学習通信080407
◎文化庁の映画担当者が制作者側に……
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「靖国」相次ぐ上映中止
「映画館は保身」
業界に嘆きの声
映画「靖国 YASUKUNI」の相次ぐ上映中止は、自由な表現活動の危機を見せつけた。映画界からも「映画館はトラブルを過度に恐れ、保身に走っている」と嘆く声が上がる。しかし大阪の一館は予定の上映を貫くことを明らかにし、配給元には上映を希望する映画館が名乗りを上げるなど、新たな動きも出ている。
三月中旬、最初に上映中止を決めた新宿バルト9(東京)。この時点で政治団体の目立った動きはなかったのに、早々と中止を決め、政治団体の動きを勢いづかせた。
●異口同音に
銀座シネパトス(東京)には、三月下旬に三回、街宣車が押しかけ、「上映を中止せよ」とスピーカーでがなった。愛知県警によると、五月の上映予定を延期した名古屋シネマテーク(名古屋市千種区)には、政治団体の関係者が押しかけ「東京や大阪では中止になったのに、名古屋だけ上映されたらわれわれの顔が立たない」などと話した。
それでも映画館側は上映したいとの空気があった。「現場は上映したいんだけど、上が言っているから」。事情を知る映画関係者は、上映中止を決めた劇場側から異口同音にこう聞かされた。
その背景には「面倒な争い事に巻き込まれたくないという映画館の運営会社上部の過剰な保身意識がある」とにらむ。
そもそもこの騒ぎは、二月十二日、文化庁の映画担当者が制作者側に「ある国会議員が見たがっている」と問い合わせたのが発端だった。
関係者によると、文化庁は国会議員が自民党の稲田朋美衆院議員であることを明かし、試写会を提案。配給会社側が特定議員向けではなく、一般国会議員にも見せることを提案して合意し、配給側が費用を負担しないことで決まったという。
文化庁側は「共催」ではなく「協力・文化庁」とするよう要求。配給会社が妥協して試写会を全議員に案内すると「全議員に案内を送るとは聞いていない」と、文化庁は突然、難色を示し「試写会の人件費などは払えない」と伝える。
最終的に、文化庁側と対立するのは得策ではないと配給会社側が折れ、費用は配給側が持つことで三月十二日、試写会が開かれた。
●圧力は否定
騒ぎにつながる試写会のきっかけをつくった稲田議員は、ここに来て「上映中止は残念」と圧力否定を強調する言動が目立ってきた。当初、国会議員向け試写会参加を呼びかける文章は「『百人斬り』の新聞記事や真偽不明の南京事件の写真を使って、反日映画になっているようです」と指摘。
試写会後も「イデオロギー的なメッセージを強く感じた」と述べたが、五館が上映中止を決めると「残念だ。映画は最後まで引き込まれる力作で、上映をやめさせようと考えたことはない」と、主張の二ュアンスが変化する。
●複数名乗リ
配給元のアルゴ・ピクチャーズによると、五月以降上映を予定していた全国十三の映画館に加え、今回の騒ぎで逆に複数の映画館から上映希望が寄せられているという。
予定通り五月の上映を決めた大阪の「第七芸術劇場」の松村厚支配人(46)は「普通の映画と同じようにお客さんに見せたいだけ。『靖国』は首相参拝に賛成する(視点の)余地も残っているし、八月十五日に靖国神社で何か起きているか見てもらって判断すればいい」と話す。
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日本新聞協会
「看過できぬ」日本新聞協会編集委員会の斎藤勉代表幹事は三日、「表現・言論の自由を擁護する立場から看過できない」とする談話を発表した。
談話は「上映中止という事態が生じたことは残念でならない。映画の内容をどう評価するかは個々人の問題だが、その評価、判断の機会が奪われてしまうことは看過できない。表現活動が萎縮する社会にしてはならないと考える」としている。
「猛省うながす」
日本ペンクラブ
日本ペンクラブ(阿刀田高会長)は三日、「自由な表現の場の狭まりを深く憂慮し、関係者の猛省をうながす」とする緊急声明を発表した。
声明は、「靖国」上映問題のほか、グランドプリンスホテル新高輪(東京)が日教組の教育研究全国集会開催を拒否した問題などを挙げ、「自主的自発的に場の提供を渋る雰囲気がまん延してきている傾向を看過できない」と批判。映画館やホテルに対しては「言論公共空間を確保する責務を負う者であるとの認識をもつことを強く求める」としている。
(「京都」20080404)
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主張 「靖国」上映中止
表現の自由の侵害を許すな
靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」にたいして、自民党の国会議員が攻撃し、右翼団体の妨害もあるなかで、東京や大阪で映画館が上映中止を決めました。憲法の保障する「表現の自由」を侵害し、民主主義の根幹を脅かす重大問題です。
「靖国」派議員の介入
映画「靖国」は、日本在住の中国人監督が八月十五日の靖国神社の様子などを取材したドキュメンタリーです。小泉元首相や軍服姿の人々の参拝風景、合祀(ごうし)に反対する遺族、神社に納める「靖国刀」の刀匠の話などを紹介しています。
作品は四月十二日から公開予定でした。ところが、一部メディアが昨年末以降、この作品を「反日映画」とするキャンペーンを始めました。それをうけて自民党の国会議員が文化庁に要求し、三月中旬に国会議員だけを対象にする試写会を開催させました。きわめて異例の事態です。
さらに、自民党議員は三月下旬以降、この映画が政府の出資する芸術文化振興基金から七百五十万円の製作助成を受けたことを問題にし、助成金の返還を求める質問をくり返しています。これは自由な映画活動への不当な介入にほかなりません。
この作品への非難の口火を切った稲田朋美衆院議員は、「靖国」派の推進部隊である「日本会議国会議員懇談会」事務局次長をつとめ、南京事件や沖縄戦での「集団自決」への軍の関与を否定する議論を唱えてきた人物です。今回の事態は過去の日本の侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力による動きの一環です。
自民党議員は、この映画を「反靖国プロパガンダ」ときめつけ、「政治性がある」から助成は不当だと主張しています。ある議員は、国会質問で、小泉元首相の靖国参拝違憲訴訟の原告が出演しているから「政治的宣伝」だとまでのべています。
しかし、ドキュメンタリー映画が社会問題を扱うのは当然であり、そこに政府・与党に批判的な人物が登場することもありうることです。稲田氏らの主張は、映画が「靖国」問題をとりあげることを敵視し、自分たちの意に沿わない作品には助成するなというに等しいものです。
自民党議員は、この映画が中国の映画会社との共同製作であることも問題視しています。しかし、芸術文化振興基金の規定は一定の条件のもとに合作映画への助成も認めています。文化庁も「助成手続きは適正」と説明しており、自民党議員の主張は難癖でしかありません。
稲田氏らは「表現の自由」を侵すつもりはないと言っていますが、介入の意図をごまかす言い訳です。
自民党議員の圧力に屈し、文化庁が劇場公開前の試写会開催や詳細な資料提供の便宜をはかったことも重大です。それが「靖国」派勢力を増長させ、事態を悪化させたのです。文化庁の対応は、適正に助成をうけた映画の普及を阻害し、国民から鑑賞の機会を奪うのに手を貸す行為といわざるをえません。
不当な圧力に屈しない
すでに日本映画監督協会や映演労連(映画演劇労働組合連合会)をはじめ、多くの映画人が表現の自由を守ろうと声をあげています。
映画館側には、映画芸術の一翼を担うものとして、不当な圧力や妨害に屈せず、表現の自由を守りぬく責任を果たすことを強く望みます。
日本共産党は、綱領に「文化活動の自由をまもる」ことを明記する党として、映画の表現や公開の自由を守るために力をつくします。
(「赤旗」20080403)
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◎「不当な圧力や妨害に屈せず、表現の自由を守りぬく責任を果たすことを強く望」むと。