学習通信071203
◎過去の「改革」を振り返り公平化の視点から……

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《潮流》

きょうは勤労感謝の日。「勤労をたっとび、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう」日を皮切りに、世の中は三連休です。紅葉が彩る列島で、晩秋の行楽もたけなわでしよう

▼三連休ならぬ三連球が飛んできました。一球目=十九日・財政制度等審議会。二球目=二十日・政府税制調査会。三球目=二十一日・自民党の財政改革研究会。三日続きで、「消費税の増税を」の要求です

▼そろって社会保障をまかなう財源に≠ニいい、それぞれクセ球ではあります。一球目は、借金づけ財政の「健全化」のために。二球目は、消費税は公平だと説く。三球目は、名前をずばり「社会保障税」に変える。しかし、どれも暴投です

▼本当に「健全化」を願うなら、まずは余力をもつ大企業や大資産家に、もっと税の負担を求めればいい。ところが政府税調など、大企業の負担をいまより軽くするというのですから、真剣さを疑います

▼公平? もともと負担が、所得の低い人ほど重く所得の高い人ほど軽い消費税です。発達した国では、アメリカについで貧困率が高くなってしまった日本。七人に一人が貧困という社会で消費税を増税し、なにが公平でしょう。ワーキングプアの若者を増税でおいつめて、「勤労をたっとび」どころではありません

▼社会保障税。十三年前の「国民福祉税」がよみがえります。細川首相の大暴投です。世論の反発で翌日ひっこめたものの、政権の力は失速し、首相の金権疑惑が重なって、細川内閣は二ヵ月後に崩壊しました。
(「赤旗」20071123)

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大磯 小磯
消費税率を引き上げる前に

 この九月に発表された国税庁の「民間給与実態調査」によると、二〇〇六年に民間企業が一年を通じて勤務した四千四百八十五万人に支払った給与の総額は百九十五兆円と、一九九八年以来、九年連続の減少となった。そのなかで千五百万円超の高所得者は五十八万七干人と一・三%にすぎないが、給与収入からの納税額は約二兆五千億円と全体の二五%を占めるという。

 今後、増税が必要な場合には、収入の低い層も含めてより多くの国民が、幅広く負担する消費税率の引き上げもやむを得ないように見える。

 しかし、所得税の最高税率は八三年以前の七五%から、九九年以降は三七%と半減していることも忘れてはならない。このため給与収入千五百万円超の層では、所得税率が八二年の平均二五%から〇六年には同一八・四%に低下したが、もともと税率が低かった五百万円以下の層では平均三・九%から二・八%の低下にとどまっている。

 ここで消費税率が一〇%に引き上げられた場合、八二年と比較して所得税と消費税が給与収入に占める比率が二つの階層でどのように変化するかを推計してみよう。千五百万円超の層では、対給与収人の可処分所得比率が八〇%、同所得に占める消費の平均割合も八〇%とすれば、消費税の負担率は対給与収入比で同税率一%に対し〇・六四%となる。同様に、給与収入五百万円以下の層では、可処分所得比率および消費割合がいずれも九〇%とすれば、消費税の負担率は同〇・八一%になる。

 この結果、千五百万円超では、消費税引き上げ後も二四・八%(所得税率一八・四%+消費税率〇・六四%×一〇)と、八二年の二五%に比べてほとんど変わらないのに、五百万円以下では一〇・九%(同様に二・八%+〇・八一%×一〇)へと、三・九%から七ポイントも上昇すると見込まれる。

 以上は、あくまでも筆者の試算だ。しかし、少なくとも累進制緩和後の二十数年間に日本で行われてきた税制「改革」は、最高税率の引き下げをはじめ、株式の譲渡益に対する軽減措置や利子・配当所得に対する分離課税など、高所得層を優遇する「改革」だった。

 消費税率引き上げの前には無駄な歳出の削減だけではなく、過去の「改革」を振り返り公平化の視点から議論する必要があるように思われる。(文鳥)
(「日経」20071026)

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◎三日続きで、「消費税の増税を」の要求