学習通信080808
◎「大企業が栄えれば、いずれ家計におよぶ」といいつづけ……

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戦後最長景気を 終わる

輸出頼み限界、
新戦略描け

 二〇〇二年二月に始まった戦後最長の景気回復局面が終わり、昨年末から今年初めにかけて景気後退局面に転じていた可能性が大きくなった。米経済の減速や資源・食料価格の高騰といった外的ショックが主因だ。設備や雇用の過剰感がないだけに、今度は浅くて短い景気後退で済むとの見方も多い。ただ輸出頼みの景気回復には限界があり、経済成長戦略の再構築を迫られる。

回復の勢い弱く

 ホンダ、ソニー、ヤマハ発動機……。輸出競争力が強いといわれた有力企業が、今期の利益見通しを相次ぎ下方修正している。日本リサーチ総合研究所の六月調査では、消費者の生活不安度指数が一五七となり、過去最悪だった〇三年四月の一五九に迫った。

 神奈川県豆腐油揚商工祖合が最後の総代会を開いたのは五月。大豆や灯油の値上がりで豆腐店が次々と廃業し、法律で定める二百人以上の組合員数を確保できない。輸出、生産、個人消費を含む最近の経済指標が軒並み悪化し、政府も景気後退の可能性を認めざるを得なくなった。

 約七十ヵ月に及んだとみられる今回の景気回復局面は戦後十三回の中でも異例の展開を見せた。約六年間の実質経済成長率は年率平均二・二%。大型景気の代表である「いざなぎ景気」の一一・五%や「バブル(平成)景気」の五・四%よりもはるかに低い成長だ。

 しかも輸出の貢献が圧倒的に大きい。期間中の輸出の伸びは年率平均一一・四%増で、設備投資の四・四%増や個人消費の一・五%増を大幅に上回る。〇八年度の経済財政白書によると、実質成長率への輸出の寄与は約六割。戦後の景気回復局面では最高だった。

 思い切ったリストラで一九九〇年代以降の「失われた十年」をくぐり抜けた企業は、経済のグローバル化の恩恵を享受した。米国や中国などへの輸出拡大が生産や収益を押し上げ、設備、雇用、債務の「三つの過剰」の処理を促した。

 割を食ったのは家計である。厳しい国際競争にさらされる企業は業績が好転しても、その果実を容易には賃金に還元できなかった。息は長いが勢いが弱く、実感に乏しい今回の景気回復局面は、多くの意味でバランスを欠いていたといえる。

 その弱点をついたのが米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サプブライムローン)問題と、世界的な資源高・食料高だ。輸出を柱とする企業部門の力に頼った日本の景気回復は、海外発のショックにもろかった。

構造間題はらむ

 戦後の景気後退局面の平均期間は約十六ヵ月。エコノミストの間では「三つの過剰の処理が終わっているので、深くて長い景気後退は避けられる」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)との見方が大勢を占める。

 だが今回の景気回復局面では内需が盛り上がりを欠いただけに、日本経済を自力で巻き戻すバネが見当たらない。与謝野馨経済財政担当相は「海外が回復してくれれば日本経済は回復する。単純な方程式だ」というが、外需頼みの経済運営には危うさが残る。

 福田康夫首相は景気情勢の悪化を踏まえ、総合的な経済対策の策定を指示した。政府・与党はその一部を盛り込んだ○八年度補正予算案を次期臨時国会に提出することも視野に入れる。住宅ローン減税の延長・拡充や高速道路料金の引き下げ、中小企業の信用保証拡大などが浮上している。

 景気後退の起点のひとつとなった資源高・食料高は一過性ではなく構造的な要因をはらんでいる。公共事業で需要を追加したり、補助金で関係業界の苦境を救ったりするような対症療法では抜本的な解決にならない。法人税率の引き下げや一段の規制緩和なども念頭に置き、確固たる成長基盤を築く戦略を練り直す必要がある。(編集委員 小竹洋之)
(「日経」20080808)

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マクロ経済政策―「大企業から家計へ軸足を移せ」の主張が広く共鳴しあう

 経済問題の最後に、マクロの経済政策についてのべます。内閣府が発表した六月の「月例経済報告」は、景気は「足踏み状態」であり「一部に弱い動きがある」と、事実上、景気後退が始まったことを認めるものとなりました。景気後退への暗転は、「外需頼み、内需ないがしろ」という日本経済の脆弱(ぜいじゃく)な体質と深くかかわっています。この間、「戦後最長の経済成長」が続いたといわれますが、それは輸出頼みの「成長」であり、「繁栄」したのは一握りの輸出大企業でした。内需とくに家計部門は低迷がつづき、国民の暮らしは苦しくなる一方でした。その結果、アメリカ経済の失速とともに、日本経済も後退局面に入りました。

 こうした「外需頼み」の経済は、「構造改革」路線がつくったものにほかなりません。この間、自公政権は、「強いものをより強くすれば日本経済も強くなる」といって、大企業には、労働法制などの規制緩和、法人税減税など、いたれりつくせりの応援をしながら、国民には賃下げ、庶民増税、社会保障切り捨てなど、容赦なく犠牲をおしつけてきました。「大企業が栄えれば、いずれ家計におよぶ」といいつづけてきたわけですが、家計は少しも良くならないまま、景気後退へと暗転しました。すなわち「内需と家計を犠牲にして大企業の競争力を高める」という「構造改革」路線がゆきづまったのが、今日の姿にほかなりません。

 日本経済の健全な発展のためには、「外需頼み」から内需主導に、そして大企業から家計・国民へ――経済政策の軸足の転換が強く求められています。そのことの重要性は、経済人からも、また少なくない経済専門家からも、共通して主張されるようになってきつつあります。ここでもわが党の綱領と情勢との響きあいを実感いたします。

 雇用、社会保障、食料と農業、地球環境、消費税、投機マネー、マクロ経済政策――どの問題でも、「こんな社会でいいのか」というわが党の根本的な問いかけ、綱領の立場にたったわが党の提言・主張が、国民多数の気持ちと合致し、情勢と響きあっています。日本の前途を真剣に考えるならば、綱領に明記された経済的民主主義にたった改革は避けて通れません。そのことが、この十カ月の情勢の進展のなかで、生き生きと実証されていることを全党の確信にし、総選挙勝利にむけて意気高く奮闘しようではありませんか。

(「第6回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告」赤旗 200807013)

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◎「日本経済の健全な発展のためには、「外需頼み」から内需主導に、そして大企業から家計・国民へ──経済政策の軸足の転換が強く求められて」と。