学習通信081127
◎二十一世紀に女性運動が大きな役割を果たす……

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女性の暴力根絶

キッドマンさん国連に500万署名

 【ニューヨーク=時事】国連婦人開発基金(UNIFEM)の親善大使を務める女優ニコール・キッドマンさん(四一)は二十五日、国連本部で行われたイベントで女性への暴力根絶を求める約五百六万六千五百人分の署名を瀋基文事務総長に手渡し、「これは署名であるだけでなく、数百万の人々の希望と期待そのものです」と強調しました。約六十カ国の首脳・閣僚の署名も含まれており、日本からは麻生太郎首相らが名を連ねました。

 キッドマンさんはまた、これより先の会見で、学校新聞の記者という少女に「あなたがここにいるのは素晴らしいこと。あなた方こそわたしたちが手を差し伸べようとしている人だから」とやさしく呼び掛けました。
(「赤旗」20081127)

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本と話題
不破哲三著
『社会進歩と女性
 ──「女性の世界史的復権」の時代がはじまっている──』

男女平等の過去・現在・未来 21世紀女性運動の役割鮮明に

石川康宏

 この本は、二〇〇八年九月に行われた、女性講演会での講演をもとにしたものです。

 主題は「今日の世界と日本における女性の地位」で、第一章「女性解放の道──古典から学ぶ」、第二章「世界で女性の地位はどう変わってきたか」、第三章「日本社会では異常な女性差別が続く」、第四章「世界と日本を動かす主役として」という構成になっています。

世界変化の追究

 著者は、最初に、女性問題を「ルールなき資本主義」の最大の焦点の一つだと述べていますが、これはきわめて重要な位置づけです。男女平等を社会改革の副次的な課題だとする視野の狭さが、私たちの身のまわりにも少なからず残っていますので。

 第一章では『家族・私有財産・国家の起源』でエンゲルスの卓見が紹介され、特に人類共通の財産となりつつある内容が、次のようにまとめられます。一つは男女平等には法律的平等だけでなく社会的平等が必要なこと、二つはそこで決定的な意義をもつのが「女性の公的産業への復帰」であること、三つはそれが女性の仕事と家庭の両立を保障する社会制度を必要とすること、四つは不平等の経済的基盤を除いてこそ平等が発展するということです。

 第二章で著者はこの講演の準備過程での最大の収穫が、女性差別撤廃条約(一九七九年国連総会で採択)とその後の世界変化の追究にあったと述べています。戦後の世界では「女性の公的産業への復帰」が大きく進みましたが、女性差別撤廃条約はこれを支える社会制度づくりを、世界共通の緊急課題と認める意義を持ちました。これを受けて著者は、この条約を転換点として、かつてエンゲルスが未来社会に希望を託した「女性の世界史的復権」が、資本主義の枠内で開始されたと結論します。ここは本書のもっとも重要なポイントとなる点です。

また「同一価値労働同一報酬」(一九五一年ILO)の原則が、職場での男女平等を推進する重要なルールの一つだとされている点も、しっかり確認しておきたいところです。

社会体制転換へ

 第三章では、日本における男女平等の実態が、各種の国際機関によって落第国家≠フ認定を受けていること、こうした遅れの最大の原因が利潤第一主義を最優先してきた財界と政府与党の姿勢にあること、そして戦前の「家」制度を美化する靖国派が、これを右から応援する反動的な応援団となっていること等が述べられます。

さらに資本主義の枠内で開始された「復権」が、その枠内で十分に達成されないところを残せば、それは社会主義でより全面的に実現すれば良いと、民主的な要求の実現と社会体制の転換との関係を柔軟にとらえているところも重要です。

 最後の第四章では、日本における女性運動の歴史と到達点を、新日本婦人の会に焦点をあてながらふりかえり、世界全体が大きく変わる二十一世紀に女性運動が大きな役割を果たすことへの強い期待が述べられます。

 著者は、女性差別撤廃をすすめる戦略戦術≠フ第一に、社会的な啓発の必要をあげていますが、まずは本紙読者のみなさんに、男女を問わずこの本の精読をお勧めしたいと思います。
 (いしかわ・やすひろ 神戸女学院大学教授)
(「赤旗」20081109)

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新刊紹介『社会進歩と女性』(不破哲三著)
大きな確信と勇気を女性に

日本共産党新婦人内後援会代表委員
高田公子

 日本共産党新婦人内後援会が開いた女性講演会(九月七日)での不破哲三さんの講演「社会進歩と女性──『女性の世界史的復権』の時代が始まっている」が、このたび冊子として出版されました(頒価八百円)。不破さんの講演は、さまざまな苦労を背負いながらも、社会の進歩、発展のために、日々活動を積み重ねている女性に、大きな確信と勇気、元気、感動をあたえ、私たちへの最大の励ましとなっています。

 不破さんが講演の最初にふれた『家族・私有財産・国家の起源』が、この『月刊学習』に連載中の「古典への招待」でも、ちょうど三回にわたってとりあげられています。エンゲルスは、古代社会で起こった女系から男系への転換をさして、「女性の世界史的な敗北」と名づけ、すでに女性差別のない社会を展望し、「女性の公的産業への復帰」によるその実現の道筋を明らかにしていました。本誌読者のみなさんが、二十一世紀のいま、世界はその方向での社会変革が大きな前進をとげつつあり、「女性の世界史的復権」の時代が始まっていることへの確信を、この本を手にして下さって共有できればうれしく思います。

世界的な女性運動の高まり

 戦後の世界資本主義の高成長が、「女性の公的産業への復帰」を促し、国連の提唱をうけ、一九七五年が「国際婦人年」と位置づけられ、これを軸に世界的に女性運動が高まりました。これらが、一九七九年国連総会の「女性差別撤廃条約」採択に実り、世界各国で、男女の同権・平等、女性差別撤廃のルールにもとづく「社会のつくりかえ」の努力がはじまったのです。不破さんは、エンゲルスが解明した「女性の世界史的な敗北」に対して、「女性の世界史的復権」の時代が始まっているというワクワクする言葉を、講演で、はじめて私たち女性にプレゼントしてくれたのです。

 そしていま、すべての国に共通する世界的な目標として、政治的平等だけでなく、女性の社会的平等の目標、「女性の公的産業への復帰」がカギであり、それを可能にする社会的条件をつくりだすことが、体制の違いをこえた、各国に共通する世界的課題であることを指摘。いま世界の多くの国々は、社会の作り直しの事業が大きな規模ですすんでおり、男性と女性の差別と同権の間題でも、世界は大きな変革の時代に入っていることを明らかにしています。

なぜ女性差別が残っているか

 日本政府は「差別撤廃条約」を批准はしたものの、日本社会の現実は、それに見合うものになっていません。不破さんは、賃金格差の国際比較や家族支援の比較などのグラフや統計、表を多数引用しながら、異常な女性差別が続く実態を告発しています。ILO(国際労働機関)や国際人権規約委員会、国連女性差別撤廃委員会などからも、日本政府への批判と勧告が相次いでいるにもかかわらず、それを無視し続けている事実には、改めて怒りがこみあげてきます。

 また日本でなぜ女性差別が根づよく残っているのか、不破さんは、大企業の利潤第一主義が最優先で横行する社会であり、それを擁護する日本政府の面従腹背の姿勢、さらに侵略戦争とその時代の体制を擁護する靖国派≠フ存在を指摘しています。だからこそ、この大もとにむけて、女性たちの共同をひろげ、粘り強く、草の根からの私たちのがんばりが求められていることの重要さも納得できます。

日本女性の問題解決の力

 最後に不破さんは、日本の女性と社会は、この間題を解決する力と条件を持っていることを具体的にあげています。新婦人の果たしている役割についても、「おか目八目」で、値打ちを語ってくれました。日本の女性が、異常な差別に負けず、それを打破するエネルギーを発揮していることへの信頼が感じられ、胸が熱くなりました。

 私たちが生きている二十一世紀は、古いものを乗り越える新しい力が日々おこる時代であり、女性差別から男女の同権へ、この問題の解決は、日本における「ルールある経済社会」づくりの柱でもあるとの指摘は、その課題に日々取り組んでいる私たちへの何よりの励ましです。

講演のきっかけは

 今回の講演のきっかけは、六年前の新婦人創立四十周年のつどいで、不破さんに「女性が美しく輝く世紀に」という講演をしてもらったことでした。三十分という限られた時間でしたが、女性運動に携わる私たちに大きな示唆を与えてくれました。

とくに、「女性差別撤廃条約」の意義について、女性解放の課題がすでに資本主義の段階で世界の共通課題として打ち出されるにいたった、社会の変革の運動を追い越した、そういってよいほどの意味があるとの問題提起はとても新鮮でした。

また、私たちは、日頃の運動をつうじて、国連をはじめ内外の女性運動が大きく発展するなかで、「女性問題でこそ日本共産党」を大きくアピールできるときであり、この分野でも、今日的に日本共産党の値打ちをうちだすときとの思いをつのらせていました。

 同時に、未来社会論の大きな発展を含む新しい党綱領の制定も、胸躍るもので、今日の到達点にたった、科学的社会主義の党の女性解放理論をしっかり学びたいという願いも強く湧きあがっていました。女性史にも、新しい綱領にも、さらに国連や世界の理論的到達を含め、あらゆることがらに造詣の深い不破さんに、日本共産党綱領と女性解放について講義していただきたいとの思いが高まって、直接お願いに伺いました。受験生よろしく、いくつもの質間をうけ、無事、引き受けてもらったときは、本当にうれしかったです。

 それからの何カ月間は、各方面に新婦人や国連関係、女性関係の資料請求がつづき、わからないところは、直接、担当の者に電話してくるなど、本人が語っているとおりの「集中勉強」。そのすごさは講義の後、不破さんから見せていただいた、「涙のあとの学習ノート」(いらなくなった雑誌何冊もに、この間不破さんが読みこなされた資料がびっしり張ってある)に感動しました。

説得力のある不破さんの講義はすごい研鑽のなかから生み出されていることをこんなにも身近に感じることができたのも、私にとっては大きな収穫でした。改めて、宮本百合子の「若いときは情熱だけでなんとかやっていけるが、本当にふかーく、勉強しないと年を重ねるにつれて不断の新鮮さ、不断の進歩がみられなくなる」をかみしめながら、不破さんには到底およびませんが、日々新たな挑戦にとりくむ努力をと決意しています。
(「月刊 学習 2008年12月号」日本共産党中央委員会 p45-47)

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「女性の世界史的復権」の時代が始まった

 この条約(女性差別撤廃条約)のもつ画期的な意義をはっきりとつかむために、これまで見てきたことを、整理してつかみ直してみましょう。

 私たちは、エンゲルスが女性の社会的平等の実現を展望し、そのカギをなすのが「女性の公的産業への復帰」だとし、そのことを可能にする社会的条件づくりへの期待を、来るべき社会変革に寄せたことを見てきました。

ところが、現実の歴史の進展のなかで、社会変革の以前に、世界の多くの国ぐにが資本主義の段階にとどまっている段階で、「女性の公的産業への復帰」が世界の現実となり、それをささえる社会的条件づくりが当面の緊急問題になってきたのです。それに答えをだしたのが、一九六〇年代〜七〇年代の女性の世界的運動と国連を中心にした国際的討論でした。

 いまの世界には、社会主義をめざす国もあれば、資本主義の国もあり、政治的独立をかちとったが、経済的には発展途上だという国もあります。そういう世界で、すべての国に共通する世界的な目標として、政治的平等だけでなく、女性の社会的平等の目標が宣言され、「女性の公的産業への復帰」がそのカギであること、それを可能にする社会的条件をつくりだすことが、体制の違いをこえた、各国に共通する世界的な課題であることが確認されたのです。

そして、現在の条件のもとで、それを達成する方法として、(1)育児などへの社会的支援の網の目の拡大・充実とともに、(2)家庭の仕事における男性と女性の平等の立場での共同が社会生活の公認の原則となり、この立場で、社会の慣習・気風・観念の変革をはかる大運動が、世界の大方針として宣言されたのです。

 これから見るように、世界の多くの国ぐにでは、この確認にもとづく社会の作り直しの事業が、大きな規模ですすんでいます。男性と女性の差別と同権の問題で、世界は大きな変革の時代を経験しつつあるといってもよいでしょう。

 エンゲルスは、古代社会で起こった女系から男系への転換をさして、「女性の世界史的敗北」と名付けました。これは、ヨーロッパではいまからおよそ二千〜三千年から数千年前に起こった変革だとされています。それ以来、男性の支配を特徴とする時代が続いてきたわけですが、「女性差別撤廃条約」をかちとって以後の世界は、長く続いたこの時代を終わらせる、この分野での大きな変革の時代を迎えています。

 私は、現代の世界では、この条約を転換点として、「女性の世界史的復権」の時代が始まった、と言ってよいと思います。まさに、この条約は、新しい時代を開く転換点的な意義をもったのであり、そのことは、国連総会での条約採択から今日まで約三十年間の世界の変化が、具体的に実証しているところです。
(不破哲三著「社会進歩と女性」日本共産党新婦人内後援会 p65-67)

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◎「私たちが生きている二十一世紀は、古いものを乗り越える新しい力が日々おこる時代であり、女性差別から男女の同権へ、この問題の解決は、日本における「ルールある経済社会」づくりの柱でもある」と。