学習通信080715
◎「蟹工船」が読まれる情勢

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「蟹工船」追い風
共産党員9000人増

 共産党の第6回中央委員会総会が11日、党本部で始まり、志位委員長は、新規党員が昨年9月の第5回総会時から約9000人増えたことを明らかにした。

 同党によると、党員数は1990年の50万人をピークに下落に転じ、2000年以降は38〜40万人で横ばいで低迷が続いていた。しかし、昨年9月の第5回総会以降、毎月連続して1000人規模で増え、計9000人増加したという。ただ、党員数は党大会ごとに公表されるため、今回は発表されていない。

 志位氏は幹部会報告で「(小林多喜二の)『蟹工船』が若者を中心にブームとなり、マルクスに関心が集まり、テレビ局は『資本主義は限界か』という企画を立てる。共産党がこれまで体験したことのない新しい状況だ」と指摘。さらに年内に2万人超の新規党員を獲得する目標を掲げた。

 一方、志位氏は、来年1月に党大会を3年ぶりに開催し、衆院解散・総選挙に向けた態勢作りを急ぐ考えを明らかにした。

 そのうえで、次期衆院選に向けた構えとして、政府・与党との対決姿勢とともに、民主党への批判を強める方針を示した。小選挙区比例代表並立制では、自民、民主両党との違いを示さなければ、埋没しかねないとの危機感からだ。志位氏は「民主党は自公政権との対決戦術を前面に押し出し、政権交代すれば政治が変わるということを唯一の売りにしているが、自民党と同質同類だ。民主党批判を進めることが大切だ」と強調した。

 共産党は第5回総会で、次期衆院選では比例選に重点を置くため、全300小選拳区で候補擁立を目指す方針を転換し、約140小選挙区に絞り込む戦略を打ち出した。このため、民主党から「政権交代という一点で共闘できるのではないか」(幹部)と期待する声が出ていた。
(「読売」20080712)

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《潮流》

S君(二四)が父に若いころの話を聞いたのは、『蟹工船』を読んだことがきっかけでした。定時制高校に通いながら、ある乳業メーカーの工場に就職した父。やがて同僚に誘われ、組合活動に加わるようになります

▼転機は十九歳のとき。労働強化のさなか、作業員の服がベルトコンベヤーに巻き込まれる事故に。「止めろ!」と叫んだ父の声は無視され、機械は腹部の肉をえぐってやっと止まりました。工場長らと掛け合う父たち組合活動家を会社は懲戒解雇。撤回を求めた裁判闘争は、和解まで六年続きました

▼人間を人間と思わない、『蟹工船』と同じような現場で、自分と同じ年ごろだった父が仲間のために立ち上がったことに、S君は胸が熱くなります。父は、多喜二が属した日本共産党の一員でした

▼父のことを書いた感想文は、読書エッセーコンテストで入賞しました。S君の姿は、NHKの特集で「他人のことを自分のことのように考える『蟹工船』の労働者に心を動かされ、自分の生き方を見つめ直した」と紹介されました

▼S君は、テレビの構成作家をめざしながら、生活保護に関係した職場でアルバイトをしています。生存権すら脅かす現代の日本。多喜二や父のように、自分も他人の痛みに心を寄せ、力を合わせて足を踏み出せる人間でありたいと思っています

▼発表から七十九年、異例の売れ行きをみせる『蟹工船』。そうしたなか、一般紙は党員が九千人増えたと伝えます。日本共産党は今日、創立八十六周年を迎えます。
(「赤旗」20080715)

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主張

日本共産党創立86周年
綱領と情勢が共鳴するなかで

 「私たちの気持ちを一番代弁してくれるのが共産党。私は与党議員ですが、福祉の充実、弱者救済、戦争反対の三つは、どこまでも共産党と共闘できます」―。日本共産党の市田忠義書記局長が先日、奈良県吉野郡を訪れたさい、行政関係者や保守系議員と懇談した席で出たことばです。

 日本共産党への新たな注目と期待が広がっていることを示す一例です。日本共産党が一九二二年に創立されて、きょう七月十五日で八十六周年。日本共産党の綱領路線と情勢が響きあう、新しい劇的な進展が生まれているのです。

苦難打開を立党の精神に
 自公政治による弱肉強食の「新自由主義」路線の下で国民の生活苦がかつてなく深刻になり、「日本の社会はこれでいいのか」と問い直す国民世論が広がっています。これに応える日本共産党への期待や共感が広がっている実例は、枚挙にいとまがないほどです。

 日本共産党は、「ルールなき資本主義」といわれる世界でも異常な大企業中心主義をただし、「ルールある経済社会」をめざしてきました。貧困と格差拡大をもたらしている雇用の問題でも、国民の生活を下支えするどころか脅かしている社会保障の問題でも、食料・農業や地球環境の問題でも、大企業の横暴を野放しにしておいては問題が解決しないとの訴えに、党派を超え、共感が広がっています。

 戦争から平和へ、軍事同盟から平和の共同体へと世界が大きく変わるなか、いつまでも「アメリカいいなり」の政治をつづけていいのかという訴えも、海外派兵の問題や米軍再編などの問題を通じて、国民の共感を広げています。

 日本共産党は、資本主義の枠内での民主的改革とともに、将来的に社会主義・共産主義を展望している政党です。その点でも、心ある方々から「新しい社会主義」への期待が語られ、マスメディアでも「資本主義の限界」が話題になるなど、これまで経験したことがない情勢が生まれています。

 こうした変化は決して自然に起こったものではなく、日本共産党の党員や支持者のみなさんの草の根の活動が切り開いてきたものです。党の創立八十六周年を、そうした希望ある変化の中で迎えたことは、感慨深いものがあります。

 日本共産党は、野蛮な天皇制政府のもとで、主権在民と侵略戦争反対の旗を掲げて創立されました。以来今日まで、どんな迫害にも屈せず、「国民こそ主人公」の立場に立ち、国民の苦難軽減のため献身するという、立党の精神を貫いてきました。この立党の精神にもとづく行動が、いまほど国民に待ち望まれているときはありません。

政治の中身変えるには
 日本の政治は昨年の参院選挙で自公が大敗北し、自公に代わる新しい政治の中身を国民が探求する、新しい時代が始まっています。日本共産党の綱領路線と情勢との響きあいが生まれてきたのも、長年にわたった自民党の政治が限界に達し、国民がその打開の道を真剣に求めていることを示すものです。

 日本の政治にとって政治の中身の変革を訴えていくことがますます重要です。私たちは「国民の苦難あるところ、日本共産党あり」の立党の精神を発揮し、党の綱領と日本の前途を語り、新しい政治を切り開くために力をつくします。
(「赤旗」20080715)

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◎S君の姿は、NHKの特集で「他人のことを自分のことのように考える『蟹工船』の労働者に心を動かされ、自分の生き方を見つめ直した」と紹介……。