学習通信080123
◎スピリチュアルカウンセリング……

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霊視番組は倫理違反
江原啓之氏出演のフジTV
BPO

 フジテレビが昨年七月二十八日に放送した「FNS27時間テレビ『ハッピー筋斗雲』」が放送倫理にふれると指摘を受けて審議を重ねてきたBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は二十一日、記者会見を開き、同番組は「制作上の倫理に反すると判断した」と発表しました。判断結果はフジテレビに自省を促す「意見」として公表されます。

 同番組は、東北地方で美容院を経営する女性を“ドッキリカメラ”的手法で、自称スピリチュアルカウンセラー(霊能者タレント)の江原啓之氏が「霊視」し、「亡き父親の言葉」を伝えるというもの。その中で江原氏は、女性が取り組んでいる被災者などにリンゴを贈る活動が美容院を経営難にしていると、一方的に断定しています。

 委員会審議の結果、霊能師ありきの企画・構成や、美容院を「経営難」と断定している二点について、「倫理上の疑義がある」と指摘。「放送倫理基準が慎重な扱いを求める『スピリチュアルカウンセリング』なるものを、『おもしろく』見せるために、一方的に出演させた人の生活状況を十分な裏付けも取らずにおとしめている」と判断理由をのべています。

 フジテレビに対しては、「裏づけに欠ける情報の作為」「スピリチュアルカウンセリングの押しつけ」などに自省を求めています。

 フジテレビは同日、「今回の意見書を真摯(しんし)に受け止め、今後の番組制作に役立てていく所存です」とのコメントを出しました。

解説
“霊”番組への警鐘
 マスコミ界はBPO・放送倫理検証委員会の指摘を、当該番組だけでなく「スピリチュアル」番組全体への警鐘と受けとめるべきです。

 意見書によると、局側が事前に女性に関する片寄った情報を伝え、江原氏はその誤りにも気付かないまま亡父の「言葉」を紹介しています。

 守護霊や先祖霊の言葉は、霊能者がそう「感じた」「思った」だけのもの。それを断定的、短絡的に伝えるところに、一連の番組の共通した特徴があります。民放連の放送基準は「占い・運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」と述べています。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会が昨年二月に節度ある放送を申し入れて以後、一部番組では「科学的に立証されていない」という趣旨のテロップを流していますが、それだけでよいのか。

 弁連は、番組には「霊界や死後の世界を安易に信じこませ」る効果があり、霊感商法などの犯罪を生み出す温床になっていると指摘しました。実際、統一協会は洗脳施設のビデオセンターでこれらの番組のビデオを教材に使っています。占いやヒーリングを看板にして高額商品を買わせたり、法外な「祈祷(きとう)料」を巻き上げる事件も急増。昨年末に発覚した「神世界」は氷山の一角です。

 金銭被害だけではありません。人々の悩みや社会の不安に霊界を使った短絡的な結論を押しつけ、なぜそうなるのか考える努力を放棄させていることです。弁連の紀藤正樹弁護士は「こうした思考放棄を社会にまん延させ、本当の知への努力ができない人たちを大量に生み出す」ことの怖さを指摘しています。

 番組の「癒やし」効果を主張する人もいますが、その「癒やし」は「脅し」と表裏一体です。悩みや不安の原因はなにか。それを科学的に、視聴者とともに検証することこそがメディアの役割ではないでしょうか。(柿田睦夫)
(「赤旗」20080122)

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スピリッチュアル・ブーム

 スピリット(spirit)という言葉の意味は、精神や心、また霊魂・妖精です(原義は「呼吸」で、生命力の根源は息の中にあると考えられていた)。

 したがってスピリチュアル(spiritual)という形容詞は「精神的な、霊的な」という意味になります。

 いま本屋さんに行くと、スピリチュアル系の本がいっぱい並んでいます。江原啓之の著作だけでも何種類もあります。 2001年4月発行の三笠書房・王様文庫『幸運を引き寄せるスピリチュアル・ブック』などは2007年5月で107刷という売れ行きで、この種の文庫本だけでも8種類もあり、それぞれが何十万部も売れ、いかに多くの人に読まれているかが分がります。福島大学経済学部経営学科の教授・飯田史彦著『生きがい論』シリーズ(PHP研究所)も合計130万部といわれています。季刊雑誌の「Star People for ascension」にはスピリチュアル系の団体・個人・ショップなど最新の情報が提供され、それをみると国際的な広がりが感じられます。

 テレビや雑誌で紹介され、全国各地で無数の講演会がひらかれ、「心と身体がキレイになる。癒しとスビリチュアルの楽しい」イベントとしてスピリチュアルコンベンション(すぴこん)が、東京すぴこん、大阪すぴこん、横浜すぴこんなど全国で開催され、今年の8月の東京すぴこんは26回を迎えます。Body & Soulに関するたくさんのブース出展があり「体験・体感」でき、癒しと健康に関する商品を手にしたり、活躍中の講師によるセミナー・ワークショップにも参加できたりするというのが評判で、大勢の人がおしかけどこも大盛況ということです。

 まさにスピリチュアル・ブームの時代といえます。

ブームの背景にあるもの

 1995年3月20日の地下鉄サリン事件を忘れることはできません。「オウム真理教」という狂気の宗教集団は、駅員・乗客12名の命を奪い、5510名の重軽傷者を出しました。当時、なぜ若者がそのような集団にひかれるのかが問題になりました。差別と選別の教育のなかで挫折したり、心と身体を病んで孤独に生きる若者が「強い人間」になりたいという衝動のなかで、麻原形晃の説く「霊の世界」や「超能力」にひかれたことも一つの要因といわれています。

 あれから12年、日本の現実は若者にとってさらに深刻な事態となっています。24歳以下の半数が、パート・アルバイト・派遣・請負などの非正規で雇用され、低賃金・長時間・無権利の劣悪な労働条件で働かさ
れ、人生設計どころか、日々の生活もできないワーキング・プアの現状にあります。なにかにすがりたい気持ちは、より一層切実になり、「癒し」を求めています。

 スピリチュアルの世界は、「オウム真理教」と共通の「霊の世界」を展開しますが、閉鎖的な宗教集団というイメージがなく、明るく元気なムードのなかで、「癒し」の世界剖寅出し、若者の心に迫ります。

 そのため「励ましてもらった」「元気になった」という印象で近づき親しむ若者が多いのではないかと思います。

 ではどんな手法でスピリチュアルな世界に誘うのか、スピリチュアル・ブームの教祖(きょうそ)的存在の一人、江原氏の手法を『スピリチュアル・ワーキング・ブック』(王様文庫)からみてみましょう。

@スピリチュアリズムの「8つの法則」

 スピリチュアリズムには8つの法則があり、幸せな人生をおくるためにも、どんな仕事をしていくときにも必要な考え方で、常に心に刻んでおくようにといいます。

 8つの法則とはなんでしょう。まず「スピリットの法則」では、私たちが肉体だけの存在ではなく肉体とスピリットが折り重なって生きていて、この世でさまざまな体験をし、喜怒哀楽を含むいろいろな感動を得ることによって、たましいを磨くことが私たちの使命だといいます。だから楽しいこともつらいことも、すべてが「学び」で、仕事の苦しさもスピリットの磨きのために必要で、現世での学びを終えて、故郷であるスピリチュアル・ワールドに成長したスピリット・たましいを持って帰るといいます。格差と貧困が広がる現代社会のしくみそのものに苦しみの原因があるのではなく、「たましい」を磨く「試練」なのだから、すべて受け入れよというのです。

 それにしても、この厳しい現実を「試練」として耐えろというのはあまりにもつらいことです。そこでつづく「ガーディアン・スピリットの法則」では、だれにでも守護霊・ガーディアン・スピリットがあって、たましいの成長をあたたかく見守ってくれるから安心しなさいと説いています。ただし、ネガティブな思いで心を曇らせていてはサポートしてもらえないので、いつもポジティブに感謝の心をといいます。

 「グループ・ソウルの法則」では、スピリチュアル・ワールドではスピリットがいくつもの集団になっていて、その集団から現世にとびだして、またスピリチュアル・ワールドに帰る。この集団・グループのなかにガーディアン・スピリットの存在があり見守ってくれるといいます。

 「ステージの法則」とは、現世からスピリチュアル・ワールドにかえるとき、どのレベルの階層にすすめるかは、学びの質によって決まるといいます。グチや不満をいうだけなら学びは少ないし、低いステージにとどまる。だから前向きに努力して仕事に励めということなのでしょう。利潤最優先の資本にとってなんとありがたい「教え」でしょう。

 「波長の法則」とはなんでしょう。前向きに仕事に取り組み、笑顔で職場の仲間と接するとき、高い波長は、必ず同じ波長を引き寄せ、「類は友を呼ぶ」ということわざにあるように仕事もうまく流れ、人間関係もスムーズに運ぶといいます。なにかを心に強く思うとき、エネルギーを生みだし波長となって周囲に影響を与えるから、「思い」「言葉」「行動」のすべてを明るく前向きにして波長を高めよと説いています。

 「カルマの法則」とは、自分のしたことはいいことも悪いこともすべて自分に返ってくるという法則で、人の仕事の成果をねたむとマイナスのカルマとなって人にねたまれるが、いつも人の役に立つことを考えてサポートしていると、自分も必ず支えられるというのです。

 「波長の法則」と「カルマの法則」はスピリチュアリズムの二大法則で、現世はこの二大法則で動いている。だから自分に起こるすべてのことは自分の責任だいいます。

 「運命の法則」とは、誰と出会うかは宿命で、どういう関係を築いていくかは運命で、自分の力でどんなふうにも切り開いていくことができるということ、そして最後の「幸福の法則」は、マイナスの経験もつらい経験も、そこから学ぶことが、本当の幸福を得るために大切なステップだといいます。江原氏は以上8つの法則を心に刻んでいればなにがあっても必ず乗り越えられると説いています。スピリチュアリズムの世界で展開されている論理は、表現のちがいが多少あっても、その本質はこれと共通のものです。

A働く者の多くが抱く悩みに「対応」

 ところで、この本の巻末には、あなたの毎日がもっと充実する処方箋として、「仕事をする意味を見いだしたい人へ」「仕事ともっと上手につきあいたい人へ」「出合いをうまく仕事に生かしたい人へ」「いつも忙しく時間に追われている人へ」「自分の自由になるお金を得たい人へ」「自分をもっと磨きたい人へ」「自分の才能を開花させたい人へ」「自分の夢を実現したい人へ」の8つのテーマにわけ、さらにそれぞれに具体的な「悩みの一覧」が示されています。

 たとえば最後の「自分の夢を実現したい人へ」の部分には、(夢がまだ見つかっていないとき)、(理想と現実の間で悩むとき)、(毎日の仕事で悩みがつきないとき)、(自分でやりたいことがわからなくなったとき)、(自分が何に向いているのかわからないとき)、(転職を考えているとき)、(会社を辞めてフリーランスで働きたいとき)、(今の会社で成功したいとき)とあるように、現代日本の働くものの多くが抱く悩みのーつひとつに、丁寧に「対応」しています。

 「対応」に重大な問題がありますが、その悩みのすべては、格差と貧困の広がる現代社会に根があり、普遍的なものであるからこそ、誰もが抱く「共通の悩み」なのであり「かみ合う」のです。

 しかもその悩みにかみ合う「丁寧さ」が魅力となりブームになる力をもっています。友だちにすすめられた、本を読んだ、講演会に行って楽しかった、テレビで観て興味をもった、などきっかけはいろいろですが、宗教とはちがうという安心感があり、面白さを感じているのでしょう。

 いま日本の労働組合の組織率は18%で組織された労働組合の70%が「連合」です。非正規労働者の多くが労働組合に加入していません。職場に問題解決のためにたたかう組織も仲間もなく、学校教育のなかでの自主的集団活動の経験が乏しく、一人で悩み生きる若者にとって、直接、または「本やテレビや講演会」などの間接の「カウンセリング」を通じて「自分の気持ち」にかみ合う何かを感じて、「わかってもらうだけでもホッとする」という心情が推察されます。今日の政治・経済がつくりだした生きづらい現実の基盤と、その現実にたくましく立ち向かう力を奪われている若者の現状が、ブームの背景にあるのではないでしょうか。
(中田進「「スピリチュアル・ブム」を考える」学習の友別冊essence2 p4-10)

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◎「金銭被害だけではありません……人々の悩みや社会の不安に霊界を使った短絡的な結論を押しつけ、なぜそうなるのか考える努力を放棄させていることです」と。