学習通信070712
◎みずからの汗と努力で築いてきたつましいくらしさえ……

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大漁

朝焼小焼だ
たいりよう
大漁だ
おおばいわし
大羽鰯の
大漁だ。

浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは何万の
鰯のとむらいするだろう。
(「金子みすゞ童謡集」はるき文庫 p12)

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百人のお腹の中には


テーブルの上に百枚の皿
その前に百人の人
皿の上には百匹の比目魚(ひらめ)、

食器のふれ合うかすかな音の中で
魚はわずかに骨と、頭と、しっぽを残される
(乙姫様がごらんになったら、何ということか!)

百人の紳土淑女
白いナプキンで唇を拭きとって、しとやかに話すこと「まあ、この頃の世相は何ということでしょう」

百人のお腹の中には
百匹の魚の屍。
(「石垣りん詩集」ハルキ文庫 p17)

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主張

経済成長
不安と貧困の「果実」では

 安倍首相は衆院予算委員会で、「景気を拡大することで、『果実』を家計にも広げる」と「成長」戦略を力説しています。

 「成長しなければ果実は生まれない」と首相は言います。もっともらしく聞こえますが、政府の判断によると、景気拡大はすでに戦後最長を更新しています。

 それにもかかわらず、いまだに庶民の家計には「果実」が実っていません。

いぜんとして弱い家計
 昨年十―十二月期の国内総生産(GDP)は、前期と比べて実質で1・2%増加しました。四半期で見ると八期連続のプラスです。

 十―十二月期の家計消費は1・1%増と、高めの数字になりました。しかし、これは七―九月期の減少分(マイナス1・1%)を穴埋めしたにすぎない水準です。

 大田弘子経済財政相でさえ、「消費は横ばいで、いぜんとして弱さが見られる」とのべています。

 まさに「いぜんとして」です。

 大田氏の二代前の経財相をしていた竹中平蔵氏も、企業収益、設備投資の改善が「消費にしっかり結びついていくか見極めたい」と語っていました(二〇〇三年九月)。

 それから三年以上たち、企業が生み出した価値がどれだけ働く人に回ったかを示す労働分配率は下がり続けました。三井住友系の日本総研によると日本の労働分配率は米国を下回る水準まで落ち込んでいます。一人当たり賃金は〇三年度から連続で減少しました(法人企業統計)。「戦後初の所得増につながらない景気回復」(三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミスト)です。

 一方で、大企業は過去最高益を更新し続けています。日本経団連の幹部企業のトヨタ自動車は、〇六年度の売り上げが二十三兆円、営業利益は二兆円を超える見通しを明らかにしています。資本金十億円以上の大企業の一人当たりの役員報酬は、〇一年度の千四百万円から〇五年度には二千八百万円に倍加しました。同じ時期に株式配当は約三倍に膨らんでいます。

 労働者の賃金を抑えて大企業が収益を増やし、増えた利益を役員と株主が分け取りする構造です。

 日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン会長)は企業の生産性を引き上げることが最優先だと主張し、安倍内閣も同調しています。

 まったく身勝手な議論です。大企業は正社員を非正規雇用に置き換え、「ワーキングプア」を広げることで人件費を抑えて「生産性」を上げてきました。財界と安倍内閣が導入に執念を燃やすホワイトカラー・エグゼンプションは、成果主義の徹底とあいまって正社員を長時間過密労働に駆り立てる制度です。残業代ゼロで“死ぬほど”働かせて、「生産性」を上げることが狙いです。

 大企業の当面の業績は上がるかもしれませんが、国民にはワーキングプアと過労死の再生産を押し付けるやり方です。

過去最悪の生活不安
 内閣府が一月に発表した「国民生活に関する世論調査」によると、生活不安を抱える人は67・6%で、過去最悪になりました。今回の「景気拡大」の間も傾向的に増え続け、十五年前の46・8%から二割も増加しています。

 「景気拡大」が多くの国民にもたらした「果実」は貧困と不安でしかありません。大企業中心の異常な経済のあり方、逆立ちした税制・財政をただすことが求められています。
(「赤旗」20070217)

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「たしかな野党」として、くらしと平和をまもりぬきます
──2007年参議院選挙にのぞむ日本共産党宣言(12の重点政策)
2007年6月15日 日本共産党中央委員会

(1)
 参議院選挙がまぢかに迫りました。この間、政権は小泉内閣から安倍内閣へと変わりましたが、国民のくらしや福祉、雇用はますます深刻な事態におちいり、平和と民主主義をめぐっておどろくほどの暴走がくりひろげられてきました。

 日本共産党は、安倍・自公政治によるくらしと平和をこわす暴走に正面からたちはだかり、ストップすることを選挙戦で訴えてたたかいます。

 「貧困と格差」が社会のすみずみを覆い、ふつうに働いていてもまともな生活を維持することさえ困難な人びとが増大しています。定率減税の廃止や住民税増税、医療・介護保険制度のあいつぐ改悪、さらには、政府によるでたらめな年金運営によって「消えた年金」が大問題になるなど、多くの国民が将来の生活に不安を感じる状況が生まれています。その一方で、大企業・財界と一部の大金持ちは、バブル経済の時さえ上回る史上空前の利益を前にして、働く国民の苦境を尻目に、「いざなぎ景気をこえる最長の好景気」を謳歌しています。日本経団連はその上なお、「消費税を増税してでも、企業減税のいっそうの実行を」と迫っています。安倍・自公政権にこのまま政治をまかせていたら、これまで私たちが、みずからの汗と努力で築いてきたつましいくらしさえ、根こそぎ失われかねません。

 平和・民主主義をめぐる暴走も目にあまります。安倍首相は、「在任中の憲法改定」をかかげ、この参院選でも改憲を争点にすると公言しています。そのための改憲手続き法は、通常国会ですでに強行されました。自民党などは2010年にも国会で憲法改定の発議をおこなうプログラムをもっています。安倍内閣は、憲法そのものを変える前にも、日本の防衛とは無関係に武力行使ができるよう、政府の憲法解釈を変えようとしています。こうした動きの裏には、地球規模で先制攻撃戦略をおしすすめ、日本も武力行使の道にひきずりこもうとするアメリカの強い要求があります。安倍首相自身、米国との「血の同盟」を主張し、改憲の目的が「アメリカと肩を並べて武力を行使する」ことにあるといっています。

 事態をいっそう危険で深刻なものにしているのは、国民生活を顧みず、改憲につきすすむ勢力の中心に、日本の過去の侵略戦争を「正しい戦争だった」という歴史観に立ち、戦前・戦中の侵略国家・軍国主義日本を「美しい国」だったと考える集団──「靖国」派が居座っていることです。安倍首相が、「従軍慰安婦」問題で「強制性はなかった」などとのべ、靖国神社への公式参拝と実際には同じ意味をもつ「真榊」奉納を実行したのはその典型的な現われでした。

 一方で、この間、自衛隊の情報保全隊が、政府・自衛隊に都合の悪い国民の動向と運動を日常的に監視しているという、基本的人権を否定する憲法違反のおそろしい活動をしていることが明らかになりました。

 侵略戦争をまったく反省しない勢力が、ふたたび海外で戦争できる憲法を手に入れ、国民の監視活動を当然視する軍事組織が、憲法上、あらためて軍隊として公然と認知され、国民の上に君臨する──こんな日本は、「美しい」どころか、日本国民と世界の人びとにとって、「恐ろしい国」──軍国主義日本の復活以外のなにものでもありません。

 安倍政権のこうした国民無視と暴走を一体になってすすめているのが、連立政権の一翼をになっている公明党の存在です。公明党が1999年に自民党と連立政権を組んでから8年が経過しました。この間、国民の新たな負担増総額は13兆円にものぼりました。4人家族では、実に40万円もの負担です。このなかには、公明党が先頭に立っておしすすめ、いま列島をゆるがす大問題になっている定率減税廃止などによる大増税も含まれます。マスメディアが指摘するように、まさに「増税戦犯」です。

 また、教育基本法改悪や改憲手続き法=国民投票法の強行も、公明党自身が“成果”と自賛しているように、公明党の存在を抜きには語ることができないものです。なかでも、防衛庁の省昇格と教育基本法改悪は、公明党がみずからの「実績」として誇示するための「児童手当の拡充」と取引して成立させたものでした。当時のある全国紙は、「余りに筋違いの取引だ」とする社説までかかげる党利党略ぶりでした。

 ところが、公明党は、あたかもみずからが「福祉の党」「平和の党」であるかのように主張し、こうした悪政を「善政」であるかのように描き出して国民に押しつけたのです。自民党の暴走にブレーキをかけるふりをしながら、アクセルを踏む──ここに公明党の反国民的な「存在意義」があります。

 しかも、公明党は、この間、創価学会との「政教一体」の関係をむきだしにしてきました。創価学会は、1970年、言論出版妨害事件をひきおこし、池田大作会長(当時)がみずから「猛省」するとともに、公明党との「政教分離」を公約したはずでした。ところが、この3〜4月にたたかわれたいっせい地方選挙の結果について、創価学会は公明党公認候補が全員当選したことを「創価完勝」と呼ぶだけでなく、いまでは、公明党の議員にたいして「議員になれたのは誰のおかげだ」などと“恫喝”までしています。

 侵略戦争に無反省な「靖国」派と、「政教一体」で悪政をおしすすめる公明党・創価学会は、悪政推進の“最悪のコンビ”といわなければなりません。
(「赤旗」20070616)

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◎「大企業の当面の業績は上がる……、国民にはワーキングプアと過労死の再生産を押し付ける」と。