学習通信071002
◎子どもに睡眠薬をのまして……

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朝の風
つながり見つける雨宮処凜

 『雨宮処凛の「オールーニートニッポン」』(祥伝社新書)という本が出た。

 タイトルはラジオの長寿番組に似ているが、これは実際にインターネットラジオで行われているもので、雨宮は公開生放送のパーソナリティーをノーギャラで務めており、その番組の内容が本に収められている。

 ここには、ひきこもっていた人や日雇い派遣の労組の委員長、『論座』に載せた「『丸山眞男』をひっぱたきたい、31歳フリーター。希望は、戦争」で話題を集めた赤木智弘など、さまざまな立場や考えをもつ人が登場している。そこで雨宮はプレカリアート(不安定な労働環境におかれている人びと)が生み出されている根源に、グローバリズム、新自由主義があるという認識をもちつつ、参加者と柔軟に話している。相手の主張を受けとめながら、つながるところをみつけようとする話しぶりには感心させられる。

 雨宮は『群像』に「プレカリアートの憂鬱」というエッセーも連載している。今月号には、四つも仕事をかけもちしているシングルマザーが、子どもに睡眠薬をのまして夜の仕事にでかける過酷な状況が書かれているが、そこには「しんぶん赤旗」の記事の引用もある。

 広がる貧困は、多くの人びとの心を痛めている。その心情に寄り添い、打開の道を探ること。それは五中総で提起された「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」に通じると思うのだ。(筑)
(「赤旗」20071002)

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一八六一年の公式医事調査の示すところでは、地方的事情を別とすれば、この高い死亡率はとくに母親の家庭外就業によるものであり、またそれから生じる児童の放任と虐待、なかでも栄養不適、栄養不足、アヘン剤の投与などによるものであり、さらに、母親が自分の子供から不自然に隔離されていること、その結果として故意に飢えさせたり有毒物を与えたりすることが加わる。

「婦人の就業が最少である」農業地域では、「それに反して、死亡率は最低である。」。しかし、一八六一年の調査委員会は、北海沿岸のいくつかの純農業地域において、一歳未満の児童の死亡率がもっとも評判の悪い工場地域の死亡率にほぼ達しているという予期しない結果を明らかにした。そこで、ジューリアン・ハンター博士が、この現象を現地で研究するよう委託された。

彼の報告は、『公衆衛生にかんする第六次報告書』に収められている。これまでは、マラリアその他の低湿地帯特有の病気が、多数の児童の命を奪ったと推測されていた。調査は、まったく反対のことを明らかにした。すなわち、

「マラリアを駆逐したのと同じ原因、すなわち、冬期には湿地であり夏期にはやせた草地であった土地を肥沃な穀物畑に変えたことが、乳児の法外な死亡率をつくり出した」と。

 ハンター博士がその諸地域で聴取した七〇人の開業医は、この点については「おどろくほどに一致して」いた。すなわち、土地耕作の革命とともに産業制度が導入されたのである。

 「少年や少女だちと隊をなして一緒に労働する既婚婦人たちは、『労働隊長』と呼ばれる隊全体を雇う一人の男によって、一定の金額で、借地農場経営者の支配にゆだねられる。これらの隊はしばしば自分たちの村落から何マイルも離れて移動し、朝晩に路上で見かけられるところでは、婦人たちは短いペチコートとそれにつり合った上衣を着て、長靴をはき、またときにはズボンをはいていて、見かけは非常に力強く健康的であるが、常習的な放埓(ほうらつ)によってすさんでおり、この活動的で独立的な生活様式への愛着のため、家で持ちこがれている自分の幼児におよぼす致命的な諸結果にたいしては、無頓着である」。

 ここでは、工場地域のすべての現象が再生産されており、しかも、ひそかな幼児殺しや児童へのアヘン供与は、なおいっそう程度が高い。

 イギリスの枢密院∴纐ア官で「公衆衛生」にかんする報告書の編集主任であるサイモン博士は言う──「私はそれによって生み出される害悪をよく知っているので、私が成年婦人のすべての包括的な産業的就業を深い嫌悪をもって見るのも、やむを得ないことであろう」と。

工場監督官R・ベイカーは、ある公式報告のなかで断言している──「家庭をもつすべての既婚婦人が、どのエ場でも働くことを禁止されたならば、それこそ、実際に、イギリスの工業地域にとって幸福であろう」と。
(マルクス著「資本論」新日本新書 第三分冊 p688-690)

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「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」の提案

 第二に、綱領を語り、国民の利益にかなった「新しい政治」とは何かを国民とともに探求するとりくみを、草の根からおこす「大運動」を提案するものです。

綱領と日本改革の方針が、こんなに情勢とかみあい、共鳴しつつあるときはない

 第二十四回党大会決定では、日本の政治がどんな歴史的時期に直面しているかについて、「歴史への無反省、アメリカいいなり、大企業中心主義――世界でも類例のない異常な特質をもつ自民党政治が、国民との矛盾、世界の流れとの矛盾を深め、どの分野でもいよいよ立ち行かなくなるもとで、いま日本の情勢は、大局的にみれば、国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機をむかえている」とのべました。

 「改革」と偽って国民を苦しめる悪政を押し付けた小泉政治の「うそとごまかし」がはげ落ちて、自公政権が参議院選挙で歴史的大敗を喫するもとで、「日本の情勢は、大局的にみれば、国民中心の新しい日本への条件をはらんだ歴史的転機をむかえている」という大会決定の指摘は、多くの国民の共通の実感、認識となりつつあるのではないでしょうか。

 そして重要なことは、どの問題をとっても、わが党の綱領と日本改革の方針が、こんなに情勢とかみあい、情勢と共鳴しつつあるときはないということです。とりわけ、わが党が自民党政治の「三つの異常」と指摘してきた問題が、どれをとっても破綻(はたん)に直面し、これらの異常を根本から改革する方途を示したわが党の綱領の値打ちが、どの問題でも鮮明になっています。いま私たちが、国民のなかで綱領と日本改革の方針を語れば、「国民が主人公」の日本をめざす国民的合意を大きく前進させる条件が広がっており、この条件をくみつくした積極的なとりくみを大いにすすめようではないかということを、よびかけたいのであります。

自民党政治の「三つの異常」をただす日本改革と、綱領の諸規定について

 綱領を国民に語るとりくみは、党大会決定を指針としつつ、それぞれの同志の入党の初心、党への思いなどをまじえ、相手の関心にもこたえて、自由闊達(かったつ)にすすめることが大切ですが、「三つの異常」をただす日本共産党の日本改革の方針を語るためには、綱領の次の諸点をよくつかむことが重要です。

<過去の侵略戦争を正当化する言論、政策、行動を大本から転換する改革>

 自民党政治の第一の異常――過去の侵略戦争を正当化する言論、政策、行動を、大本から転換する改革についていいますと、まず綱領は、第一章「戦前の日本社会と日本共産党」で、侵略戦争と植民地支配の誤りを、歴史の事実にもとづき、またこの誤りと命がけでたたかった日本共産党の当時の現場での闘争にもとづいて、明らかにしています。

 さらに第四章「民主主義革命と民主連合政府」のなかの「日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」のところでは、日本がとるべき平和外交の諸政策の冒頭に、「日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する」ことを明記しています。

<異常なアメリカいいなり政治をただす改革>

 自民党政治の第二の異常――異常なアメリカいいなり政治とそれをただす改革についていいますと、まず綱領は、第二章「現在の日本社会の特質」のなかで、日本の現状が、「発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある」ことを、日本全国に配備されつづけている米軍基地、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている自衛隊、軍事・外交・経済などあらゆる面での従属の実態を示しつつ、正面から告発しています。

 そして第四章の「民主的改革の主要な内容」のところでは、この異常な状態からの脱出の道が、日米安保条約の廃棄と日本の進路の平和・中立・非同盟路線への転換にあることを明示し、新しい日本がとるべき平和外交として八項目の内容を示しています。

 さらに第三章の「世界情勢――二〇世紀から二一世紀へ」の分析では、今日の世界の大きな流れは、アメリカの覇権主義的な世界支配を許さず、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築き、核兵器も軍事同盟もない世界を実現することにあるとして、この転換の国際的な背景と意義も明らかにしています。

<極端な大企業中心主義の異常をただす改革>

 自民党政治の第三の異常――極端な大企業中心主義の異常とそれをただす改革についていいますと、まず綱領は、第二章の「現在の日本社会の特質」のなかで、国民を苦しめる諸悪の根源が、国内的には「大企業・財界の横暴な支配」にあること、とくに、「国民の生活と権利にかかわる多くの分野で、ヨーロッパなどで常識となっているルールがいまだに確立していないことは、日本社会の重大な弱点となっている」ことを指摘し、雇用、女性差別、中小企業、農業、環境、経済・財政政策、汚職・買収・腐敗など、国民生活と日本社会の各分野での異常なゆがみを告発しています。

 そのうえで第四章では、「経済的民主主義の分野」での「民主的改革」の内容として、「国民の生活と権利を守る『ルールある経済社会』をつくる」こと、「大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる」こと、「国民各層の生活を支える基本的制度として、社会保障制度の総合的な充実と確立をはかる」こと、そして、国の経済運営の全体を、「大企業・大銀行本位の支出や軍事費を優先させている現状をあらため、国民のくらしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営をめざす。大企業・大資産家優遇の税制をあらため、負担能力に応じた負担という原則にたった税制と社会保障制度の確立をめざす」という方向に大きく転換させることなどを、掲げています。

 自民党政治の「三つの異常」をただす日本改革の方針と綱領とのかかわりをいくつかの角度からのべてきましたけれども、こうのべてきますと、綱領の一つひとつの規定が、本当に今の情勢と響き合い、かみあっている。どの命題も、国民の中で語ったときに、あたりまえの常識的なこととして受けとめられる、そういう内容であるということがよくわかると思います。どの問題でも、国民の認識と日本共産党の立場――綱領の立場が接近してくる条件と可能性、そして必然性がある。そこをとらえて大いに綱領を語り、「どんな日本をつくるか」を語り、新しい日本の進路をともに探求するとりくみをすすめようではありませんか。

 そのなかで綱領の示す世界論、未来社会論、党の歴史も含め党の全体像を語ることも大いに重視していきたいと思います。綱領の第三章「世界情勢」では、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」について地球的規模から明らかにし、綱領の第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」では、資本主義を乗り越えた未来社会への変革の内容、展望、道筋が、全面的に明らかにされています。これらの中心点をつかんで、日本共産党のめざす未来社会とはどのようなものか、日本共産党という党名が、党の歴史とともに党のめざす未来社会とも不可分のものであることを明らかにしていくことも大切であります。
(「日本共産党第24回大会 第5回中央委員会報告」パンフ p12-14)
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◎「どの問題でも、国民の認識と日本共産党の立場――綱領の立場が接近してくる条件と可能性、そして必然性が……そこをとらえて大いに綱領を語り、「どんな日本をつくるか」を語り、新しい日本の進路をともに探求するとりくみをすすめよう」と。