学習通信080820
◎「構造改革」路線は根本から転換すべき……

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大機 小機

主権者不在の日本経済

 日本経済の真の目標とは何か──。この夏、お盆に戻ってきた先祖が嘆いた。いわく、政治や企業は何か社会の目標なのかをはき違えており、そのあおりで、主権者である国民の目に輝きがないのだと。経済が発展するには、政治や企業経営の洗練が必須である。その一環として、特定の利害関係者を優遇する状態からの脱却が求められる。政治においては、汚職や我田引水的な政策を排除し、全国民的な政策を追求することである。企業経営においては、長期的な観点に立って、企業価値を向上させることが必要となる。

 では、具体的に何をすべきなのか。この点で、現在の政治や企業経営は目標設定を誤っている。金融政策と企業経営について事例を示したい。

 まず、金融政策に関して、低金利の継続が望ましいとの政府の意識は、中小企業と政府財政の優遇をもたらし、誤りである。物価が急騰して金利の引き上げを余儀なくされるのは好ましくないが、そうでないのならば、高金利は経済活動が良好な証拠である。良い金利上昇をもたらすために何をなすべきか、それを考えるのが政治の役割である。

 千五百兆円という個人金融資産を生かすには、高い金利が好ましいとも説明することができる。ゼロに近い金利しか払えないのなら千五百兆円は宝の持ち腐れである。現在、国民の間に無気力感が漂っているのは、過去の蓄えが果実を生まないからである。

 次に、企業経営に関してはどうか。二〇〇二年から始まった戦後最長の好況とは、企業にとっての好況でしかなかった。賃金が上昇せず、労働分配率が低下を続けた状況は、企業価値の向上を錦の御旗にした従業員いじめとしか思えない。人材は企業価値の重要な構成要素である。企業価値を継続的に高めるには従業員の働きを正当に評価し、十分な対価を支払わなければならない。次の好況期に企業が果たさなければならない宿題は、従業員の処遇改善である。

 日本経済は輸出と設備投資に依存している。その設備投資も、海外需要の増大に対応しただけである。他方、国内の消費支出は低調なままである。この背景には、賃金や利子の面で、国民に対する所得の分配を滞ったことがある。国の繁栄とは、消費者であり主権者である国民の満足度合いの向上にある。その国民の目に輝きがなければ、何のための経済成長なのか、理解することはできない。(癸亥)

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経済時評
竹中氏の懲りない「改革」

 竹中平蔵氏(慶応大学教授)が、公明党の機関誌『公明』八月号の特集「日本復活に何が必要か」のなかで、巻頭論文「改革止めれば日本は衰退」を寄稿しています。

 周知のとおり竹中氏といえば、小泉内閣の金融、経済財政、郵政民営化などの担当大臣を歴任し、「新自由主義」構造改革路線の旗振り役を務めた人物です。その竹中氏がいまどんな「日本復活」の処方せんを提案しているのか、いささか興味をそそられました。

 が、一読して、そのあまりにも無反省な「改革」論に、正直言ってあきれてしまいました。

「改革」が進まないから消費が低迷しているというが…
 竹中氏は、まず「日本経済の現状が厳しいのはなぜでしょうか?」と問いかけ、その原因は、次の三つだと言います。

 (1)「改革が進まなくなっている」との不安から「期待成長率が下がって、消費も投資も減少」。

 (2)「コンプライアンス(法令遵守)不況」。

 (3)ドル安による円高で「外需が減少」。

 第一の、「改革が進まない」↓「期待成長率が下がる」↓「消費も投資も減少」という三段論法についていえば、いま消費が低迷しているのは、そんなことが原因ではありません。小泉「構造改革」による貧困の拡大、家計の負担増、物価高こそ、消費低迷の最大の原因であり、そのために「新自由主義改革」路線は国民の批判をあびて頓挫したのです。

 第二に、竹中氏の言う「コンプライアンス(法令遵守)不況」とは建築偽装や食品偽装にたいして規制を強化したから「一気に売上げが落ちて(不況になった)」、つまり「法令遵守」が不況の原因という“珍説”です。

 第三に、円高による外需減少をドル安のせいにしますが、問題にすべきは外需頼みのゆがんだ経済成長のあり方です。経済構造を内需型に改革することこそ大事ですが、竹中氏はそのことにはまったくふれません。

 総じて、竹中氏の現状認識には、現在の世界と日本の資本主義が直面する深刻な矛盾を客観的に分析する立場が感じられません。

 今日の資本主義では、大企業中心の新自由主義的な資本蓄積のために、富が大企業、大金持ちに集中し、それが巨額な金融資産(過剰な貨幣資本)として金融危機を起こし、また投機マネーとなって原油や穀物を暴騰させています。

 一方に膨大なワーキングプアと貧困、他方に法外な富の累積という異常な資本蓄積のあり方―ここに現代の新自由主義的資本主義の矛盾の根源があります。しかし、こういう現状認識を竹中氏に求めるのは、どだい無理な話かもしれません。

お手本だった米国流の「新自由主義改革」がこけてしまって…
 続いて竹中氏は、「日本復活」の処方せんとして、次の三つの「ナショナルプロジェクト」をあげています。

 (1)「羽田空港の拡充」。

 (2)「法人税の引き下げができるスーパー特区」。

 (3)「東大の民営化」。

 最初の「羽田空港の拡充」では、「キャパシティーを3倍にする」などと提案しています。一昔前の田中角栄流の「土建国家」を思わせるような大型開発プランです。

 次の「法人税の引き下げ」は、財界が渇望している要求です。竹中プランは、それを「特区」にして、地方を法人税切り下げ競争に巻き込むことで実現しようというわけです。それは財界・大企業にとっては願ってもない提案だとしても、地域経済にとっては、さらなる格差を拡大するだけでしょう。

 「東大の民営化」についていえば、小泉内閣の「郵政民営化」に続いて“柳の下のどじょう”をねらっているのかもしれません。しかし、東大を「世界のトップ5」の大学に押し上げるための民営化といっても、あまりにも論理が飛躍しているといわざるをえません。

 竹中氏は、こうした三つのプロジェクトで「日本を強くし、地域を活性化できる」と約束しますが、その理論的根拠は不明です。

 もともと、竹中氏が旗を振った小泉「構造改革」には、独自の経済理論の裏付けがあったわけではありません。たかだか「市場に任せればすべてうまくいく」という「新自由主義」派の経済学をメインストリーム(主流)などと称して、米国流の「新自由主義改革」をお手本にしたものにすぎませんでした。

 いま、そのお手本の米国がサブプライムローン(低信用者向け住宅ローン)の破たんで深刻な金融危機に見舞われています。その惨たんたる状況が世界中で明らかになりつつあるときに、「改革止めれば日本は衰退」などと叫んで、「羽田空港の拡充」や「東大の民営化」を提案しても、説得力はありません。

 「改革」のお手本だった米国がこけてしまったのに、それでも懲りずに「改革」続行の旗を振り続けているというのが実態でしょう。

 それにしても、連立政権与党の機関誌が、いまだに、こうした無反省な「日本復活論」を巻頭にかかげているとは、少しお粗末すぎるのではないでしょうか。(友寄英隆)
(「赤旗」20080726)

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主張
経済対策
「暮らし重視」をいうなら

 福田内閣は、八月末にむけて「安心実現のための総合対策」の名称で、物価高などへの緊急対策を含む経済政策をとりまとめる準備をすすめています。

 「総合対策」の策定が急浮上した背景には、景気が後退局面に入ったとの判断から、財界が景気対策を強く求めていることに加え、「暮らし重視」の姿勢を国民にアピールすることで、福田内閣の不人気になんとか歯止めをかけようとのねらいがあります。

家計脅かす原因直視こそ
 いま国民の暮らしは、失業・雇用不安、低賃金、物価高、重税などが重なって、かつてないほど悪化しています。とりわけ年金生活者や病気で苦しむ人のいる家計は、相次ぐ医療制度の改悪や福祉削減、物価急騰で生活苦に拍車がかかっています。また燃油や食料品など原材料の高騰によって、農漁業者、中小業者の経営は廃業寸前の耐え難い状態に追い込まれています。

 福田内閣が「暮らし重視」の緊急対策をいうなら、その中身は、いま現実に家計を脅かしている原因を直視し、国民の切実な要求をとりあげて、それを緊急に実現するものでなければなりません。

 ところが、今回、福田内閣が準備している緊急対策の重要な特徴は、それを「総合対策」(総合的な経済政策)の中に含め、財界・大企業が要求する「成長戦略」の一環に位置づけていることです。十一日に開かれた「総合対策のための政府・与党会議」では、「総合対策」の基本になる「考え方」の第一に「改革を通じて経済成長を実現」、第二に「財政健全化路線の下」をあげています。

 いま「経済成長の実現」をかかげるなら、これまで六年間の「構造改革」路線のもとでの「経済成長」がだれのための成長だったか、真摯(しんし)な反省が必要です。

 「戦後最長の経済成長」といいながら、「繁栄」したのは一握りの輸出大企業だけでした。自公政権や財界は、「大企業が栄えれば、いずれ家計におよぶ」などと言い続けてきましたが、国民の暮らしは苦しくなる一方でした。さらに、自公政権の「財政健全化路線」そのものが、国民の暮らしを苦しめてきました。

 福田内閣の経済政策や予算編成の指針となる「経済財政改革の基本方針」(「骨太方針〇八」)では、社会保障の自然増を毎年二千二百億円も削減する方針の継承を盛り込みました。七月末に閣議決定した来年度予算概算要求基準でも、「財政健全化路線」の名で、それを確実に実行するとしています。こうした路線の推進と「安心実現」「暮らし重視」とは、まったく相いれません。

経済政策の軸足転換して
 日本共産党の第六回中央委員会総会(六中総)決定では、国民生活防衛の緊急対策として「最も深刻な被害をうけている農業関係者、漁業関係者、中小・零細企業などにたいして、直接補てんで燃油の価格を下げること、減税措置をおこなうこと」「福祉・医療・教育などの分野にも、政府としての負担軽減策」を要求しました。

 国民生活の防衛のためにも、「外需頼み」から内需主導に「経済成長」のあり方を変え、大企業から家計・国民へ、経済政策の軸足を転換することが不可欠です。そのためにも、「構造改革」路線は根本から転換すべきです。
(「赤旗」20080817)

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◎「政治や企業は何か社会の目標なのかをはき違えており、そのあおりで、主権者である国民の目に輝きがない」と。