学習通信071218
◎職場のモラールダウン……

■━━━━━

 産業カウンセラー
いじめ相談8割経験
 「パワハラ」が7割超す

 企業で相談業務に携わる産業カウンセラーの八割が「職場のいじめ」と考えられる相談を受けたり、目にしたりしていることが十六日、日本産業カウンセラー協会(東京)のアンケート調査で分かった。中でもパワーハラスメントが最も多く、八割近くに上った。

 十月にはパワハラ自殺を労災と認定する初の判決が東京地裁で出ている。職場の深刻な実態が浮き彫りになり、原康長専務理事は「子供のいじめが社会問題となっているが、大人社会も陰湿と言わざるを得ない。企業はまず実態を把握する努力が必要」としている。

 調査は十一月、過去一年間に企業で相談・カウンセリング業務に従事した人を対象に、同協会のホームページを通じて実施。四百四十人の回答を集計した。

 いじめと考えられる事例を見たり、相談を受けたりした人は三百五十四人で約八割。その内容(複数回答)はパワハラ(七八%)が圧倒的に多く、次いで「人間関係の対立・悪化に起因したいじめ」(五九%)、「仕事のミスに対するいじめ」(四四%)、「セクハラ」三六%)だった。

 いじめの形態(同)では「ののしる・怒鳴る・威嚇する」が六八%、「無視・仲間はずれ」(五四%)、「嫌がらせ」(五〇%)の順だった。当事者の関係(同)では、上司から部下が八五%に上った。パワハラ対策として有効・必要と考えること(同)は「管理職研修を含む企業内教育」が八七%だった。
(「日経」20071217)

■━━━━━

崩れる職場

 すでに触れたように、リストラが一段落した職場では、これまでの終身雇用や年功序列型のシステムの手直しと、成果主義システムの導入におおわらわといった状態である。そうした急激な労務政策の転換が求められる一方で、このあまりにも急激な変化に対して、その性急さへの危惧や、先行きへの不安が職場にはくすぶり続けている。

 いつの時代にも、変化に対する反応として、戸惑いや躊躇はつきものではある。現在の状況についても、その例にもれず、成果主義という新たな制度を選択することへのコンサバティブな疑問が依然として根強く渦巻いている。

 その不安には、年功序列や終身雇用というシステムを否定するあまりに、それに代わるシステムの合意形成ができないまま突き進んできてしまったという事情も加わっている。

 成果主義は、あらかじめ終身雇用などに取って代わるシステムとして、ゆっくりと時間をかけて合意されてきたものではない。現実には、終身雇用を否定してしまった後に、それに代わるシステムがなく、もはや選択の余地なく成果主義に走るしかなかったという事情がそこにはあるように見える。

 いずれにせよ、こうした制度のやみくもな変更がもたらす不安が、職場での苛立ちの大きな要素となっていることは間違いない。こうした混乱は旧制度の価値観と新制度への意識変化を混在させて、職場に戸惑いと混乱をもたらさずにはおかない。

 そうして求められた急激な変化の中で、新旧の価値観の交錯が職場に戸惑いをもたらし、混乱を与えはじめている。そして、その混乱はこれまでの職場秩序の揺らぎとなって、ある種のモラールダウンを巻き起こしはじめている。

 パワーハラスメントやセクシュアル・ハラスメントは、そうしたモラールダウンした職場という土壌に咲くあだ花といってもいい。また、最近相次いで起きている企業の不祥事も職場のモラールダウンということでは共通の背景を持っている。

 まさに職場秩序が揺らぎ、価値観が混乱し、その裂け目から職場での人間関係の苛立ちが噴出しはじめているのが企業の不祥事であり、パワハラやセクハラなのだ。その意味では、職場のモラールダウンが両者に共通の土壌として深く関わっている。

 それは、不正やパワハラ、セクハラ事件などが起きた職場は、事件が公になると判で押したようにモラールダウンした職場であったことが指摘されることにも如実に示されている。

 実際に、こうした事件の報道などに接してみると、周囲にいた人たちは、一体何を考えていたのだろうと首を傾げざるを得ないような事件が多くある。つまり、職場という単位で、小さなモラールダウンがさざ波のように繰り返され、その積み重ねが職場体質を作り出し、不祥事に発展してしまうということである。

 不祥事は、よく言われるように、決していきなり起こるわけではない。もはや、周囲が不祥事を不祥事としてとらえる感覚を失ってしまい、麻痺してしまうことで、大きなトラブルに発展してしまったと考えられている。

 裏を返せば、企業不祥事を引き起こす、周囲を巻き込んだモラールダウンは、もはや誰もが意識できないほどに職場の体質と化してしまっているということである。そして、そのことが大きな事件になった時に、はじめてその職場のモラールダウンが話題になるのである。
(金子雅臣著「職場いじめ」平凡社新書 p78-81)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◎「企業で相談業務に携わる産業カウンセラーの八割が「職場のいじめ」と考えられる相談を受けたり、目にしたりしている」と。