学習通信070302
◎ぼくは、もうたばこをやめる……

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しつけとは?──基本的生活習慣を身につけること

 育児やしつけの本は、たくさん出ています。それほど、タネはつきないのです。
 ひとりっ子で内気。指しゃぶりからおねしょ。左きき。泣き虫がら粗暴。落ちつきがない。根気がない。男みたいな女の子。おけいこごとからおこずかい。老人との関係やら、幼稚園、保育園のこと。学校へいけば、成績のこと、塾のこと。テレビ、マンガ、性。ある日、ある所での出来事まで。

 何冊出しても、何冊読んでも、つきるところはありますまい。おそらく、部厚いしつけ辞典を何十冊そろえようとも。
 この本では、つぎのように考えています。

 世界に三十数億の人口はあっても、この子とおなじ遺伝子をもち、おなじ環境に育ち、おなじ発達段階に達している子は、ただの一人もありません。

 だから、いまこの子が、こういう状況のもとで、こんなことをしたとき、それをほめるべきか、しかるべきか、どう対処すべきかは、あなた自身が考えて、あなた自身の責任においてするほかないのです。このことをしっかり自立しておくことは、百千のしつけの技術を知っているより、もっと重要です。

 そこであなたは、自分で適切なやり方をとることができるようになる、そのもとになるものは何であるかを知りたいと思われるでしょう。

 だいたい日本語で『つけ』というのは、『ならわしにしている』という意味をもっています。
 『かかりつけのお医者さん』『いきつけのとこやさん』『つけにする』『しつけ糸」など。

 子どもにいって聞かせて、一つの知識をもたせることは教育の一部です。しかし、しつけの本命ではありません。しつけの本命は、おとな(親や教師)の言動がくりかえされて、子どもの意識の底深くにうつし植えられていくことにあります。

 そこでしつけでいちばん大切なことは、おとな自身の人生観や生活態度です。

 子どもがある行為をしたとき、おとながどんな態度をとったか。地域や学校や保育園で、ちょっとした出来事がおきた。そのとき、親や教師は何をどうしたか。新間やテレビで一つの事件が報道された。そのとき親は、どんな感情をあらわし、何をつぶやいたか。

 それを反省し、みがいていくことこそ、私たちおとなの『しつけ教室』の課題なのです。
(近藤・好永・橋本・天野「子どものしつけ百話」新日本出版社新書 p14-15)

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ダイエットってなんだろう

 あなたは「ダイエット」という言葉の意味を知っていますか。
 英和辞典で、dietを引くと、もともとはギリシャ・ラテン語で「一日の食物」をさし、「食事」そのもの、という意味が出てきます。本来は、「適正な体重を維持するための食事」と理解するべき言葉です。転じて、「栄養価を考えた食事」「治療食」「美容食」などを意味するようになってきたのです。

 ほっそりとした体つきにあこがれて、食事の量をひたすら減らし、やせることに懸命になっている人はいませんか。今でこそ「ダイエット」は「やせるための食事」というイメージで使われていますが、やせさえすれば美しくかっこよいのではありません。きちんと食事をして、健康ではつらつとしていることが、美しさの基本なのです。「ダイエット」とは、正しく食事をして健康なからだをつくることです。

あなたの健康は大丈夫?

 日本人の平均寿命は、女性(八五・五九歳)は世界一位、男性(七八・六四歳)は世界二位です。男女とも五年連続で伸び続けていることが、厚生労働省「二〇〇四年簡易生命表」に発表されました。二〇〇四年に生まれた赤ちゃんのうち、女性の七六・八%、男性の五五・二%が八〇歳まで生きられる見通しです。

 しかし同時に、がん、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病が、大きな健康問題になっています。これらの病気は、決して大人だけの問題ではないのです。年々、生活習慣病にかかる若い人たちが増えています。そしてそれらの引きがねになっているのが、食生活の変化と肥満です。

 また、肥満の割合が増えている一方で、若い女性の低体重も問題になっています。あとで詳しくお話ししますが、自分の体型・体重について、「太っている」と思い込んでいる人が増えているのです。肥満と同様、低体重のこわさについても、ぜひ知っておきましょう。

 ただ長寿であればいいのではありません。みなさんの年齢から、健康で長生きする「健康寿命」について考えることが大切です。そして、そのためには、なによりも食生活の改善が必要なのです。

おいしく食べることの意味

 みなさんの食卓風景はどのようでしょうか。文部科学省が小・中学生、高校生を対象に行った「心の健康と生活習慣に関する調査研究」(二OO二年)の結果によると、「朝食を一人で食べる」「夕食を一人で食べる」という人には、心の健康な人が少ないことがわかりました。

 「朝食を食べなかった」「朝食を一人で食べた」「家族との会話がなかった」「寝る時間が決まっていない」人では、「イライラする」「自分に自信がもてない」「楽しくない」など、心の健康度が低いことが指摘されています。食事をきちんととることや家庭環境、夜更かしなどの生活習慣が健康を左右していると考えられます。

 食事は空腹を満たし栄養補給や成長をうながすだけでなく、生活の楽しみとしてかけがえのないものです。家族で囲む和やかな食卓風景から感じるものは、活力や生きる喜びといった前向きな姿勢でしょう。また、家族の絆が強まり、感謝の心や思いやりの心、マナーの心得が芽生えていくことでしょう。

 食べる人のことを考えてこしらえた食事は、料理の組み合わせや味の調和がとれていて、色や香り、味、季節感にいたるまで作った人のおもいやりや心配りが伝わってくるものです。その一ロが、精神的な満足感を高めて気持ちをおだやかにすることを考えると、「たかが一食、されど一食」、毎日の一食一食を大切に食べようということになります。

 人間はおいしいものを食べると、脳の前頭葉が満足します。減量するにしても、まずいと感じるものばかりを食べてのダイエットでは、結局は長続きしないのでリバウンドしてしまいます。偏った食品でダイエットをするより、バランスよく食べて全体の量をコントロールすると、自然にきれいなからだになってきます。

「食」についてほんとうに知っていますか

 核家族化や家族問の生活時間のズレなどから生じる健康問題を防ぐためには、食べものに関する基礎を学び、簡単な買い物や調理、メニュー選択ができ、正しい食事マナーを身につけることが大切です。生活の忙しさの中で、手作りの家庭の味のよさが次第に薄れています。
 一方で加工食品や外食の内容について十分な知識が必要になっています。
 みなさん自身が、食べものの「選び方」「つくり方」「食べ方」を身につけ、食事の喜びや楽しさを知って、食事が待ちどおしいと思える体験をすることが何よりも大切です。買い物から調理、配膳、食事、後片づけまでの日々の食卓づくりに参加することで、「食」への関心が高まり、家族のコミュニヶーションにもつながります。

 中学生から高校生にかけての思春期は、自分たちの生活リズムに合わせて、自分たちだけで食事をする機会が多くなります。特に受験期になると、一層食事のリズムが不規則になりがちです。女性はダイエット志向が強くなり、やせたいと思うようになったりします。しかし、からだが子どもから大人に変わるこの大切な時期は、十分な栄養をとって大人になる準備が必要です。特に女性に多い貧血は、造血に必要な鉄分が不足するところから起こります。太ることを気にして朝食をとらなかったり、減量のためにご飯や油を抜き、サラダ中心の食事をしていては、低栄養となってしまいます。自分勝手な考えや宣伝に惑わされてダイエットをするのはやめましょう。

 また、肥満傾向にある若い人も増えています。肥満から生活習慣病につながっていくことがあるので、食事のとり方や体重などの健康状態をチェックし、問題点を見出して改善する
ことが大切です。

自分の「食」は自分でコントロールしよう

 この本では、自分のからだをしっかりチェックして、きちんと食べることによって、健康でかっこいいからだをつくる「ダイエット」を学んでいきます。

 からだと「食」についてのさまざまなデータを見ながら、何が問題で、どうすれぱいいのかを考えていきますが、実際にすぐに作れるレシピもたくさん紹介しています。

 すべての基本は「食」。栄養についての基礎知識をもち、簡単で役に立つ料理の〈わざ〉を身につけて、自分の「食」をあらためて考えましょう。そうすると実際に料理を作りながらからだをコントロールする楽しさがきっとわかることでしょう。
(渡辺満利子著「ジュニアダイエット」岩波ジュニア新書 p2-8)

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 アンナの家に若い者たちが大勢集まったある晩のこと、電気工は、ずい分前からの体によくない一つの習慣を思い切ってすてることにした。かれはほとんど子供のときがらたばこを吸ってきたが、このとききっぱりと言った。

──ぼくは、もうたばこをやめる。

 ことの起こりは、思いがけないことにあった。だれかが、喫煙を例にしてもいいように、習慣の力というものは、人間より強いということで争論をはじめた。意見が分かれた。電気工は議論にくわわらなかったが、ターリャがかれを話に引っ張りこんだ。かれは思ったことを言った。

──人間が習慣を支配するのであって、その逆じゃないんだ。そうでなければ、ぼくらは話し合ったって、はじまらないじゃないか?
 ツベターエフが隅から叫んだ。

──なかなか派手なことをおっしゃるね。コルチャーギンは、そういう方が好きなんだ。ところで、気取ってそういう言い方をして、いったいどういうことになるんだね。そういう御自分がたばこを吸っていないかしら?
 吸ってるだろう。喫煙がなんの役にも立たないことを知ってるのかね?
 それもちゃんと知ってる。ところが意志が弱くてやめられない。最近、かれはいろんなサークルで《文化の普及》に従事しているんだよ。──そこで調子を変えながら、ツベターエフは冷笑をこめてたずねた。──かれに答えてもらいたいんだが、かれの下品なことば使いはいったいどうなんだ? パフカを知りてる者は言ってるよ、乱暴なことばは少なくなったが、言うときは手きびしいってね。聖人になるよりは、説教する方がやさしいんだな。

 沈黙がおそった。ツベターエフの毒々しい調子のために、みんなは不愉快になってしまった。電気工はすぐには返事をしなかった。ゆっくりと口から巻たばこを取り、ひねりつぶしてから低い声で言った。

──ぼくはもうたばこをやめるよ。
 しばらく黙っていてから、つけくわえた。
──これは自分のためであると同時に、幾分かはジムカのためでもあるんだ。悪い習慣をやめられないような者は、一文の価値もないよ。ぼくにはまだ乱暴なことは使いが残っている。ぼくはまだこの不名誉なことときっぱり手を切ってはいないが、ぼくの悪態が少なくなったことは、ジムカでさえ認めるだろう。たばこをやめるよりも口をすべらすのをやめる方がむずかしい。だからこれもやめるとは今は言わないが、いずれやめてみせるよ。
(エヌ・ア・オストロフキー著「鋼鉄はいかに鍛えられてか 下」新日本出版社 p127-128)

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◎「このことをしっかり自立しておくことは、百千のしつけの技術を知っているより、もっと重要」と。