学習通信070704
◎安倍カラー=c…

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慰安婦、沖縄、核武装……歯止めなく
 背景に「戦後体制脱却」
 発言、政権の雰囲気反映か

 原爆投下を「しょうがない」と発言し、三日辞任に追い込まれた久間章生防衛相。発言の背景には「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱え、核武装論ですらタブーではなくなった安倍政権の零囲気が色濃く漂う。安倍晋三首相の発言が問題視された従軍慰安婦問題、沖縄戦の集団自決の強制記述に修正を求めた教科書検定。「根底には共通の空気が流れている」と専門家は指摘する。

 政権発足直後の昨年十月、北朝鮮の核実験をきっかけに、自民党の中川昭一政調会長はテレビ番組で「核があることで、攻められる可能性が低くなる」などと述べ、日本の核保有をめぐる議論の必要性を訴えた。麻生太郎外相も「議論まで封殺するのはいかがか」と発言。党内からは非核三原則見直し論も飛び出した。

 「久間発言は核武装論や従軍慰安婦、集団自決などの問題と同様に『戦後レジームからの脱却』を象徴する発言だ」。大東文化大の井口秀作教授(憲法)は、こう分析する。

 従軍慰安婦問題について安倍首相は「狭義の強制性」はなかったと発言し、米下院では日本政府に謝罪を求める決議が可決された。

 教科書検定では、沖縄戦で日本軍が住民に集団自決を強制したとの記述が修正を求められ、沖縄県ではすべての市町村議会と県議会で、検定意見の撤回を求める意見書が可決された。

 井口教授は「自民党議員はこれまで、国民やアジアの国々の反発を意識して発言を抑制してきた。口に出せるようになったことが、まさに『戦後レジームからの脱却』だ」と指摘する。

 「久間発言は、国民の核への感情が薄れてきた表れではないのか」と危惧(きぐ)するのは広島市立大広島平和研究所の浅井基文所長。

 「国民は、非核三原則と核の傘の両方をいつの間にか受け入れている。国民保護計画も核攻撃を前提にしており、このままでは戦争をする国に進んでしまう」

 浅井所長は「単なる大臣の失言問題として矯小(わいしょう)化する話ではない」と指摘している。
(「京都」20070704)

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 安倍首相が憲法改悪を合理化する論拠の一つ「戦後レジーム(体制)の見直し」があります。一月二六日、施政方針演説でこうのべました。

 「今こそ、これらの戦後レジームを、原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出をすべきときが来ています。『美しい国、日本」の実現に向けて、次の五〇年、一〇〇年の時代の荒波に耐えうる新たな国家像を描いていくことこそが私の使命であります」

 志位委員長も、私も、代表質問でこの点をただし、「時代に合わなくなったのは憲法ではなく、自民党政治こそが時代に合わなくなったのではないか」と批判しました。日本の「戦後レジ一ムの見直し」とは戦後の平和と民主主義の否定につながるではないか、という懸念からの批判、あるいは侵略戦争と植民地支配を美化する「靖国史観」の立場で改憲をすすめようとしているのではないかという批判が、国の内外からおこっていることも新しい特徴です。ジェラルド・カーティス米コロンビア大学教授は次のように批判しています。

 「安倍首相が戦後日本をどう考えているかということだ。首相は『戦後レジームの脱却』を掲げているが、民主主義国家のリーダーが自分の国のレジーム・チェンジ(体制変革)を求める意味は理解しにくい。レジームを脱却するとは、一体どういう意味なのか、その説明も必要である。米国人は日本が敗戦の灰の中から立ち上がり、世界第二の経済を待つ、民主主義と平和の国になったことを称賛している。日本人が当然戦後レジーム″に大きな誇りと満足を感じているはずだと思っている。初の戦後生まれの日本の首相が、この成功をもたらした戦後の体制を否定しているかのような発言を行っていると聞くと、米国人の驚きと困惑は大きい。安倍首相が捨てたがっている戦後レジームの何がそんなにひどいのか、ぜひ説明してほしい」「安倍首相が早く、過去からの脱却をするよう期待したい」(「東京」四月八日付)

 痛烈な批判です。戦後、国際社会は、日本、ドイツ、イタリアがおこした侵略戦争の反省の上に、国際的な紛争を武力ではなく、外交的、平和的な話し合いで解決するという国連憲章をもとに国連を結成し出発しました。ところが、日本では、侵略戦争を誤りと認めずに、むしろ正しかったと公言してはばからないタカ派的改憲勢力がいまの内閣を握り、尊い犠牲のうえにうちたてられた戦後の国際社会の出発点を根本から否定する、日本国憲法の精神に根本から相対立する立場にたっているのです。これでは国際社会から相手にされず、国際的に孤立を深めざるをえません。
(市田忠義「新局面を迎える憲法闘争 さらに広く強く」前衛6月号 2007年 p20)

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「慰安婦」
日本軍の組織的強制中国弁護士協会が調査結果

【北京=山田俊英】中国の中華全国弁護士協会と中国法律援助基金会は三日、第二次大戦中の旧日本軍による「従軍慰安婦」に関する調査結果を公表しました。昨年九月から半年にわたって現地調査し、「『慰安婦』強制は日本軍の組織的行動であることが証明された」と結論づけました。

 これまで賠償請求を起こした元「慰安婦」以外に、山西省で十六人、海南省で一人、計十七人の被害者が生存していることが明らかになりました。被害当時の年齢は十二歳から二十一歳でした。

 報告書は、山西省の一市四県、海南省の二県、雲南省の三市三県に「慰安所」が設けられていたとしています。山西省太原市では市内の二つの会館に設置。雲南省では民間住宅を奪って「慰安所」にしたといいます。

 日本の敗戦後、中国の国民党軍に編入された残留日本軍部隊が山西省太原市に設置した「慰安所」は、一九四七年まで存在していました。

 また、八ヵ所の公文書館を調べた結果、「慰安婦」を強制された三百三十八人の名前が記載された資料が見つかりました。この人たちは四四年四月から四五年八月にかけて日本軍の軍医による身体検査後、河南省、山東省、天津などの日本軍部隊に送られ「慰安婦」にされました。

 報告は、第一一七師団長だった鈴木啓久中将ら捕虜となった日本軍将兵が「慰安所」設置に関与したことを供述した調書も掲載しています。

 報告書は、弁護士協会のホームページ「中国律師網」で公表されています。調査は、今回明らかにされた以外の地方でも継続中です。
(「赤旗」20070704)

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テレビ・ラジオ
レーダー
従軍慰安婦問題と報道の責任

 「アメリカ議会の決議なのでコメントするつもりはない」。この安倍晋三首相のコメントそのものが衝撃の大きさを示しています。従軍慰安婦問題で、アメリカ下院外交委員会が、日本に公式な謝罪を求めた決議を39対2で可決したというニュースが、6月27日の日本を駆け巡りました。

 NHKテレビも昼のニュースはトップ、夜の「ニュースウオッチ9」でも大きく扱いました。米議会での採決の模様を映します。塩崎恭久官房長官など政府与党の発言を伝えます。「拉致問題には熱心でも、従軍慰安婦への戦争犯罪には目をつむっている」というワシントン・ポスト紙の論調も紹介。大越健介NHKワシントン支局長は、決議の背景に中間選挙で民主党が勝利し、議会の主導権を握ったことがある、と解説しました。

 しかし、これだけでいいのかという思いが残りました。それは従軍慰安婦とは何か、従軍慰安婦問題とは何かへの言及がなかったからです。この問題での後追い企画は民放も含め、ありません。大きな人道的・政治的問題でありながら、この数年、テレビは取り上げていません。

 90年代後半、NHKは従軍慰安婦問題で優れた番組を制作しました。そして2001年、問題の本質を突いた番組を企画しました。「ETV2001〜問われる戦時性暴力」です。しかし、現首相の安倍氏らの意見を、NHK幹部が「忖度(そんたく)」し、放送されたときは、元従軍慰安婦の証言や、日本の加害にかかわることはほとんどカツトされた無残な番組になっていました。それ以降、従軍慰安婦はテレビから見事に消えたのです。

 米下院決議は、この問題を脇において日本外交が前に進むことは許されないことを示しました。血を吐くような思いで従軍慰安婦体験を証言した女性たちにも、もう時間は残っていません。今、慰安婦問題の本質を追究することは日本のメディアの責任であるはずです。(荻)
(「赤旗」20070704)

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これも自民安倍流
公約から消えた「男女共同参画」

 自民党の参議院選挙公約から、前回の二〇〇五年総選挙時の政権公約で掲げていた「男女共同参画社会を実現」が消えました。

 参院選公約で、女性にかかわる施策として列挙されているのは十項目。そのすべてが「子育て家庭支援対策の拡充」「子育てを地域社会で支える体制づくり」など、子育てに関するものです。

 「女性の意欲・能力を活かせる環境づくり」とうたった項目も、中身を見れば「出産・育児期を通じたキャリアの継続支援」「マザーズハローワーク」「母子家庭対策」といった具合。安倍・自民党には、「女性=子どもを産む」という図式が染み付いているようです。

 女性の要求は、子育て支援のみに解消できるものではありません。日本は、女性の人権と地位向上で、諸外国に大きな後れを取っています。政府が先月十九日に発表した〇七年版『男女共同参画白書』でも、「日本の女性の社会参画は、国際的に見ても全般的に低い水準にある」と認めています。社会のあらゆる分野で「両性の平等」を実現することが切実に求められています。

 この時期に、政権党が男女平等の推進をうたわないことは、そもそも不見識です。加えて、前回選挙で掲げていたものをあえて引っ込めたところに、危険な意図を感じざるをえません。

 自民党の参院選公約は、改憲を重点課題にすえるなど安倍カラー≠前面に出したといわれています。「男女平等」が、戦前の日本を美しかったとする「靖国」派の攻撃の的となっている今、これを公約から外したのも、やはり安倍カラー≠フ表れなのか──。首相にぜひきいてみたいものです。(坂井希)
(「赤旗」20070704)

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◎日本の「戦後レジ一ムの見直し」とは戦後の平和と民主主義の否定に……あるいは侵略戦争と植民地支配を美化する「靖国史観」の立場で改憲をすすめようとしているのではないか」と。