学習通信080227
◎活動家の重要な役割……

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 約束をきちんと守る

 品格のある人とは、なにより人から信頼される人です。信頼されるには信頼される行動を取らねばなりません。信頼されるためにはすばらしい言葉を言うより、きちんとした行動を少しずつ積みかさねていかねばなりません。

信頼関係を築くためにはホームランは必要ありません。

投げられたボールをこつこつとバットに当てていくだけです。具体的に言えぱ、約束した時間を守る。約束した仕事は約束した期限に仕上げる。出席すると言った会合には必ず出席する。電話すると言ったことは電話する。誰かに紹介すると言ったら紹介する。送ると言った資料は必ず送る。あげると約束したものをあげる。見せてあげると言ったものを忘れずに見せる。一つ一つはたいしたことではありません。ついうっかり忘れてしまいそうなことです。でもこうした小さいことの積み重ねが、あなたの信用を作るのです。ちょうど百円、二百円の小銭を口座に積み立てるようなものです。こうしたお金が積もり積もって大きな財産になっていくように、日頃の約束を守る行動が、気がついたらあなたの信用状になり、あなたの品格を高めていくのです。

 私も昔は、先輩から「そのうちメシでも食おうか」「ゆっくり時間をとって話したいね」などと言われて楽しみにしていたのに、いつまでも実現しないのでがっかりしたことがあります。そのうちに「この人はいわばリップサービスでいろんなことを約束するだけなのだ」と分かると、がっかりしなくなりました。それと同時に、この人は愛想はいいけれどアテにできない人だ、この人のなかで自分は重要と思われていないと自分の心の
なかでバッテンをつけました。もっとも今では、彼は心優しい人でその時その場の好意の気持ちを自分なりに表現していたのだと寛容に考えられるようになりました。

 もう一つ、必ず言ったことは守らなければならないと心がけるといいことがあります。それは、できない約束はしなくなることです。自分に秘書や有能な部下がいて、こうした頼まれごとを敏速に処理してくれるときは、いろいろな頼みごとを引き受けてもいいですが、そうでないときは(残念ながらそういうときが大部分)、自分の余力を考えて約束そのものをコントロールしなければならなくなってきます。

 相手を喜ばすには気軽に頼みごとを聞いてあげるのがよいでしょうが、できない約束をするのは自分の信用、自分の品格を下げます。気楽に頼みを聞いてあげないと、気易い人、愛想のいい人だとは思われなくなるかもしれませんが、「あの人は信用できる人だ」と尊重されます。

 そのためには約束したことを忘れないようにしなければなりません。自分の言ったこと、約束したことは覚えていたつもりでつい忘れてしまうことがしばしばあります。悪気がなくても約束を破れば、意図的に相手を軽んじて約束を破ったことと同じで、自分の信用は台なしです。私も自分は記憶力がいいほうだとうぬぼれていましたが、最近は「えっ、そんなこと約束した?」ということが多くなりました。自分の記憶力を当てにしないで、必ずメモをする習慣をつけましょう。手帳はそのためにあるのです。

 「あの人に千円お茶代を立て替えてもらっている」「割り勘の分を払っていない」「借りた本を返していない」……。
 小さな約束からまず守りましょう。
(板東眞理子著「女性の品格」PHP新書 p18-21)

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仲間は信頼できるか

 この本の一番はじめに出てきた、いくつかの組合づくりの経験にもあるように、労働者は表面的に見るかぎり、なかなか信頼できそうに思えません。仲間のカゲ口をいいあったり、おたがいに足をひっぱりあったり、職制にゴマをすったりということは、労働組合のない職場や、労働組合がほんとうに労働者一人ひとりの利益を守ってたたかっていない職場では、ふつうに見られることです。

 しかし、それが労働者のほんとうの姿でしょうか。多くの仲間たちの経験がしめしているように、そうした仲間たちも、おたがいの不満や要求がはっきりし、その原因がわかってくるにつれて、やがて信頼しあい、団結して立ちあがっていくのです。

 労働者が、おたがいに足のひっぱりあいをしているのは、労働者の本性から出たものではなく、まず第一に、資本家が労働者のなかに意図的にもちこんでいる競争によるものです。資本家は、労働者を団結させないために、賃金や昇格・昇進など差別をもちこんで競争させ、労働者どうしの対立をあおり、バラバラにして支配するのです。

 第二に、資本主義のもとでは、学校教育や新聞、放送なども基本的には資本家の支配のもとにあり、それらをつうじて資本家にとってつごうのいい考え方をたくみに労働者にうえつけるうえに、企業内でも、社内報や研修などで思想攻撃をおこなっていることによるものです。

 しかし、資本家がどれほど巧妙に労働者をごまかしていても、資本家が労働者を搾取しているという事実は、やがて労働者の不満や要求となってあらわれざるをえません。わたしたちは、こうした不満や要求が仲間たちと共通のものであることを知り、それを解決するために仲間と団結してたたかうなかで、はじめて自分のなかにひそんでいる労働者としてのほんとうの姿を見出していくことができます。ここに、わたしたちがおたがいに労働者として信頼しあえる根本問題があるのです。

 それでは、労働者のほんとうの姿、労働者階級のすぐれた資質とはどんなものでしょう。

 それは第一に、労働者階級は資本主義の発展のなかで、その「数」がますます多くなり、資本主義をなりたたせている生産力のにない手となっていますが、同時に未来の社会(社会主義・共産主義社会)の生産力のにない手となるということです。

 第二に、その労働者は資本家によって、いやおうなしに工場、企業という組織に組みこまれ、機械にむすびつけられ、規則によって規律ある組織的な生産労働に従わせられます。このことによって、労働者は、多数が団結して規律ある組織的な行動をとることができる能力を身につけていくようになるのです。

 第三に、資本家によって、一つの工場、事業所に幾十、幾百、幾千という労働者が集められているわけですから、労働者が団結しようとすれば、いつでも団結できるように、この条件を生かすことができます。

 第四に、資本家は生産の過程につぎつぎと最新の科学技術をとりいれます。労働者はこうした技術を使いこなせなければなりませんから、高い水準の科学的知識を身につけさせられますし、そうした資本家の必要からも(もちろんそれだけの理由ではありませんが)、子供のときから学校で教育されます。

また、多くの事業所は都市にあるために、労働者も都市に集中して住んでいますから、政治、経済、社会問題に目を開き、啓蒙される機会にめぐまれています。こうして、現代の労働者は、真理を見ぬく力をもったすぐれた階級に育ってきているのです。

 第五に、資本家は、労働者が団結すると、これをきりくずそうとして、さまざまな攻撃をしかけてきます。そこで労働者はきたえられ、新しい未来をきりひらくために不屈にたたかいぬく力を養うことができ、またその指導勢力となることができるのです。

 労働者を団結させることができるのは、もちろん、みなさんのような自覚した活動家の努力の結果でもありますが、より根本的には、仲間の一人ひとりが、労働者階級の一員として、以上のような資質を身にそなえているからにほかなりません。

 労働者を団結させる上でわたしたち活動家の重要な役割は、そうした労働者階級の資質が表面に現れるのをさまたげている資本家の攻撃──それは、直接的なものだけでなく、新聞やテレビや、習慣として日常生活のなかでくりかえされる資本家につごうのよい考え方──をいかにしてとりのぞくかということにあります。

 仲間の表面的な言動で一喜一憂することなく、そうした、ありのままの仲間の状態をしっかりとらえ、そのなかから、仲間の要求は何か、団結のさまたげをとりのぞくのにどんな方針が必要かを考えなければなりません。

 そのためには、わたしたちが、仲間にたいして、仲間が労働者階級の一員であり、すぐれた資質の持ち主であることに、しっかりとした信頼をおくことが、何よりも大切です。
(中森謹重、後藤耕三著「労働組合の基礎知識」学習文庫 p131-135)

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◎「信頼されるためにはすばらしい言葉を言うより、きちんとした行動を少しずつ積みかさねていかねばなりません」と。