学習通信080702
◎やはり同根……

■━━━━━

「攻め」の論戦で発揮された党議員団の三つの値打ち
党国会議員団総会での志位委員長のあいさつ

 第百六十九国会閉会にあたって二十日に開かれた日本共産党国会議員団総会での志位和夫委員長のあいさつは次の通りです。

 半年間の国会での奮闘、ほんとうにご苦労さまでした。国会閉会にあたって、ごあいさつをもうしあげます。

 国会開会の日の議員団総会で、私たちは、福田内閣が政治の行き詰まりに対して何一つ打開の旗印がしめせないもとで、「国民の切実な要求から出発しながら、……どの分野でも抜本的な政策転換を求める論戦を攻勢的におこなう。『攻め』の論戦を、この国会では心がけたい」ということを確認しました。

 半年間のたたかいを振り返りますと、この国会は、日本共産党ならではの「攻め」の論戦を、院外の国民運動としっかり連携しながら、立派にやり抜き、たいへん豊かな成果をあげる国会となったということがいえると思います。(「よし」の声、拍手)

国民と響き合った「攻め」の論戦
 私は、「攻め」の論戦のなかで発揮された日本共産党議員団の値打ちとして、三つの点を強調したいと思います。

 第一に、今度の国会ほど、わが党議員団の論戦に、国民から多くの共感・激励が寄せられた国会はなかったということです。

 わが党が今度の国会でとりあげた問題は、派遣労働、後期高齢者医療制度、道路特定財源、食料と農業、米軍基地と「思いやり」予算、税制問題、地球環境問題など、どれも国政の根本問題でしたが、どの問題でもこんなに国民との響き合いが実感された国会は、なかったと思います。それは党本部、「しんぶん赤旗」の編集局、国会の党事務所などに寄せられた電話やメールの空前の多さからも実感されるのではないでしょうか。

 この国民との響き合いが、メディアにも伝わり、少なくないメディアがわが党の国会論戦に注目を寄せました。派遣問題を取り上げたわが党の国会質問が、インターネットで反響を呼び、それにメディアが注目を寄せるという状況も生まれました。ある新聞は、国会論戦の「三賞」を発表し、「後期高齢者医療制度の問題点を粘り強く訴えてきた共産党を代表して、小池晃政策委員長に(敢闘賞を)贈りたい」と書きました(拍手、笑い)。(小池氏「みんなの努力です」)。派遣問題にしても、後期高齢者医療制度にしても、議員団とそれをささえるスタッフみんなの努力の結果だと思います。

 こうした国民との深いところでの響き合いというのは、自民党政治がいよいよ行き詰まるなかで、わが党の綱領に明記された民主的な改革が、広い国民の痛切な願いと接近し、一致し、文字通り国民的課題になっていることを示すものにほかなりません。

国民運動と結びついて現実政治を前に動かす
 第二に、わが党の国会論戦が、国民運動と結びついて、現実の政治を一歩二歩と前に動かしたことも、特筆すべきことだと思います。

 派遣労働の問題については、わが党の論戦と国民運動との連携によって、労働法制の規制緩和から規制強化への潮目の変化が生まれました。一連の大手製造業のメーカーが、派遣解消の方針を打ち出しました。国会でも、野党四党がそれぞれ労働者派遣法の改正案を提起しています。舛添厚生労働大臣は、日雇い派遣の原則禁止を表明し、与党として派遣法改正案をつぎの臨時国会に提出すると伝えられています。

 もちろん、わが党が主張しているように労働者派遣法を“派遣労働者保護法”と呼べるものに抜本改正ができるかどうか、非正規雇用から正社員への本格的な流れをつくれるかどうかは、今後のたたかいにかかっていますが、ともかくもこの問題で事態を一歩前に動かしたということは、確認できるのではないかと思います。

 それから後期高齢者医療制度の問題については、わが党は、高齢者差別という問題の本質を突く論戦に一貫してとりくみ、これを国政の大争点に押し上げました。この問題をさかのぼりますと、二〇〇〇年十一月の健保法改悪のさいの付帯決議で、高齢者医療を別建ての制度にし、診療報酬にも定額制を持ち込むなど、後期高齢者医療制度の原型となる方向が打ち出されたわけですが、この付帯決議にきっぱり反対をつらぬいたのは日本共産党だけでした。

 二〇〇六年に法案が出されたときにも、高齢者差別という事の本質をずばり突く論陣を張ったのは、日本共産党だけでした。このことは当時の川崎二郎厚生労働大臣が、「本質的な追及をやったのは、共産党だけだった」と、相手が認めているわけですから、間違いのないことだと思います。

 こうしたわが党の一貫したたたかいが、野党四党での廃止法案の提起につながり、この法案の参議院での可決につながった。この法案は継続とされましたけれども、臨時国会ではぜひとも可決・成立させ、希代の高齢者差別法を撤廃させるためにがんばりぬきたいと思います。(拍手)

 さらに道路特定財源の問題が、この国会の一大争点になりましたが、わが党は問題の核心が、際限なく高速道路をつくり続けることを許すのかどうかにあることを明らかにし、論戦をリードしました。政府は、ともかくも道路特定財源を一般財源化すると約束せざるをえなくなりました。そして、日本列島各所にかける予定だった六つの海峡横断道路については、わが党がおこなった衆参の連携した追及で、調査の中止にまで追い込んだ。これはわが党ならではの論戦による重要な成果であります。

 いま一つのべておきたいのは、医師不足の問題です。これは、つい最近、政府から新しい動きが出てきました。これまで政府は一貫して、「医師は不足しているのでなく偏在しているだけだ」ということを言い張ってきたわけですが、ついに医師不足という現実を認め、医師数を増やす方向に転換することを表明するにいたりました。これはわが党が、この間の一連の国会論戦のなかで、救急車の患者さんの搬送先がみつからない、地域から産科や小児科の病院がなくなっていく、医師にあまりにも過酷な勤務が押し付けられているなどの現場の深刻な実態を突きつけて、転換を迫ってきた。ここでも国民運動と共同しての日本共産党の論戦が、政府を動かし、方針転換にまで持ってきた。これも重要な成果として確認しておきたいと思います。

 いくつかのべましたが、もちろんどの問題も、本格的な解決のためには今後のたたかいが大切になってきますが、自民党政治が行き詰まるもとで相手も打開策が示せない、そのもとで、ほんとうに国民の立場にたった打開策を示し、そして国民運動との共同で政治を一歩二歩と前に動かしてきた議員団の奮闘は、大いにわれわれの確信にするとともに、全党の確信にもしていきたいと思います。(拍手)──以下略──
(「赤旗」20080621)

■━━━━━

風知草
秋葉原と国会ハケン攻防
専門編集委員・山田孝男

 関根秀一郎(43)は派遣労働者支援組織「派遣ユニオン」の書記長である。秋葉原通り魔事件の報道で関根の注意を引いた逸話があった。容疑者が凶行の3日前、派遣先の職場のロッカーの中にあるべき自分のツナギが見当たらないことに逆上したという、あれだ。

 数年前、新宿にあるユニオンの事務所を訪ねてきた男がいた。派遣先でトラブルを起こして解雇され、相談に来た。30代に見えた。ある朝、出勤すると自分のロッカーの扉が開かない。接着剤を使ったイタズラだ。男はロッカーを揺さぶって大暴れし、110番までした。それでクビになった−−。

 「相談で一番多いのは解雇に対する不安です。犯罪の原因がすべて雇用だとは言いませんが、仕事に追われていても、生きていて楽しい瞬間があるとか、来年には旅行に行けるというような、ささやかでも希望をもてれば、ああいう犯罪は抑制されると思うんです」

 東京出身の関根は岩手大を中退して労働専門誌記者になった。学生運動の経験はない。政党とも無縁。91年、未組織労働者の支援組織「東京ユニオン」専従職員に転じ、05年、「派遣ユニオン」をつくった。

 90年代末以降、経済再生の号令の下で労働者保護法制が崩れ、コスト削減の便法として非正規雇用が増えた。不安定な期限付き雇用の中でもピンハネされやすく、危険業務にさらされがちな究極が日雇いだ。

 関根は自ら日雇い派遣大手のグッドウィル、フルキャストに登録して体験し、「粉じんの舞う解体現場で正社員には防じんマスクが支給され、派遣は自腹でコンビニのマスク」などと実態を暴いた。

 関根からの聞き取りを踏まえた共産党委員長・志位和夫の国会質問が評判になったのが今年2月。国会終盤の今月初め、日雇い派遣禁止の法改正を探っていた民主、共産、社民、国民新の野党共闘が空中分解した。

 民主党内がまとまらなかった。この党は積極規制派と、強力な慎重派に分裂している。慎重派はグッドウィルと関連企業など派遣会社28社の正社員4万人で構成するJSGU(人材サービス・ゼネラルユニオン)と結びついている。日雇い禁止は派遣会社の経営を直撃する。JSGUは産業別労働組合「UIゼンセン同盟」の一員で民主党の支持団体なのだ。

 野党共闘は崩れたが、関根の調査や志位の追及は世論を揺さぶった。2月、政府の労働政策審議会に、労働者派遣制度の在り方を見直す研究会が設置された。5月、人材派遣業協会が日雇いの一部自粛を表明。

 6月3日、警視庁が、ピンハネを生む二重派遣のほう助容疑でグッドウィルの課長を逮捕。6日の社会保障国民会議で首相が「派遣労働者を守る制度の空洞化は絶対に避けなければ」と発言。8日の秋葉原事件をはさみ、13日の記者会見で厚生労働相が日雇い派遣の原則禁止と秋の法改正を明言した。

 日雇いは弱い立場の象徴であり、日雇い派遣自体を否定すれば困る人が多いという批判もある。憎むべきは非道、無情の雇用をおかしいと思わない乾いた世の中だ。

 先週18日、新潮文庫は、奴隷労働を描いた小林多喜二「蟹工船」の105刷を決めた。例年5000部出る本が今年は数万と説明してきたが、今年の最新集計は35万7000部に達した。このブームと雇用不安をめぐるさまざまな逸話は、やはり同根だろう。(敬称略)
(「毎日」20080623)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
◎「国民との深いところでの響き合いというのは、自民党政治がいよいよ行き詰まるなかで、わが党の綱領に明記された民主的な改革が、広い国民の痛切な願いと接近し、一致し、文字通り国民的課題になっていることを示すもの」と。