学習通信080118
◎第二の「武装治安部隊」……

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雇い兵犯罪 米政府が放置
人権団体批判
司法省は「免責」やめよ

 【ワシントン=鎌塚由美】米国の人権団体「ヒューマン・ライツ・ファースト」は十六日、ワシントンで会見し、イラク、アフガニスタン戦争で米政府が契約する民間軍事会社の雇い兵の犯罪を追及しないブッシュ政権には「法執行の意思の欠如」があると厳しく批判しました。そのうえで、既存の法体系を適用し、犯罪免責の悪弊を終了させるよう訴えました。

 雇い兵へのインタビューや政府資料をまとめた同報告は、現在のイラク戦争の雇い兵の数を「少なくとも三万五千人」と推定。占領米軍主導の連合軍の中で第二の「武装治安部隊」となっていると指摘しました。

 弁護士らで構成する同団体は雇い兵問題について、これらの企業だけでなく、米司法省の責任にも目を向ける必要性を強調しました。報告は、米司法省が法的枠組みの不備を理由に雇い兵問題で「免責」という悪弊を続けていると指摘。これは地元住民を怒らせるだけでなく、「雇い兵による更なる侵害を助長している」とも述べました。

 報告はイラクやアフガニスタンでの雇い兵による事件について、「ほとんどは、既存の米国刑法のなかに全面的捜査と起訴を行う実質的な基礎がある」と指摘。法の執行強化とともに、殺傷事件の被害者には「雇い兵会社による補償が義務付けられるべきだ」とも提言しました。

 イラクでは昨年九月、米大使館員などを警護する米民間軍事会社ブラックウォーターの雇い兵が市民に発砲し、少なくとも十七人が死亡。国際的にも雇い兵問題が大きく注目されました。報告は、同事件に対する米政権の対応は「混乱、保身、その場しのぎの調査の繰り返しと、政府機関同士の責任のなすり付け合い」だったとし、「これらの失敗は、深刻な暴力事件に対し、体系的な捜査と起訴を行う司法省の意思のなさを強調している」と述べました。
(「赤旗」20080118)

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Q&A
日本共産党 知りたい 聞きたい

イラク戦争 民間軍事会社とは?

 〈問い〉 イラク戦争に深くかかわっている民間の戦争請負会社とは? 高額の給料にひかれた日本人も犠牲になったとか、40カ国近くの国から加わっていると聞きました。資金がどこからでているのかをふくめて実情を知りたいです。(京都市・一読者)

 〈答え〉 民間軍事会社(PMC=プライベート・ミリタリー・カンパニー)とよばれる、軍事分野での民間請負会社の活動は、イラク戦争においても活発で、世界中から4万人以上が警備員などの身分で仕事に就いているといわれています。

 PMCに雇われた要員の数は、イラクに部隊を派遣している米国を除く各国のそれぞれの派兵数をはるかにしのいでおり、民間の請負なしにはイラク占領もありえないという状況になっています。要員は、特殊部隊に所属していた元兵士や、その道の経験がなく訓練もまともにうけていない「まがいもの」まで多種多様といわれています。

 PMCは、イラクを占領している米軍が、国内の「治安維持」活動に専念するため、米大使館員などの警護や、復興事業にかかわる各施設の警備、兵站(へいたん)・補給、輸送など、占領活動の一端を「代行」しています。米英などのPMCは米政府と多額の契約を結び、戦争特需で大もうけしているのです。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、過去4年間、米国務省がイラクで活動するPMCに支払った額は、10億ドル(約1150億円)から40億ドル(約4600億円)にはね上がったと報じました。

 イラクでのPMCの存在が世界で知れ渡ったのは、2007年9月16日に17人の死者を出した米ブラック・ウォーター社要員による民間人射殺事件です。米下院政府改革委員会が07年10月にまとめた報告書によると、同社は05年から195件の銃撃事件に関与し、これらのうち実に8割が、同社要員の方から最初に銃を発射していることが判明しています。イラクで問題を起こしているのは同社だけではありません。

 不審者とみなしたら民間人を無差別に殺し、イラク国民から「無法者」とみられているPMC要員ですが、占領直後に発足した暫定行政当局(CPA)は、同要員にたいし政府の訴追を受けない免責特権を与える法規を定めました。現在、イラク政府は、この免責特権をはく奪する法案を議会に送っています。

 PMCの活動は、イラク戦争以前から存在します。とくにソ連崩壊後の90年代、アフリカや旧ユーゴスラビアなど世界各地で起きた紛争で、PMCが戦争コンサルタントとして暗躍したといわれています。

 PMCの増大は、一国の安全保障に大国の民間企業が介入するもので、国家主権をないがしろにしかねない事態を招く危険性をはらんでいます。(遠)〔2007・12・29(土)〕
(「赤旗」20081229)


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民間軍事会社(みんかんぐんじかいしゃ) "Private Military Company, PMC"または、"Private Military Firms PMF"と主に表記される新しい形態の傭兵組織。

主な業務としては軍隊や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した戦闘員を派遣しての直接戦闘業務に加え、兵站・整備・訓練など旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多域に渡る。民間軍事契約業者(Private Military Contractor)ともいう。

また、国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある。

民間軍事会社の登場
1991年のソビエト連邦崩壊に伴う冷戦の終結により、アメリカ合衆国を中心とした各国は肥大化した軍備の予算と人員削減が進められ、数多くの退役軍人を生み出した。冷戦終結以降の世界では超大国同士がぶつかりあう大規模な戦闘の可能性は大幅に少なくなったものの、テロ行為や小国における内戦、民族紛争など小規模な戦闘や特定の敵国が断定できない非対称戦争が頻発化した。

特に小規模な戦闘においては大規模な部隊を展開するにはコストや手間がかかることや国内の世論を納得させる大義名分も必要とされる。そして、小国の内紛程度の戦闘規模では小規模ながらも優れた戦闘能力を備えた軍でも大きく戦局を変える事ができるようになった。有り余る優秀な軍経験者、軍事予算の大幅な削減に伴う軍隊のコスト面での効率化、そして低程度規模の紛争の頻発化。

この3つの要素が民間軍事会社を生み出す土壌を与える事となった。まさに戦争のアウトソーシングである。

民間軍事会社と旧来型傭兵の違い
民間軍事会社はそれまでの傭兵が担っていた直接戦闘行為に特化した戦闘集団ではなくそのほかにも兵站・整備・訓練・教育・戦闘に関するアドバイスも行い、従来の”戦争の犬たち”と揶揄される荒くれ者、無法者が集まる非情で外道な戦闘集団というイメージと一線を画すよう努めている(しかし、イラク戦争のブラックウォーターUSAのきな臭い噂など、実態はさして変化がないようである)。 民間軍事企業研究の第一人者とされるP・W・シンガーによると、主に3種類に分類できるという。

直接戦闘参加型
従来の傭兵に一番近いタイプ。特定の政府組織や国と契約を結び、戦闘を専門とする実戦部隊を派遣し、実際の戦闘行為に参加する。またその国の地下資源の供給地となる施設の警備・警護なども行っている。昨今では輸送部隊の警護や要人警護、国連、NGO職員、観光客や報道陣が特定の危険地域を通過する際の護衛任務なども担っている。

兵站・整備・物流請負型
戦争はその戦闘力を維持するための兵站や兵器の整備といった後方支援も重要である。以前は軍で行っていた司令部の設営や兵器の整備などの業務を代わって担うのがこのタイプの民間軍事会社である。 傭兵というよりは中世時代の酒保商人のような仕事をしていると言える。 具体的な内容としては、以下の3つが挙げられる。

生活環境提供
兵士の宿舎設営に始まり、食事を中心とする日常の生活に必要とされるサービスの提供、及び基地内のショッピングモールの運営[1]。

輸送業務
陸路・海路・空路とその輸送手段は幅広い。イラク戦争においてもクウェートからイラクまでの物資の輸送は主にこれらの民間軍事会社が受け持っている[2]。

兵器の整備
兵器のハイテク化に伴ない、その運用もハードウエア、ソフトウエア共に複雑化しており軍隊だけでその運用方法の教育を実施することが困難となってきている。こうしたハイテク兵器の運用・整備・メンテナンスもほとんどが外注化され、これを請け負う専門の民間軍事企業が多数現れている。現在では、スパイ衛星の運用・B-2ステルス爆撃機やF-117攻撃機の整備・イージス艦のミサイルシステムの運用・グローバルホーク無人航空機の操縦及びメンテナンスなどの以前は国家機密レベルの兵器を受け持つまでになっている。

戦略・戦術のアドバイザー及び地元兵員の訓練・教育業務
主に、将官・佐官クラスの退役軍人が運営する民間軍事会社。戦闘作戦における戦術・心理戦などのアドバイスや現在イラクにおいて進んでいるイラク政府への権限委譲で不可欠な国軍の訓練プログラムなどを受け持つ。これらの企業は実際戦争が起きている地域や国だけでなく、自国本土においても軍事訓練に関するプログラムを実施しており、戦場に派遣される前の民間軍事会社所属の社員の教育も実施している。

民間軍事会社のメリットとデメリット

民間軍事会社のメリット
コストパフォーマンスの高さ
自国で軍隊を創設し維持し、運用するには莫大な費用がかかり、使用する兵器もどんどんと複雑化、高額化している。また軍事費での一番の比率を占める人件費は正に軍事費削減の一番のキーである。少ない兵力で高性能な兵器を運用する上ではいかなる時でも即座に対応できる民間軍事会社のフットワークの軽さは大変魅力である。

即応性の高さ
小国など自国で強力な軍隊を持つことが出来ない国などは非常時にはある程度の資金をもっていれば手軽に強力な軍を短期間で調達する事ができる(このことは国連の平和維持軍にもあてはまり、国連軍が自前で派遣する軍より、民間軍事会社で構成された軍を派遣する方がコストにおいても戦闘能力においてもはるかに効率が良いと言われている)。

「公式の」戦死者として数えられない
そしてなにより最大のメリットとされるのが、民間軍事会社所属の社員が正式な戦死者数としてカウントされない事に他ならない。ベトナム戦争に代表されるように戦争を継続する上での最大の懸念は自国兵士の想定以上の被害数であり、このことは特に世論の戦争に対する支持率を大きく左右する。民間軍事企業に所属する社員は軍の公式の戦死者リストや負傷者リストにカウントされないため、戦争における人的被害者数を数値上少なくする事ができる[3]。

民間軍事会社のデメリット
戦時国際法における法的位置づけが不明瞭
軍と共に作戦行動を共にする事が多いにも拘わらず、戦争犯罪に関しては軍の法令を適用する事が出来ず、正規兵との処罰の格差が問題となっている(戦争犯罪の加害者にとってはメリット)[4]。また、活動がジュネーヴ条約に規制されないことから、戦争犯罪的な行為が『役得』として当然視されることもあるほか、社員側もジュネーヴ条約やハーグ陸戦条約に基づいた捕虜としての権利を認められずに、奴隷的強制労働や問答無用の「処刑」に処される可能性があるなどのデメリットを有する。

ストライキや契約破棄による運用不安定性
また民間軍事会社であることから、作戦の遂行に拘わらず会社内での社員に対する待遇問題や保障問題によるストライキが起き、予定されていたサービスが供給されない事や、契約内容と実際の戦場のリスクを天秤にかけた結果割りに合わないと判断すれば一方的に契約を破棄したとしても軍法会議に基づく処罰を追わなくても良い(正規の軍人ならば、命令不服従や敵前逃亡の容疑で軍法会議にかけられ処罰される)事など不安材料も多々はらんでいる。

軍人の引き抜きによる先進国軍隊の「結果的な」訓練予算の浪費
ここ近年では民間軍事企業に所属する将官クラスの退役軍人による優秀な人材のヘッドハンティングが大きな問題となっている。国を守る為の人材として国の多額の税金を費やして教育された特殊部隊員や空軍パイロットなどの優秀な人材が30代の一番脂の乗り切った時期に数多く民間軍事企業に引き抜かれてしまうのである[5]。

戦傷による辞職あるいは死亡した後の福利厚生が不安定
戦傷によって肉体的・精神的に障害を負って勤務できなくなった場合、正規の軍人であればアメリカ軍のパープル・ハート勲章(名誉戦傷章)に代表される勲章を授与され、傷痍軍人として恩給や廃兵院などの福利厚生を利用する権利が国から与えられるが、民間軍事会社の社員の場合、公式の戦傷者として認定されないために上記の権利が与えられず、「使い捨て」にされる可能性がある。当然死亡しても公式には戦死者として認定されないため、家族に国から遺族年金が支給されることは無い。

数値における民間軍事会社
1991年の湾岸戦争時には全兵士における民間軍事会社社員の比率は100:1と言われていたが、2003年のイラク戦争時はおよそ10:1と言われている
元有名特殊部隊所属の肩書きを持つ人材は1日で1000ドル程度の収入が見込めるが、グルカ兵などの途上国出身の兵士だとおよそ月に1000ドル程度
イラクに駐留する民間軍事会社の総人数はおよそ15000人〜20000人程度とされているが、そのほとんどが現地で雇用されたもので、欧米のスタッフは数百人程度とされる。

1994年のルワンダ紛争においてはエグゼクティブ・アウト・カムズ社はいつでも1500人規模の部隊を展開出来る準備を整えていた。(これはアフガニスタン侵攻時のアメリカ海兵隊の先行侵攻部隊と同規模である。)ちなみに作戦期間は4週間を計画しており、1日あたりの費用はおよそ60万ドル。
米国人以外の「社員」
2005年5月にはイラクで米軍の業務委託を受けていたクウェートの輸送会社P.W.Cロジスティックス社の車列を警備していたイギリスの警備会社ハート・セキュリティー社の車列に対して武装勢力の攻撃があり、警備要員としてハート・セキュリティー社の従業員として雇われていた日本人が負傷し、拉致された後、死亡した。

この日本人はかつて陸上自衛隊に2年間の勤務経験(第6普通科連隊に配属され、退職時は第1空挺団に所属)があり、その後フランス外人部隊に21年間在籍し、その間に外人部隊の最精鋭部隊である第2外人落下傘連隊での勤務経験もあった。ハート・セキュリティーも英国特殊部隊SASの元隊員が設立した会社で、実態は民間軍事会社である。


民間軍事会社/関連企業一覧
アメリカ
ブラックウォーターUSA
CACI California Analysis Center Inc.
Carlyle Group - 投資会社
DynCorp
Kellogg, Brown and Root - Halliburtonの子会社
Military Professional Resources
Titan Corporation
その他
Executive Outcomes - 南アフリカ
Sandline International - 英国

脚注
[1] 米軍のクウェートの基地内には米本土と遜色のない規模のショッピングモールが併設されており、給料日には兵士達も気軽にショッピングを楽しむことができる。

[2]主に陸路によるコンボイ輸送。IED即席爆弾・路上爆弾や武装勢力の襲撃などの数多くの危険を伴いながら業務を遂行。米本土から高収入に惹かれて数多くの一般人がこの業務に従事し昨今では業務中での負傷や業務災害に関する訴訟が頻発している。

[3]民間軍事企業関連の人間がイラクにどのくらいいるのかは軍の上層部でも正確な数は把握していないのが現状である。民間軍事会社に所属している人間の死亡者数は一説には300〜500人に達するという。

[4]主な事例としては、キューバのグアンタナモ刑務所におけるイラク人捕虜の虐待では実際に虐待行為に参加した米軍兵士は軍法会議で厳しい判決を受けるも、刑務所を運営していたタイタン社所属の社員は比較的軽い処分で処理された。また、コソボ紛争では民間軍事企業所属の社員が地元の少女2人をレイプし、その様子をビデオカメラに納めるという行為にも拘わらず、同じく軽い処分で済まされた。

[5]アメリカの特殊部隊グリーンベレーの隊員の年収はおよそ5万ドル程度と言われているが、同部隊所属の肩書きがあればイラクでは1日で1000ドルは稼げると言われている。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

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◎「PMCの増大は、一国の安全保障に大国の民間企業が介入するもので、国家主権をないがしろにしかねない事態を招く危険性をはらんでい」ると。