学習通信061227
◎富者の負担を急増するもの……

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はなやかに装う師走の夜の街を歩いていて、北九州でことし五月にミイラ化した姿で発見された男性はどんなに孤独だったろうかと、ふと思いました。男性は、生活保護を受けようとして門前払いされ、餓死したのでした

▼別の日本もあります。合わせて三兆円の利益をあげながら、政府の計らいで法人税を払わなくてすんでいる大手銀行六行。法人税は納めないが、公的資金をもらったからと自粛してきた政治献金はだす、といいます

▼百年ほど前、ときのイギリス蔵相ロイドジョージは、貧しい人々を救済するための財源づくりに、富む人ほど税金をより多く納めるしくみを取り入れました。所得税の「累進課税」です。いまの日本では、逆の発想がめだちます

▼来年度の予算案もそうです。「大」がつく企業や資産家に税金をまけつづけ、庶民の税金は重く。生活保護費も失業対策費も減らす。安倍首相は「助け合いの精神」(所信表明)を説きますが、もっともその精神が求められるのは、財力をもつ者のはずなのに

▼最近アメリカを訪れてきた人に、こんな話をききました。アメリカ先住民のある部族は、、目の前の問題の解決を試みるとき、七代あとの子孫にとっていいか悪いかを考え、どんな方針を選ぶか判断する……

▼せめて二代、三代先を見通しているべきでしょう。庶民の力をそぐ政治がなにをもたらすか、先の人口推計からも察しがつきます。五十年後、日本の人口はいまより三千八百万人減って九千万人を割り込む、といいます。
(「赤旗」20061225)

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ロイド=ジョージの「人民予算」と貴族院改革

 一九〇八年キャメル=バナマン首相が病気のため辞職した後、アスキス蔵相が自由党内閣の首相となり、ロイド=ジョージが蔵相となった。この内閣も引続き前述のように社会立法に力を注いだが、ロイド=ジョージ蔵相が一九〇九年に提出した画期的予算案のため貴族院と大衝突を引き起した。

大部分世襲貴族より成る貴族院は保守勢力の牙城で、自由党内閣が重要な改革立法を行なおうとすると、貴族院の抵抗を招いたことがこれまでにも度々あった。

一九〇九年の予算案は、ドイツとの建艦競争のための費用と前年定められた養老年金制度の費用を出すため、富者の負担を急増するものであった。

高額所得に対する所得税の税率を増し、年五〇〇〇ポンド以上の収入に付加税を課すること、相続税の増額、酒、タバコおよび自動車に課税すること、などが含まれていたが、中でも地主階級を驚かせたのは、地価の不労増加分にたいする二〇パーセントの課税であった。

これは前述のヘンリ=ジョージの思想を想起させるものであった。保守党員の中には、これは予算ではなく革命である、と極言する者さえいた。

この予算案は議会の内外で激烈な論争をまき起こし、庶民院通過後貴族院で否決された。貴族院の予算案否決は、一六七〇年代以来認められた財政法案に関する庶民院の優越権を否認するものであった。

庶民院はこの貴族院の行動は違憲であるという決議を行ない、政府は庶民院を解散して民意に問うこととした。一九一〇年一月の総選挙の結果、政府与党(自由党二七五、労働党四〇、アイルランド国民党八二)の勝利となり(保守党は二七三)、貴族院はやむを得ず予算案を可決し、かくて有名な「人民予算」が成立した。
(大野真弓編「イギリス史」山川出版社 p260-261)

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◎「安倍首相は「助け合いの精神」(所信表明)を説きますが、もっともその精神が求められるのは、財力をもつ者のはずなのに」と。