学習通信080215
◎ポンツィは一九二〇年代の悪名高い詐欺師……

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朝の風
急増するイラク秘密空爆

 イラクで米軍による秘密の空爆戦争が、驚くべき勢いで急増している。

 昨年六月、米軍事専門家ウィリアム・リンドは米軍機がイラクで鉄道駅を爆撃した報道に唖然として、「米軍占領下の国でこんなことが起きるとは」と論評した。だがいまや当時を大幅に上回る規模で、空からの秘密戦争が一路拡大中である。

 昨年は一昨年の六倍の出撃回数という数字が、その急増ぶりを物語っているが、空爆参加中の米海兵隊は情報をいっさい公開せず、全容は秘密のとばりに包まれている。

 目立つのは大型爆撃機B1やベトナム戦から生まれた超低空地上攻撃機A10の再投入だ。米本国ネバダ砂漠から遠隔操縦する無人機は、ミサイル・ヘルファイア(黄泉の国の火)を放っている。

 イラク民衆に多大の犠牲が出ていることは想像に難くない。しかし米軍は情報統制の壁を厚くして報道を禁圧している。

 ブッシュのイラク戦争犯罪を追及する米ネーション研究所トム・エンゲルハートは、一月のバクダッド南郊の農村ジャブール地区への大爆撃のきわだつ特徴は、マスコミの目の届かない場所での「テロ爆撃」だと言う。

 十日間に投下された十万ポンド(約五十トン)の爆弾は、七十一年前スペインのゲルニカで使われた爆弾量に匹敵する。あの時四人の内外記者が駆けつけて、全世界に警鐘を鳴らした。だが今度は、一人も現地取材していないと言うのだ。(針)
(「赤旗」20080213)

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主張

米一般教書演説
無法な戦争始めた責任消えぬ

 ブッシュ米大統領は二十八日夜(現地時間)、大統領として最後の一般教書演説をおこないました。

 外交政策ではイラク問題に多くの時間を割き、昨年実施した米軍三万人の「増派のおかげでりっぱに成果が上がっている」と自賛したことが特徴です。二万人の兵士の削減を示しながらも、イラク国内や国際社会から求められている米軍撤退については、「早く撤退すれば暴力がはびこる」と撤退要求を事実上拒絶しました。十四万人以上もの米軍を駐留させ、軍事作戦を続けるのでは、イラク人の反発をやわらげることも、イラク情勢を改善させることもできないのは目にみえています。

市民殺傷の現実

 ブッシュ大統領がイラク侵略を命令してからこの三月で五年をむかえます。侵略の口実にした大量破壊兵器はイラクから発見できず、この戦争がまったく無法な戦争だったことがあきらかです。アメリカの政府高官の発言を調査している「センター・フォー・パブリック・インテグリティー」は、ブッシュ大統領が二百六十回、政府高官全体では九百三十五回もうそ発言をしていると発表しました。何度もうそをついて無法な戦争に導いたのに、ブッシュ大統領がだんまりをきめたのは国際社会をばかにするものです。

 ブッシュ大統領は、市民の死亡も減った、宗派間抗争も減ったなどといっていますが、これはイラクの表層しかみない議論です。なるほど十六万人にもおよぶ大軍による武力制圧で米軍などへの表立った反抗は減っているようにみえます。しかし、その奥でイラクの人々は恨みを大きくしているのは確実です。爆撃などで多くの民間人が殺傷され続けているからです。

 米紙ワシントン・ポスト紙十七日付は、米軍主導の多国籍軍がおこなっている空爆が、二〇〇七年は前年の六倍に達したと伝えました。一週間に四回の割合で合計二百二十九回だった爆撃が、〇七年には、一日四回の割合で合計千四百四十七回になっているのです。十日にはバグダッド南東部のアラブ・ジャブルの農村地帯に、B1戦略爆撃機二機と戦闘爆撃機が三十八発もの爆弾を投下し、多くの民間人を犠牲にしました。

 国連イラク支援団によると、こうした空爆で、昨年四月から年末までの九カ月間でイラク国民の二百人以上が犠牲になっています。ブッシュ大統領が引き起こした戦争以来、米軍の武力攻撃や抵抗する側の爆弾攻撃などで犠牲になったイラク人の数は「百二十万人」(イギリスの世論調査機関「オピニオン・リサーチ・ビジネス」の昨年九月の調査結果)ともいわれています。イラク国民がブッシュ政権への反発を強め、米軍の撤退を求めているのは当然です。

撤退の道に踏み出せ

 国際社会の撤退要求は大きくなるばかりです。スペイン、イタリアが多国籍軍から撤退したあとも、アメリカの盟友のイギリスが部隊を削減し、オーストラリアも撤退方針をあきらかにしています。アメリカ国内でも七割近くの国民がイラク戦争の不支持を表明しています。

 イラク侵略に突き進んだブッシュ大統領のやり方は、戦争を禁止し、紛争を外交的・平和的に解決するという国連憲章の枠組みをだいなしにするものです。ブッシュ大統領がイラク侵略とその後の軍事支配政策の誤りを認め、全面撤退の道に踏み出すことが不可欠です。そうしてこそイラク国民と国際社会の声にこたえ、平和を実現することができます。
(「赤旗」20080130)

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激動の世界経済
──グローバル化の変容と日本経済──
 鶴田 満彦

──以上略──
ニ サブプライムローン問題と先進国の金融不安

 一九七〇年代を過渡期として、二〇世紀末から現代に至る時代を特徴づけている現象は、グローバル化であり、われわれが、現代資本主義の現局面をグローバル資本主義と規定する所以である。

 グローバル資本主義の先端に立つものが、金融グローバル化である。なぜならば、旧IMF体制崩壊後、金との連繋を失った米ドルは節度なく全世界に流出し、各国銀行の信用創造をつうじて巨大な国際的マネーに増殖し、有利な金融商品と運用先を求めて、インターネットを利用して瞬時に全世界を飛び回るからである。このような国際的マネーのために、日本を含めて各国で金融市場の新自由主義的規制緩和(ディレギュレーション)が行われ、金融工学をも利用して、新金融派生商品が次々と開発された。

 サブプライムローンは、本来は、米国の銀行に融資を受けた住宅金融専門会社による信用力の低い低所得者向け住宅ローンで、当初二年程度は低金利で固定し、その後は金利が上昇するものが多いといわれる。貸し手にとっても借り手にとってもリスクの大きなローンであるが、米国では九〇年代半ば以来の住宅バブルで、住宅価格は値上がりするものと信じられていたから、貸し手は、ローン返済不能になった場合には、担保の住宅を売りに出すことによって、十分に債権を回収できると期待してこのような融資行動をとったものと考えられる。李立栄氏は、このような返済不能をある程度まで予定する融資は、ハイマン・ミンスキーがいうところの「ポンツィ金融」(ポンツィは一九二〇年代の悪名高い詐欺師)にほかならないといっているが、そのとおりである。

 これだけの話であれば、二〇〇六年夏以降の住宅バブルの崩壊とともに、住宅価格は下降に転じ、「ポンツィ金融」という詐欺まがいの融資を行った住宅金融専門会社とそれに融資した銀行がリスクを負うということだけに終わったかも知れない。サブブライムローンの残高は、〇六年末で一・三兆j程度と推定されており、けっして少なくない額ではあるが、そのすべてが破綻するわけでも担保物件がゼロになるわけでもないのだから、約一三・二兆jのGDPをもつ米国経済を動揺させるには至らなかったであろう。

 しかし、実際は、これだけでは済まなかった。というのは、住宅金融専門会社は、サブプライムを含む住宅ローンを、証券化して「住宅ローン担保証券」として売り出し、投資銀行は、さらにそれらを他の複数の社債などと組み合わせて再証券化し、S&Pやムーディズなどの格付け会社から優良証券なるお墨付きをもらって「債務担保証券」として世界中に売り出したからである。他方、銀行も、「投資ビークル」という特別目的会社を作って、資産担保コマーシャルペーパーを発行させて銀行自ら融資し、「債務担保証券」を買いあさったのである。高田太久吉氏の推計によると、サブプライムローンとそれに準じるオルトAクラスの住宅ローン担保証券の残高は約一・三兆j、これらをも裏付けにして発行された債務担保証券は、二次・三次のものを含めると三兆jに近いと見られる。

 米国住宅バブルの崩壊の影響を受けて、これらの証券はいずれも値下がりし、米国のシティ・グルーブやメリル・リンチ、欧州のUBS(スイス)やドイツ銀行やバークレイズ、日本では野村HDやみずほFGなどが、大きな損失をこうむった。自業自得ともいえるが、規制なきグローバル資本主義の危うさを示すものでもある。
(「経済 08年3月号 新日本出版社 p13-14)

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◎「ブッシュ大統領が二百六十回、政府高官全体では九百三十五回もうそ発言をしている……何度もうそをついて無法な戦争に導いた」と。