学習通信061222
◎知盛がうめきます……
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古代ギリシアの哲学者はみな、生まれながらの、天成の弁証家であり、彼らのなかで各分野にわたる学識の持ち主であったアリストテレスは、すでに弁証法的思考のもっとも本質的な諸形式をも研究していた。──略──
われわれが自然あるいは人間の歴史あるいはわれわれの精神活動を考察すると、まずわれわれの前にあらわれるのは、連関と相互作用が無限にからみ合った姿であり、この無限のからみ合いのなかでは、どんなものも、もとのままのもの、もとのままのところ、もとのままの状態にとどまっているものはなく、すべてのものは運動し、変化し、生成し、消滅している。──略──
この原始的な、素朴な、しかし事柄の本質上正しい世界観が、古代ギリシア哲学の世界観であり、最初にヘラクレイトスによってつぎのようにはっきりとのべられている。
すなわち、万物は存在し、また存在しない。
なぜなら、万物は流動しており、不断に変化し、不断に生成し消滅しているからである。
(エンゲルス著「空想から科学へ」新日本出版社 p47-48)
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大磯 小磯
米国よ、驕れるなかれ
マサチューセッツエ科大学の教授だった故C・Pキンドルバーガー氏は、その生涯の最終に「経済大国興亡史一五〇〇−一九九〇」(邦訳岩波書店、二〇〇二年)という大著を出している。その本で彼は、イタリアの諸都市国家、スペイン、英国等の諸国家の盛衰の原因を研究している。
英国は一八七〇年代にヘゲモニー(覇権)の成熟に達し、それから衰えた。繁栄を極めた経済大国がなぜ衰退するのか。それには金融、財政、生産性、戦争等多くの原因があるが、人間の一生に似て、生命力にあふれた成長の時代から老化し、衰退を迎えるためだといっている。
それでは米国はどうか。米国は、産業、金融、技術等の力からみて、衰えることはないという意見もあるが、やはり、米国に代わる経済大国が出現すると予想している。彼は学者らしく、それが日本か、ドイツか、欧州連合(EU)か、あるいは新興国家であるかは分からないという。
私は中国に注目すべきだと思う。ゴールドマン・サックスの推計(二〇〇四年十月)によれば、二〇〇〇年には米国の十分の一ぐらいにすぎなかった中国の国内総生産(GDP)が、二〇五〇年には四十四・一兆ドルとなり、米国の三十七・二兆ドル(購買力平価ベース、二〇〇三年価格)をはるかに上回る。
これは中国が年平均七・七%と高い成長が続くという仮定で推計したもので、高すぎるかもしれない。だが、中国経済は若さに満ちあふれている。農業から工業への転換も進んでいる。社会資本の充実もすばらしい。技術革新も鉄鋼や自動車や半導体などで先進国の技術を取り入れて急速に進んでいる。経済規模でみて米国より大きな国となることは十分に考えられる。
日没することなしといわれた大英帝国が、十九世紀の末に成熟の頂点に達するとは誰が想像したであろうか。米国がヘゲモニーを握ったのは第一次世界大戦の直前でそれが成就したのは、第二次大戦後である。今度は米国が追われる立場となる。
現在は米国が超大国として世界の警察官であり、行政官であるかのように振る舞っているが、米国を上回る経済大国が出現した場合どのような状況が世界に表れるであろうか。世界の覇権国は長く続くとは限らない。米国もこれを考えて驕(おご)り過ぎないように注意すべきではないか。(越渓)
(「日経」20061221)
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潮流
満点の星を映す、くらい舞台。故・山本安英さんの、ひとり詞を読む姿がよみがえります
▼「大空に跨って眼には見えぬ天の子午線が大宇宙の虚空に描く大円を……速度毎時一四度三〇分で月がいま通過するとき月の引力は……地表に最も強く作用する」「そのときその足の裏の踏む地表がもし海面であれば……やがてみなぎりわたって満々とひろがりひろがる満ち潮の海面に、あなたはすっくと立っている」
▼「平家物語」に想をえた、木下順二作「子午線の祀り」の幕切れです。みたのは、二十数年前。劇中、壇ノ浦合戦で平家の大将、知盛がうめきます。「ややっ、潮が変わった!」。満ち始めた潮が、平家に不利な方へ流れだす瞬間です
▼人間を超越する宇宙の法則。武土の支配ヘと移る歴史の必然。巨大な二つの力の結び目に巻き込まれながら、なおも抵抗を試み、海のもくずと消える人々。壮大としかいいようのない劇空間、美しい日本語の世界が広がっていました
▼木下さんの訃報が伝えられました。九十二歳。「夕鶴」から、戦争責任の問い方を考える「神と人とのあいだ」まで。人々にのこした遺産も巨大です。「平和」や「憲法」について、日本の良心を代表する発言、行動を続けました
▼「子午線の祀り」を書くとき、「平家物語」の知盛最期の言葉が頭にあった、といいます。「見るべきほどのことは見つ」。知盛はいったい、なにをみたのか、と。木下さんも、物事の真実の姿や、奥底にあるものを、探り続けたのでしょう。
(「赤旗」20061201)
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◎「万物は流動しており、不断に変化し、不断に生成し消滅しているからである」と。