学習通信071122
◎米国のスペースコマンド(宇宙軍)……
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宇宙軍事化の第一歩
基本法案の再検討を要求
「七人委」アピール
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「世界平和アピール七人委員会」は十九日、国会で継続審議中の宇宙基本法案が「宇宙を軍事の場とする道をひらく第一歩となる内容を含んでいる」として、同法案の再検討を求めるアピールを発表しました。同委員会のメンバーが国会を訪れ、各党党首と衆参両院の内閣委員会関係者あてにアピールを届けるとともに、記者会見しました。
アピールは、同法案が、自衛隊独自の早期警戒衛星や軍事用通信・電波傍受衛星などの保有・運用を可能とし、宇宙開発の軍事化の危険性があることを指摘しています。そのうえで、「いったんこの動きを認めるなら、軍事機密を梃子(てこ)として軍産複合体の成立を促し、国家の動向を誤らせかねない」と警告しています。
また、宇宙開発の公開原則を捨て去り、学術の進歩を軽視していることなどの問題点についても批判。法案が「国家の利益のために宇宙を利用する意図があらわなものであり、日本の品位をおとしめ、諸外国からさげすみをもってみられることは必定」としています。
これまで日本の宇宙開発は、一九六九年の国会決議にもとづいて「平和目的」に限定されてきました。アピールは「日本が『非軍事』の旗を掲げて宇宙の平和利用に徹し、人々に夢とロマンを与え続けることこそが真の平和国家としてとるべき道である」と述べて、平和目的に限定した宇宙基本法の制定を目指すことを求めています。
記者会見で、宇宙物理学者の池内了・総合研究大学院大学教授は「これまで日本は、すばらしい独自技術を開発してきた。軍事の秘密研究となれば、公開・議論されない。技術にとってマイナスだ」と述べました。
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世界平和アピール七人委員会 ノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士らが参加して一九五五年に結成した、知識人による意見表明の会。日本国憲法の平和主義にもとづく訴えや、核兵器廃絶の呼びかけなどをおこなってきました。現在の委員は、武者小路公秀(国際政治学、大阪経済法科大学教授)、土山秀夫(医学、元長崎大学学長)、大石芳野(フォトジャーナリスト)、井上ひさし(日本ペンクラブ前会長)、池田香代子(ドイツ文学翻訳家)、小沼通二(物理学、慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙物理学、総合研究大学院大学教授)の七氏。
(「赤旗」20071120)
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宇宙基本法案 どこが問題?
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〈問い〉 自民、公明両党が先の国会に提出した「宇宙基本法案」には、どんな問題がありますか?(岡山・一読者)
〈答え〉 日本の宇宙開発とその利用は、1969年5月、衆院本会議で採択された「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」(通称、「宇宙の平和利用決議」)にのっとって進められています。日本の宇宙開発は平和の目的に限って進めるという内容で、平和の目的とは、「非軍事」(=軍事に利用しない)という解釈がとられています。
宇宙基本法案は、宇宙の平和利用決議を無力化し、宇宙開発を軍事利用できるようにしようというものです。先の通常国会に自民・公明両党が共同で提案し、継続審議になっています。
自民党は、昨年来、自民党政務調査会(政調)・宇宙開発特別委員会で国防族議員を中心に議論を重ね、「新たな宇宙開発利用制度の構築に向けて」という名の宇宙政策の論点整理を行いました。これが法案の骨子となっています。
この中で、わが国の宇宙開発は技術開発に重点が置かれ、宇宙技術の利活用を発展させる道が閉ざされたこと。そのため、防衛庁(現・防衛省)が衛星の保有・運用を行うことができないこと。現在の自衛隊の活動に照らすと、宇宙の平和利用を目的とした国会決議(宇宙の平和利用決議)が足かせになっていること。その決議を無力化するには、新たな法律を制定することが必要であること、などを主張しています。同じ内容の要求は自民党が論点整理をする以前から、経団連や、宇宙産業の業界団体である日本航空宇宙工業会から何回も出されていました。法案の基本に、経団連や業界団体の強い要求があることは明らかです。
宇宙産業の主要企業の多くは、同時に自衛隊の戦闘機や戦車などの武器を製造しているように、宇宙開発と軍需産業は表裏一体の関係にあります。しかし、日本の宇宙開発は、憲法の平和主義と宇宙の平和利用決議によって、軍事と一線を画して発展をとげ、世界的にも高い評価と信用をかちとってきたものです。
宇宙産業は日米で共同開発を進めているMD(ミサイル防衛)の受注により、市場拡大をねらっているといわれています。宇宙の平和利用という「足かせ」がなくなれば、ミサイル発射の赤外線を宇宙空間から感知する早期警戒衛星、高性能の偵察衛星、自衛隊独自の通信衛星や通信傍受衛星などの開発や保有が可能となります。宇宙における軍拡基本法案ともいえます。(直) 〔2007・8・8(水)〕
(「赤旗」20070808)
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私は、アメリカ帝国主義の世界支配をめざす軍事戦略は、核抑止体制と常時戦闘体制の二本の柱からなっていることを指摘してきた。この二つの柱にかんして、ブッシユ政権のもとで前面に押し出されてきたものが、ラムズフェルド国防長官がのべた「敵対国にたいして決定的勝利をおさめる能力」としての「全範囲での優勢」と「ミサイル防衛」である。
第一の柱の常時戦闘体制をさらに強化するものとしては、コーエン国防長官の「二〇〇一年国防報告」に、「万能型(フルスペクトラム)の軍事作戦」と「全範囲での優勢」という二つの新しい攻勢的概念が登場した。
前者については、次のようにのべている。
「米軍は、単独でも連合軍の一部でも、危機に際して敵の侵略あるいは威圧を阻止することから、小規模有事(SSC)作戦の同時実施、大規模戦域戦争での戦闘と勝利まで、万能型(フルスペクトラム)の軍事作戦を実行できなければならない」。
後者については、次のようにのべている。
「この能力は、将来の軍事作戦に関する統合参謀本部議長の概念的青写真『ジョイント・ビジョン2020』に描かれている、全範囲での優勢という共通目標に向けた国防総省の全組織による統一された努力を通じてのみ達成可能だ」。
「赤旗」の坂口記者は、「国防報告」について、この「『全面的優勢』(「全範囲での優勢」のこと──引用者)の達成を二十一世紀の米軍の目標としてかかげ、それに向け各軍の改革を求めている点が大きな特徴の一つとなっています」と評価している。
第二の柱の核抑止体制の新たな強化として登場したのが「ミサイル防衛」である。
「国防報告」は、二一世紀の米国の防衛戦略について、「ミサイル防衛は、この戦略のカギを握る構成要素である」とし、その役割は「国際安全保障環境を形成する上で決定的に重要である」と位置づけている。
ブッシュは大統領選挙で、「ミサイル防衛」を最優先公約として掲げ、当選後、最初の公的演説となった五月一日の米国防大学での国防演説全体を「ミサイル防衛」に捧げた。
中心となるテーゼは、まず、「ソ連の数千発の弾道ミサイル」を相手とした「冷戦型の抑止力」は、「テロと脅迫を常道とするこれらの国が保有する少数のミサイル」相手には「もはや十分とは言えない」という「冷戦型核抑止論」からの転換である。そして「今日の世界のこれまでとは違った脅威に対抗すべく、ミサイル防衛を構築するための新たな枠組みが必要なのだ」とする。
大統領演説は、これまでのNMD(米本土ミサイル防衛)とTMD(戦域ミサイル防衛)の区別をなくして一体化した新たな「ミサイル防衛」につき、ラムズフェルド国防長官が提起した「方策」候補を、次のように描いてみせた。
「中間軌道ないし大気圏再突入後のミサイルを迎撃するのに、陸上および海上配備のものを恐らく含む既存の技術を利用することもできるだろう。我々は同時に、ミサイルが発射されて初期の段階、とりわけ上昇段階で迎撃するのに大きな利点があることも認識している。
予備的な作業によって、こうした能力を備えた高度のセンサーや迎撃体について、幾つかの有望な選択肢が見つかった。艦船や航空機に配備すれば、限定的だが、効果的なミサイル防衛ができる 可能性がある」。
「艦船や航空機に配備」というのが、クリントン時代のミサイル防衛との違いで、海上と宇宙空間への拡大がブッシュ構想の中心となった。クリントン時代のNMDは「地上発射の迎撃体を配備し、米国に飛んでくるミサイルを迎撃する」計画だったからである。しかも「中間軌道」というのは、ミサイルのロケット噴射が終わってから大気圏に再突入するまでの、つまり大気圏外、宇宙空間での飛行軌道のことで、宇宙の軍事利用にほかならない。そのために宇宙防衛機構設立と多層迎撃システムが用意された。
「ラムズフェルド国防長官は五月八日、大統領演説につづく『第二弾』として、『宇宙防衛』強化のための機構再編を発表し」、「ウォルフォウイッツ国防副長官は七月十二日の上院軍事委員会で、ミサイル発射後の『ブースト』段階、『ミッドコース(中間)』段階、『ターミナル(終末)』段階の 全行程で、陸上、海上、空中、宇宙空間から迎撃できる『多層迎撃システム』を提示した」。
これは、六七年に結ばれた宇宙条約(「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」)の違反である。この条約は「平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩」(前文)のための条約であり、第四条は「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道にのせないこと」、「これらの兵器を天体に設置しないこと」とともに、「いかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないこと」を規定しているからである。ミサイル防衛をめざすブッシュ政権は、米ロ間のABM(弾道弾迎撃ミサイル)制限条約の改定ないし破棄だけでなく、宇宙条約の再検討や一方的離脱を図ることとなるかもしれない。
このように、ブッシュ政権の「ミサイル防衛」とは、レーガン政権の「SDI」(スターウォーズ、戦略防衛構想)の復活、あるいはそれ以上の宇宙の軍事化を含む前代未聞の危険な大計画なのである。
アメリカ国内でも「レーガン政権のSDI時代に回帰した」という批判が始まっているが、ソ連崩壊後一〇年たった今日、ブッシュ政権はなぜ、こうした時代錯誤の宇宙軍事化構想をうちだしたのか。
第一に、まず何よりも、アメリカの巨大な軍需産業の要求に直接こたえるためである。すでに指摘したように、京都議定書からの離脱は石油産業の要求によったものであった。ミサイル防衛は、ソ連崩壊後の軍縮をめざす世界的な風潮に抗して、新たな軍需と軍事予算を必要とする軍産複合体の死活的要求によるものであった。アメリカ資本主義は、軍事的資本主義として、巨大な軍事支出をその成長の主柱の一つとする資本主義に変貌している。チャルマーズ・ジョンソン氏は「軍事関係の生産はアメリカの国内生産のおよそ四分の一を占める」と書いた。高榎亮氏は、ミサイル防衛の費用について次のような数字を紹介している。
「米国は過去一五年間にミサイル防衛の研究開発に六〇〇億ドルもの資金を費やした。クリントン政権時代には米議会の会計検査院が二〇〇六年までにNMDを一か所に配備するだけでニ八〇億ドルもかかると試算したことがある。それによっても確実な迎撃どころか『ならずもの国家』による可能な化学・生物兵器やサイバーテロにも対応できない。喜ぶのは冷戦の終結で失業しかかった産軍複合体だけである。産軍複合体は儲けだけでなく技術力を維持するために常にフォロー・オンのハイテクシステムを必要とする。米国のスペースコマンド(宇宙軍)がレーザー兵器によるブースト段階での迎撃も含めて宇宙での軍事的優位を目指していることも忘れてはならない」。
費用はSDIを上回るという指摘もある。「日経」は、「構想実現にはSDIを上回る巨額の費用がかかるのは確実。『飛んでくる弾丸を弾丸によって落とす』と例えられる構想だけに、本当に技術的に可能かという疑問は消えない」と書いた。
第二に、このミサイル防衛構想は、ブッシュ政権の「中国封じ込め」政策の一環であるという疑惑が提起されている。
ブッシュ大統領の国防大学の演説で注目をひいた点の一つに、ロシアと中国にたいする態度の明白な区別があった。「中国やロシアをはじめ、他の関係国にも話し合いの手を伸ばしていく必要がある」といいながら、ロシアについては、わざわざ「ロシアと米国は協力して、二一世紀の世界平和と安定のため、新たな基盤を作り上げていかなければならない」と付け加え、ロシアは「戦略的な敵ではないし、そうあってはならない」「我々は一致して、今日の脅威に対抗し、逆に好機を生かす道を探っていくことができる」と特別に同盟国視する言葉まで呈していたからである。
レーガン政権のSDI構想とは、実はソ連との核軍拡競争の熾烈化によるソ連の弱体化、さらにはその崩壊の意図をもふくんだ戦略だった。九一年のソ連崩壊という「歴史的」勝利の経験は、アメリカ帝国主義にとって、忘れがたい「勝利」の体験となっている。
(上田耕一郎著「ブッシュ新帝国主義論」新日本出版社 p249-254)
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◎「ブッシュ政権の「ミサイル防衛」とは、レーガン政権の「SDI」(スターウォーズ、戦略防衛構想)の復活、あるいはそれ以上の宇宙の軍事化を含む前代未聞の危険な大計画」と。