学習通信080417
◎社会生活が靖国#hの考え方でしばられる……

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我が国と郷土を愛し
「君が代」歌えるように

学習指導要領
「修正」のウラ

 小中学校の改定学習指導要領が二十八日、官報告示されました。約三年の改定作業を経てまとめられましたが、官報に告示する段階で、異例の重大な「修正」が行われました。その中身は……。

 二月に公表された改定案からの「修正」は百八十一ヵ所。その大半は字句の修正などですが、総則に「我が国と郷土を愛し」という文言を挿入。「君が代」を「歌えるよう指導する」(小学・音楽)と明記するなど、改悪教育基本法が教育の目標に掲げた「愛国心」の育成を露骨に押しつけています。

 教科では「神話」を新たに盛り込み(小学・国語)、「国際貢献について考えさせる」(中学・社会)と自衛隊の海外活動を意味する文言をつけ加えています。

 文部科学省は一ヵ月間の意見公募で、五千六百七十九件が寄せられたとしています。異例の「修正」には保守系の政治家などの圧力や不満があったと報じられています。

実践ではね返そう

 教育評論家・尾木直樹さんの話

 「修正」のやり方が大問題です。中教審でまとめようとしたら、一回や二回の会議ではすまない内容です。

 「修正」するとしても、国民の合意を得るための「説明責任」が問われます。告示して終わりでは国家主義そのものです。

 学習指導要領は、具体的な目標のようなものを大綱的に示したものというのが、国際的な常識です。しかし、今回の「修正」は、「君が代」を「歌えるよう指導する」と、指導の到達レベルを明示し指導方法まで束縛しています。

 国語で伝統文化に新たに「神話」を盛り込みました。「神話」と限定することは、「神話」を教材として指定することを意味します。これらの「修正」は、背景に政治的な力が働いたこともうかがわせます。

 こうした押し付けでは現場の創造力が育ちませんし、現場の責任感を引き出すこともできません。このような異常なやり方で、力強い教育実践は行えません。現場の子どもと親、学校と市民が結びついた、具体的な教育実践ではね返していくことが大事です。


「靖国」派が圧力

解説
 今回の「修正」の背後には、安倍政権の崩壊で打撃をうけた「靖国」派の「巻き返し」があります。

 「靖国」派の教育団体「日本教育再生機構」は学習指導要領改定案にたいし、「改正された教育基本法・学校教育法の理念や目標がほとんど反映されていない」と不満をあらわにした「談話」を発表し、文科省への圧力をつよめました。自民、民主などの国会議員で構成される「日本会議国会議員懇談会」、先ごろ政治活動に「復帰」した安倍前首相などの動きもあります。

 「修正」によって各学校は「これら(教育基本法と学校教育法)に掲げる目標(愛国心などの「徳目」)を達成するよう教育を行う」とされました。国家権力の掲げる目標どおりに子どもを鋳型にはめることが学校や教員の任務だという、改悪教育基本法の狙いが前面にでたもので、憲法の原則との矛盾を深めるものです。

 「君が代」を「歌える」ことを目標にしたことは象徴的です。「君が代」は侵略戦争のシンボルだっただけに、国民のあいだに疑問や拒否の感情があります。それを無理やり歌わせることは、憲法が保障する「思想、良心の自由」に反します。国旗国歌法案の審議で政府は「口をこじ開けてまで歌わす、は全く許されない」と明言しており、「修正」を利用しての「君が代」強制は許されません。

 もともと新学習指導要領は、学習内容のつめこみなどによる教育格差の拡大、教育方法への干渉など子どもの学力に悪影響を及ぼすものでした。今回の「修正」でさらに問題が加わりました。徹底した批判のうえに、その撤回を求めていく必要があります。
(「赤旗」080330)

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「靖国」上映中止
メディア、懸念相次ぐ
「表現の自由にとって深刻」

 自民党国会議員の圧力を発端に、ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が一時、上映中止に追い込まれた問題で、言論と表現の自由を擁護する論調が大手メディアにも広がっています。

「靖国」派に反撃

 上映中止の動きに対し、日本新聞協会が「看過できない」との談話を出し、日本民間放送連盟も「強い懸念」を表明しました。全国紙五紙も社説を出し、「言論や表現の自由にとって極めて深刻」(「朝日」二日付)などと書きました。テレビでも「サンデープロジェクト」、「ニュース23」などの報道番組が特集しました。公開前の試写を文化庁を通じて要求し、圧力をかけた自民党の稲田朋美衆院議員(「靖国」派の議員連盟・伝統と創造の会会長)を名指しして、「世の中は、この人たちが弾圧してつぶしたと思っている」(田原総一朗氏)などと指摘しました。

 政府も、福田康夫首相らが上映中止は遺憾だとのべ、稲田氏は「私が批判の矢面に立たされている」「映画の『公開』について問題にする意思は全くなかった」(「産経」九日付)などと弁解に回っています。

 稲田氏は、旧日本軍隊長らが大江健三郎氏などを訴えた「沖縄集団自決」裁判や、南京事件の「百人斬(ぎ)り」報道名誉棄損裁判の原告側弁護土。日本会議国会議員懇談会の事務局次長も務め、先鋭的な「靖国」派、南京虐殺否定論者として活動してきました。

 今回の「靖国」上映中止問題は、同氏が今年二月、映画「靖国」を「『百人斬り』の新聞記事や真偽不明の南京事件の写真を使って、反日映画になっているよう」(「伝統と創造の会」会長通信)だと行動に出たのが発端でした。自民党の有村治子、水落敏栄の両参院議員も国会質問で圧力をかけました。

予想外の広がり

 これまで南京事件に関する映画などは、虐殺を否定する勢力の執ような攻撃を受けてきました。

 一九九八年には、映画「南京1937」が、横浜市で右翼にスクリーンを切られ、上映中止に。市民の自主上映も妨害されました。二〇〇四年には、本宮ひろ志氏の漫画「国が燃える」(集英社)が、「誇りある日本をつくる会」などの抗議で南京事件部分の修正・削除をのまされ、連載中断に追い込まれました。

 しかし、どちらの事件もメディアの反応は鈍く、抗議の声は大きくは広がりませんでした。

 今回の上映中止に抗議声明を出した映画演劇労働組合連合会の高橋邦夫委員長は「これだけ反撃が広がったのは、正直いって驚きです。『靖国』派にとっても予想外だったのではないか」といいます。

 沖縄の「集団自決」で軍の関与を削除させた昨年の教科書検定問題でも、沖縄県民の怒りが広がり、文部科学省は追い込まれました。

 高橋さんは「これまでの、表現の自由への圧力に抗議が広がらない社会の雰囲気が映画館を委縮させてきた。流れを変え、さらなる上映つぶしの攻撃を許さないためにも、表現の自由擁護の声をいっそう広げるのが重要」と話しています。(西沢亨子)
(「赤旗」080416)

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社会生活が靖国#hの考え方でしばられる

 靖国#hの憲法案が出てきた

 最後に検討したいのは、憲法九条の範囲を超える問題です。
 さきほど、靖国#hが、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を合言葉に、戦前・戦時の日本こそ「美しい日本」だといって、日本の社会や「国柄」をそこへひきもどそうとしていることについて、お話ししました。

 靖国#hというのは、現代の日本でも世界でも通用しない独特の価値観を信条としている、たいへん特殊な集団なのですが、その集団が、自分たちの独特な価値観を示す新しい文書を、最近、つくったようです。例の「日本会議」が、靖国#hの憲法改定案をつくったのです。発表は、「日本会議」ではなく、「新憲法制定促進委員会準備会」という名前の超党派の国会議員グループの名前で、きょう五月三日におこなわれることになっていると聞きました(※)。私は、検討途中の「大綱案」を見る機会があったのですが、そこには、靖国#hの独特の価値観がよく出ていましたので、中間段階のものではありますが、とくに注目される点を紹介しておきましょう。

──憲法の「前文」で、「日本国の歴史や、日本国民が大切に守り伝えてきた伝統的な価値観など、日本国の特性すなわち国柄」を明らかにする(例の「国体」論)。

──憲法に、日本国民が「時代を超えて国民統合の象徴であり続けてきた天皇と共に、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」歴史を書き込む。

──新憲法がうけつぐべき歴史的達成の筆頭に「近代的立憲主義を確立した大日本帝国憲法」を明記する(現憲法が、前文で「排除する」ことを規定した明治憲法の復権です)。

──「天皇」条項では、天皇が「国家元首」であることを明記し、それにふさわしい「地位と権能」を規定する(天皇は「国政に関する権能をもたない」という現憲法の規定を切り捨てることです)。

──国民が「国防の責務」を負うことを明確にする。

──「人権制約原理」を明確にし、「国または公共の安全」、「公の秩序」などの立場で基本的人権を制限できることをはっきりさせる。

──「わが国古来の美風としての家族の価値」を重視し、これを国家による保護・支援の対象とする。

──「公教育に対する国家の責務」を明記する(「責務」というのは、教育にたいする国家の統制の「権利」のことです)。

──国会を「国権の最高機関」と位置づけている現憲法の規定を見直す。

──参議院の権限をけずり、衆議院の優越をいま以上に大きいものとする。

 説明は略しますが、こういう条項がずらっと並んでいて、いよいよ靖国#hの正体見たり、という感があります。

※靖国#hの憲法改定案。最終的に仕上げられた靖国#hの「新憲法大綱案」は、予報されていたとおり、五月三日、「新憲法制定促進委員金準備会」の名前で公表された。この「会」の座長は、「日本会議国会議員懇談会」(「日本会議」議連)副会長の古屋圭司衆院議員で、古屋氏によると、この「会」そのものが「日本会議」議連のもとにつくられたものとのこと。「準備会」には、自民党だけでなく民主党や国民新党、無所属の二十五人の議員が参加している。「大綱(案)」には、不破が講演前に見た中間案から、さらに若干の修正が加えられていたが、基本はそのまま引き継がれていた(講演で紹介した要点で変更があったのは、国会についての「国権の最高機関」規定を見直すという項目が消えた程度)。

 こういう靖国#h独自の要求が、自民党などの憲法案にどれだけ書き込まれてくるかは、これからの問題ですが、私がここで取り上げたいのは、憲法案への書き込みをどうするかに先立って、いまの政治のなかで、日本の教育や社会生活を、靖国#hの独特の考え方、価値観でしばってゆこうとする動きが、すでに現に始まっている、ということです。
(不破哲三「憲法対決の全体像をつかもう」 前衛 07年七月号 日本共産党中央委員会 p42-43)

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◎「靖国#hというのは、現代の日本でも世界でも通用しない独特の価値観を信条としている、たいへん特殊な集団」と。