学習通信070705
◎原爆投下を正当化……

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原爆が何百万人の命救った

米特使あらためて見解
日本政府、真意確認へ

 米国のロバート・ジョゼフ核不拡散間題担当特使(前国務次官)は三日のワシントンでの記者会見で、第二次大戦末期の広島と長崎への原爆投下について「文字通り何百万もの日本人の命がさらに犠牲になるかもしれなかった戦争を終わらせたということに、ほとんどの歴史家は同意すると思う」と、原爆投下を正当化する米国側の認識をあらためて示した。

 これに対し塩崎恭久官房長官は四日の会見で、政府として真意を確認する意向を示し、首相官邸を訪れた広島市の秋葉忠利市長は記者団に「歴史学者の定説と大きく違っている。米政府首脳も広島、長崎(の悲惨さ)を深く理解すべきだ。ブッシュ大統領に広島に来てもらうことが重要だ」と不快感を示した。

【米国の原爆観】
 米歴代政権は広島と長崎への原爆投下を正当化している。大統領自身が明言するのはまれだが、クリントン前大統領は在任中の1995年4月、原爆投下を命じたトルーマン元大統領が正しい決定をしたと思うかと問われ「当時の事情を考えればイエスだ」と答え、謝罪の必要はないとの見解を表明した。

また、原爆が太平洋戦争の終結を早めたとの見方も根強い。原爆を投下した米軍のB29爆撃機「エノラ・ゲイ」の元搭乗員は先月、被爆者と対談した際「原爆が(戦争終結を早め)多くの人命を救ったとの信念は変わらない」と語っている。(共同)
(「京都」20070705)

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核武装容認の小池氏就任
安倍首相の考えが問われる重大人事
市田書記局長が批判

 日本共産党の市田忠義書記局長は四日、小池百合子防衛相の就任について国会内で記者団に問われ、「小池氏は、安倍晋三首相の安全保障問題担当補佐官として、『米軍再編』や沖縄への新基地押し付けの先頭に立ってきた危険な考えの持ち主だ」と指摘しました。

 この中で市田氏は、小池氏が、新聞アンケートで核武装について、「国際情勢によっては検討すべきだ」と答えていたことを指摘。また、改憲右翼団体「日本会議国会議員懇談会」の副幹事長を務めたこともあげ、「原爆投下を『しょうがない』といってやめた久間大臣の後に、事もあろうに、こういう人物をまた据えることは、安倍首相自身の考えがきびしく批判され、問われる重大な人事だ」と批判しました。

米高官発言許しがたい
 また、市田氏は、米高官が、原爆投下のおかげで第二次世界大戦の終結が早まり、数百万人の命が救われたとの発言をしたことに関し、「悪魔の兵器を肯定する異常な発言であり、許しがたい。歴史的事実としても誤っている」と批判しました。

 市田氏は、米占領軍最高責任者のマッカーサー元帥が、もし原爆投下について相談を受けていたら、日本はすでに降伏の準備をしており、投下は不必要だとの見解を表明しただろうとの趣旨の発言を戦後にしていることも指摘し、「今回の米高官の発言は、米国の一部の権力者が原爆投下を合法化するためにつくりだした『神話』ともいうべき異常な発言だ。海の向こうから久間章生前防衛相の原爆発言を擁護し、安倍首相が後任に小池氏を据えたことにエールを送る発言だ」と批判しました。
(「赤旗」20070705)

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社説
防衛相辞任
冷静さを欠いた「原爆投下」論議

 久間防衛相が、米国の原爆投下をめぐる発言による混乱の責任をとって辞任した。先の講演で、「あれで戦争が終わった、という頭の整理で今しょうがないなと思っている」などと述べていた。「しょうがない」とは、全く軽率な表現である。

 参院選を目前にして、野党側は、その表現のみをとらえ、安倍政権批判の格好の材料として罷免を求めた。与党も、選挙への悪影響を懸念して浮足立った。混乱したあげくの辞任劇である。

 久間氏は、日本政府のイラク戦争支持は「公式に言ったわけではない」と語るなど失言を重ねていた。このような言動を繰り返しては辞任もやむをえまい。

 久間氏は講演で、米国は、「日本も降参するだろうし、ソ連の参戦を止めることができる」として原爆を投下したとの見方を示した。これは、誤りではない。当時、ソ連に対して不信感を募らせていた米国は、ソ連の参戦前に早期に戦争を終わらせたいと考えていた。

 同時に、久間氏は、「勝ちいくさとわかっている時に、原爆まで使う必要があったのかという思いが今でもしている」と付言していた。

 米政権内部でも、敗色濃い日本への原爆投下については、アイゼンハワー元帥(のちの米大統領)が反対するなど慎重論は強かった。久間氏は、米国が非人道的兵器の原爆を使用したことに疑義も呈していたのである。

 そもそも、原爆投下という悲劇を招いた大きな要因は、日本の政治指導者らの終戦工作の失敗にある。仮想敵ソ連に和平仲介を頼む愚策をとって、対ソ交渉に時間を空費し、原爆投下とソ連参戦を招いてしまったのである。

 しかし、野党側は、「米国の主張を代弁するものだ」「『しょうがない』ではすまない」などと感情的な言葉で久間氏の発言を非難するばかりで、冷静に事実に即した議論をしようとしなかった。

 疑問なのは、民主党の小沢代表が、安倍首相との先の党首討論で、原爆を投下したことについて、米国に謝罪を要求するよう迫ったことだ。

 首相は、核武装化を進め、日本の安全を脅かす北朝鮮に「核兵器を使わせないために、米国の核抑止力を必要としている現実もある」として反論した。

 当然のことだ。日本の厳しい安全保障環境を無視した小沢代表の不見識な主張は、政権担当能力を疑わせるだけだ。

 久間氏の後任には、首相補佐官の小池百合子氏が就任する。国防をはじめ、国の責任を全うするためにも、安倍政権はタガを締め直さねばならない。
(「読売」20070704)

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久間 前防衛相発言
「読売」社説は原爆神話と
核抑止論の虚構に立つのか

 広島、長崎への原爆投下を「しようがない」と講演で発言した久間章生防衛相(当時)にたいし、多くのマスメディアはその見識のなさをきびしく批判するとともに、辞任にたいしても各新聞は、「原爆投下から目をそらすな」(「朝日」四日付)などの社説をかかげました。その多くが発言は重大であり辞任は当然とするとともに、辞任にあたっての久間氏の発言についても、「心からの反省が伝わらない」(「毎日」)などときびしく批判しています。

 そうした中で異常だったのは「読売」社説で、「冷静さを欠いた『原爆投下』論議」と、久間氏の発言を問題にすること自体が間違っているという非難です。その中身は、原爆投下を事実に即して議論すべきだとか、米国の核抑止力を認めるべきだということで、要は原爆投下や核兵器を保有し続ける効用を認めよということにつきます。まさに原爆投下を「しようがない」といった久間氏の立場と、五十歩百歩といわなければなりません。

 広島、長崎への原爆投下が戦争の終結を早めたなどという「原爆神話」は、戦後アメリカが原爆投下を正当化するために持ち出してきたものです。今ではその誤りが明らかなだけでなく、どんな理由を持ち出しても非人道的な兵器である原爆の投下は正当化できないというのが国際社会の常識です。「読売」社説が久間氏の発言については一言も批判しないで、久間氏の発言を問題にした側に矛先を向けているのは、国内で最大の発行部数を持つと豪語する被爆国の巨大メディアとして不見識のそしりは免れません。

 核兵器の保有が北朝鮮などに対抗するために必要だという「核抑止力論」の誤りも明白です。アメリカなど核兵器保有国が核兵器の開発と保有を競い合い、あれこれの口実を設けて核兵器の廃絶に背を向けているために、核兵器が世界に拡散し、世界の平和を脅かしているのです。核兵器の保有を続けることが戦争を抑止するなどというのはまったくの虚構であり、「核抑止力論」などというのは核兵器の廃絶をさぼり続けるための口実にすぎません。この点でも「読売」の不見識は明らかです。(宮坂一男)
(「赤旗」20070705)

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◎「悪魔の兵器を肯定する異常な発言であり、許しがたい。歴史的事実としても誤っている」と。