学習通信080828
◎消費者がやかましい……

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《春秋》

 甚だ・非常にという意味の「弥(いや)」と、騒がしい・うるさい、を表す「かまびすしい」をつなぎ合わせた言葉を、四字熟語の喧々囂々(けんけんごうごう)でおなじみの漢字を使って、弥囂あるいは弥喧と書く。「やかましい」は、これが転じたものともいわれる。

▼やかまし過ぎるように一部の政治家は感じるかもしれないが、年に100万円単位のお金があいまいな事務所費の名目で消えていくなど普通の国民からすると、到底了解できないのである。一昨年暮れ以来閣僚が何人も窮地に立たされ、政治資金規正法の2度の改正に至った中で、そういう政治資金を巡る国民の感覚を政治家は知ったはずだ。

▼職責がある食の安全について「消費者がやかましいから徹底してやっていく」と述べたくらいだから、太田誠一農相は国民の感覚を十分理解しているに違いない。秘書宅を事務所にしながら5年間で事務所費約1500万円を払った訳を、またそのほかの費目の使い道を国民に納得できるように説明してもらいたい。

▼自民党幹事長によれば農相の「やかましい」は「物事に詳しい」の意で関西以西ではそんなふうに言うとか。それはそれで結構だ。消費者・国民は食の安全にも、政治と金の問題にも「非常にうるさい」または「とても詳しい」。どちらでも、農相が今しなければならないことは同じである。
(「日経」20080828)

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《主張》
「やかましい」発言
太田農水相は謝罪し撤回せよ

 食の安全対策に関連して、「消費者がやかましいから」などと発言した太田誠一農水相にたいし、批判が広がっています。

 太田氏の発言は、「食の安全」に責任を負う閣僚の発言として、とうてい許されるものではありません。太田氏は明確に謝罪し、発言を撤回すべきです。福田康夫内閣が掲げる「消費者重視」の看板も、国民に信用されません。

麻生発言が「火に油」
 太田氏の発言は、福田内閣の改造で農水相に就任してから一週間ほどしかたたない十日のテレビ番組で、中国製の冷凍ギョーザによる中毒事件に関連して行われたものです。「消費者がやかましいから(食の安全を)徹底している」などというのは、果たすべき自らの責任を棚に上げ、消費者を敵視したととられて当然です。

 太田氏は、「日本は消費者が安全性についても堂々とモノをいえる社会だという意味で使った」などと釈明していますが、発言後、謝罪も撤回もしていません。

 しかもこの発言に「火に油」を注いだのが、自民党の麻生太郎幹事長です。十九日の記者会見で、太田氏と同じく福岡県の出身であることをあげ、西日本では「やかましい」は「騒々しい」という意味ではなく、「よく知っているという意味だ」と弁護したのです。

 いったん発言しておいて、その後に問題になると、発言の真意は別のところにあるなどと言い訳し批判を免れようとするのは、責任ある態度ではありません。

 太田氏の発言はテレビ番組という公の場で行われたものです。発言は単に失言といったものではなく、閣僚としての責務に反する暴言です。謝罪も撤回もせず、あれこれ言い訳するだけで済まそうとするのは、公人としての自覚にいちじるしく欠ける行為です。

 だいたい、太田氏の「やかましい」発言については、福田首相も「あまり適切な言葉ではない」と認め、町村信孝官房長官が電話で注意したことになっているのではないのか。閣内からも野田聖子消費者行政担当相らの批判が出ています。太田氏や麻生氏が言い訳するのは、開き直り以外のなにものでもありません。

 「やかましい」発言について言い訳を重ねる太田氏らの態度からは、「食の安全」をめぐる政府の政策への国民の批判に向き合う、真剣な姿勢は全くうかがえません。

 中国製の冷凍ギョーザ中毒事件にしても、原因と責任の追及が求められるのはもちろん、輸入食品の検査体制など「食の安全」を確保する政府の対策に、重大な疑問が投げかけられています。国民の信頼を回復する責任を果たさないで消費者を敵視するような態度を続けるのでは、それこそ「やかましく」批判されて当たり前です。

政権全体の責任にも
 この問題を太田氏や麻生氏だけの問題として片付けるわけにはいきません。太田氏は現職閣僚であり麻生氏は与党・自民党の幹事長です。あくまで発言の謝罪も撤回も認めないなら、任命権者である首相をはじめ政権そのものの責任が問われることになります。

 かつて「投票日に有権者は寝ていてくれればいい」と発言した首相が選挙で大敗しました。批判に耳を貸そうとしないなら、結局は世論と運動で追い詰められることになるのは避けられません。
(「赤旗」20080822)

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社説
強姦重件
放縦と傲慢の果て

 大学にとって「ブランド」が重要であることは言うまでもない。
 大学経営者にとっては、少子化の中で学生を集めるための大事な要素だ。男子学生たちにとっては、若い女性を誘う際に便利な看板ともなっている。早稲田大学などの学生5人が、パーティーに参加した女子学生を集団で強姦したとして逮捕される事件が起きた。学生たちは大学のサークル活動として若い女性を集め、繰り返しパーティーを開いていた。有名大学への信頼感を悪用し、女性を酔わせ、介抱するとだまして集団で暴行した疑いがもたれている。

 卑劣としか言いようのない行為だ。
 逮捕されたサークル代表は28歳だ。9年前に早大に入学後、いったん退学になったが、再入学していた。「早稲田ブランド」で女性を誘ったり、カネもうけをしたりするのが在籍のねらいだったのだろうか。

 警察庁が犯罪の統計をまとめる際、強姦は殺人、強盗、放火とともに「凶悪犯」に分類される。しかし加害者の側に、それだけ凶悪な犯罪に手を染めているという意識があるかどうかは疑問だ。今回も逮捕された学生たちは「合意のうえだった」と容疑を否認しているという。強姦事件は被害者が泣き寝入りすることが多く、摘発されるのは氷山の一角だ。今回も事件が明るみに出てからようやく、同じような被害に遭ったという相談が警察に数件寄せられている。性犯罪の被害者がなかなか警察に届けないのは、被害にあったこと自体を他人に知られたくないという思いと、精神的な打撃がきわめて大きいからだろう。被害者にとつて、それだけ深刻な犯罪なのだ。

 にもかかわらず、太田誠一・元総務庁長官のように信じられない発言をする人もいる。鹿児島市で開かれた討論会で「集団レイブする人は、まだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」と述べた。集団での強姦を「元気の発露」とみるとは、論評にも値しない発言だ。後になって「国民を代表する国会議員として誠に不適切だった」と謝罪したが、政治家としての資質という以前の問題ではなかろうか。

 早大では、別の学生が知り合いの女性と共謀して、女性にわいせつな行為をした会社員を恐喝した容疑で逮捕されている。
 二つの事件が明らかになった後、早大は全学生約5万人に電子メールを送った。

 「早稲田大学は学生諸君を大人とみなし、諸君の自由を尊重してきましたが、自由と放縦とを混同してはなりません」 「『ちょっとぐらいなら』と思う心が一片でもあれば、それは甘えであり、見方によっては傲慢そのものです。早稲田大学の学生としての誇りと、傲慢は別物です」

 放縦と傲慢の果ての性犯罪だとすれば、ブランドの回復は容易ではない。
(「朝日」20030628)

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太田発言を取り上げた学習通信20030730 を参照してください。

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◎「批判に耳を貸そうとしないなら、結局は世論と運動で追い詰められることになる」と。