス・モニターは一問一答形式で情勢を説明した。

 「われわれは戦争の瀬戸際にいるのか」「否」「北朝鮮の金正日総書記はどのくらい危険なのか」「行動は予測不能だが、自暴自棄になっているわけではない。核ミサイルを米国やその同盟国に撃ち込めば、報復で自国が壊滅することを知っている」「では、米国は何を心配しているのか」「北朝鮮の核がテロリストの手に渡るかもしれず、日本、韓国、台湾の核武装の引き金になるかもしれない、ということだ」

シナリオ阻止

 米保守系誌ウィークリー・スタンダード(オンライン版)は十八日の論評で「米国民、特に保守派の間に見られる、日本の将来の核武装を好ましいものとする考え方」に警鐘を鳴らした。

 「日本の核武装は東アジア全域に雪崩現象を引き起こし、米国の同盟関係を根底から揺るがすことになる。このシナリオを阻止するため、国防総省は日本に安全保障の確約を与える必要がある」二十一日付シンガポール紙ストレーツ・タイムズ社説によれば「ライス米国務長官は、必要なら核兵器を使ってでも日本防衛に全責任を負うと確約した。同盟国に手を出すなとの北朝鮮への警告であると同時に、日本核保有の選択肢はあり得ないという、日本へのメッセージだ」。

 二十八日付オーストラリアン紙東京特派員電は、非核三原則堅持という安倍晋三首相の再三の言明は、米国の日本核武装論者を失望させたと指摘。日本が核武装しない理由として「核戦争では絶対に勝てない相手である中国と直接対峙(たいじ)することになる」「米国の利益にも、世界の利益にも反する日本核武装阻止のため、米国から圧力が日本にかかってくる」の二点を挙げた。

利益は一致

 にもかかわらず、米国内では日本核武装容認論がくすぶる。ワシントン・ポスト紙コラムニスト、チャールズ・クラウサマー氏は二十日付紙面で次のように論じた。

 「唯一の被爆国として、日本が核武装に抵抗感を抱くのは自然だが、隣国がミサイルばかりか核兵器まで持つようになった今では、考え方を変えたとしてもおかしくはない」「日本が核武装するぞと脅せば、中国はそれを阻止するため、本気になって北朝鮮に核開発をやめるよう圧力をかけるだろう。北朝鮮に核開発をやめさせられるのは、この日本カードだけだ」

 「軍事的・政治的安定の維持、中国の拡張を平和的に抑えること、北朝鮮のならず者体制への対抗、アジア全域への自由と民主主義の伝搬など、環太平洋における米国と日本の利益は一致する」「韓国をはじめ、誰もが安保ただ乗りを決め込んでいるこの世界で、米国はなぜ、信頼できる安定した民主的同盟国である日本に、米国の負担を一部肩代わりするためのあらゆる手段を与えないのか」(共同通信編集委員 横山司)
(京都新聞 20061115)

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 敗戦から「有事法制」まで

 戦後はどうかというと、やはりだんだんに、少しずつ変わってきたと思うのです。敗戦後、新憲法が発布されて、武力を持たない、というところから日本の戦後は始まりました。けれども、その後、自衛のための軍隊は憲法第九条が禁止するところの軍隊ではないということで、自衛のための軍隊、つまり自衛隊というものをつくりました。

そして、その自衛隊がだんだん大きくなっていきます。大きくなるのはあたりまえですね。そのときの仮想敵国はソ連を中心にした社会主義陣営でした。ソ連は核武装をした大国ですから、軍事力で対抗して自衛をしようとするなら、これは大変なことです。だから自衛隊の軍備はどんどん大きくなったのです。

 それからだいぶ間があきましたが、自衛のためだけではない活動が自衛隊に認められるようになっていきました。自衛隊の新ガイドラインとか、周辺事態法というものができましたね。新しいガイドラインは法律ではありませんが、政治の指針として決められたものです。これによって、米国の軍隊が戦争状態に入って軍事行動をとるときには、自衛隊が全力を挙げてその後方支援をするということになったわけですが、その際、新ガイドラインに沿って兵隊が海外に出ていくことになります。

それまでは海外派兵はしないといっていたのですから、この点が大きく変わることになりました。だから、新ガイドラインはすごく重要な問題なのです。

 自衛隊ができた後も、憲法によって自衛隊にはいろいろな枠がはめられていました。そのうち大きなものは次の三つです。

 その一つは、自衛隊の予算をGNPの一%を超えないようにするというものです。自衛隊予算に「一%枠」という天井が設定されたわけです。

 二つめは、核兵器は持たない、というものです。これも法律ではないけれども、日本国の基本的な政策です。「核兵器は持たず、つくらず、持ち込ませず」というもので、「非核三原則」といいます。これまで政府は、これは国是みたいなもので基本的な政策だと言ってきました。

 三つめは、海外派兵の禁止です。海外派兵はしてはいけないということになっていました。自衛のための自衛隊だから、日本が攻められたときには反撃するけれども、自分から外に出て行って軍事行動はとらないということです。

 ところが、米軍は世界中どこへでも行きますから、先ほど述べた新ガイドラインによって米軍の後方支援をするということは、世界中のどこへでも出かけていけるということになり、自衛隊の活動範囲は大きく拡大されることになります。戦闘には直接参加しないと称しているのですが、直接に戦闘に参加することと後方支援をすることとの関係は、非常に微妙です。大事な点は、形はともあれ「参戦する」ということです。参戦の仕方にいろいろなニュアンスがあるとはいっても、戦争行動に参加するということが、この問題の大事な点です。

 こうした変化の最も新しいものが、ここしばらく国会で議論されている有事法制です。有事法制が新ガイドラインとどこがちがうかというと、罰則をもっている点ですね。これは、戦前の治安維持法と国民徴用令との組み合わせに非常に近いものになります。徴用を拒絶すれば罰則があるのです。こんどの有事法制案が成立すれば、軍事攻撃を受けたとき、これを「武力攻撃事態」と言いますが、自衛隊改正法案によって徴用ができることになります。それに応じなければ罰則がある、それがいままでよりもさらに一歩進んだ点です。

 次の問題は、「武力攻撃事態」とはなにかという点にあります。政府が国会での質問に対して答えているところによれば、日本に対して、あるいは日本の同盟国に対して軍事攻撃が予想されるとき「武力攻撃事態」に入るというのです。実際に鉄砲が撃たれていなくても、相手が撃つかもしれないと考えられるときは、「武力攻撃事態」に入るのです。その状態で軍事行動を行うことは、普通の言葉で言えば、先制攻撃ということになりますね。

 これは非常に矛盾しているでしょう。いつ有事法制を適用するのかということを詳しく聞くとそれは日本に対する「武力攻撃事態」のあるときだと言います。そこで「武力攻撃事態」にはどういうことが入るのか。どこかの国が日本に対して発砲したときかというと、そうじゃない、発砲するおそれがあるときも「武力攻撃事態」に含まれると言うのです。

しかし、もし日本に対する攻撃のおそれがないならば、そもそも自衛隊の必要はないわけでしょう。政府は戦後五〇年問自衛のための軍隊は憲法の禁止する軍隊ではない、自衛のための軍備は許されるといってきたのですが、自衛が必要なのは、誰かが攻撃してきたとき、もしくはその恐れがある場合ですね。攻撃される恐れがなければ自衛の必要はないのですから、自衛隊が設立されたときから、その恐れはつねにあったと考えるべきでしょう。いま、日本が攻撃される恐れのあるときにこの法律を発動する、といっても、恐れはたえずあったわけです。したがって、論理的に言えば、この法律はたえず発動することができるわけです。

 もうひとつ、誰が恐れがあるかないかを決めるかというと、これは政府が決めるのです。具体的には首相ですね。だから議会の承認は事前に必要ない、となれば、これは限りなく戦前の状態に近くなります。

 これまで日本の歴史は「なし崩し」に変わってきたと言ってきましたが、今回の「なし崩し」はかなり大きな一歩だと思います。もし有事法制が成立すれば、多くの人がさんざん指摘していますが、人権のいろいろな制限や私有財産の取り上げ、ことに徴用に関してはさまざまなことが起こり得ます。

具体的には貨物船を徴用して武器弾薬や燃料などを運ぶことになります。それをインド洋やペルシャ湾にいる米軍に運ぶとすると、米軍の敵国側からは日本が交戦状態に入ったと見なされるでしょう。もし相手側にその能力があれば、その貨物船を爆撃するかもしれないのです。そうすれば徴用された人は死ぬということになります。そういう事態が生ずる可能性は大きいといえるでしょう。

 幸いにして、いままでは、そういうことは起こっていません。米国のアフガニスタン攻撃の際に、自衛隊がインド洋で燃料を補給しましたが、そういうことは起こりませんでした。そのいちばん大きな理由は、日本政府は最初からわかっていただろうと思いますが、相手にその能力がなかったからです。インド洋の米軍の艦隊を攻撃する海軍・空軍の力は、アフガニスタン側にはなかった。だから、そこでいくら補給しても日本側を攻撃できなかったのです。

相手が変わればその状況は変わります。つまり爆撃能力のある相手と戦争になれば、相手側が補給路を断とうとするのはあたりまえではないですか。クラウゼヴィッツの『戦争論』という本がありますね。近代戦争の理論では当然のことですが、『戦争論』に、戦争において大事なことは補給路を断つことだ、と書いてあるのです。

 もっといえば、中国には紀元前から孫子の「兵法」があります。なにが書いてあるかというと、二つのことが書いてあります。まず情報をよく集めて、負けそうだったら戦争はやるな、勝てそうだったらやれ、というのが第一。第二は、戦争をやるときはどうするかというと、できる限り補給路を断て、と言っているのです。つまり、米軍に燃料を補給する日本のタンカーを攻撃して沈めてしまえ、ということですね。

 このように、これまでだんだん変わってきたものが、さらに大きな一歩を踏みだそうとしている、今はそういう時期だと思います。このように歴史的な視点から現状を見る必要があるということです。
(加藤周一著「学ぶこと 思うこと」岩波ブックレット p30-35)

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─政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守するとともに、沖縄返還時に適切なる手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである。