学習通信070725
◎蔓草は幾すじも蔓を伸ばしているかも知れない……
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《潮流》
「芥川龍之介! 芥川龍之介、お前の根をしっかりとおろせ。お前は風に吹かれている葦だ。空模様は何時変るかも知れない。……これからお前はやり直すのだ」
▼作家・芥川龍之介の遺稿の一つ、「闇中問答」のしめくくりです。みずからをふるいたたせているかのようですが、間もなく彼は自殺しました。八十年前の七月二十四日でした。「何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」のために死ぬ、と書きのこして
▼資本主義をのりこえる新しい社会がくると予感しながらも、古い現実生活から脱け出せなかった龍之介。そんな自分へのあざけりや未来の不確かさへの絶望に、おしつぶされていったのでしょうか
▼いま、彼の作品の読者は世界中にいるそうです。『世界文学としての芥川龍之介』(関口安義著・新日本出版社)によると、四十を超える国で訳されています。英語圏ではアジア作家の代表格とみなされ、中国で全集がでました
▼韓国には、芥川研究で博士号をとった人がすでに十人以上います。「芥川の悩みや闘いを共有することに、世界の人々は価値を見出しはじめた」と関口さん。日本のアジア侵略を題材にした作品への関心も高い、といいます
▼芥川作の格言集『侏儒の言葉』を、折にふれて開きます。いまなら、次の言葉などおもしろい。「危険思想とは常識を実行に移そうとする思想である」。「平和」や「民主主義」が世の常識となるようたたかった日本共産党の先輩たちの仕事を、現在・未来に引き継ぐために。
(「赤旗」20070725)
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朱儒の言葉」の序
「侏儒の言葉」は必ずしもわたしの思想を伝えるものではない。唯わたしの思想の変化を時々窺わせるのに過ぎぬものである。一本の草よりも一すじの蔓草、──しかもその蔓草は幾すじも蔓を伸ばしているかも知れない。
(芥川龍之介「侏儒の言葉・西方の人」新潮文庫 p8)
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◎「資本主義をのりこえる新しい社会がくると予感しながらも、古い現実生活から脱け出せなかった龍之介」と。