学習通信081203
◎20のヘッジファンドが総資産の3分の1を動かしてい……

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十字路
ヘッジワァンドの終えん

 ヘッジファンドが存亡の瀬戸際にある。信用力の低い個人向け住宅融資(サプブライムローン)問題がビジネスモデルを揺さぶっている。

 ヘッジファンドは複雑な取引で高い運用成績を誇ってきた。規模は一時、二百兆円を超えた。

 だが状況は一変した。高い利回りを得るための債務担保証券(CDO)に積極投資。投資額は銀行の三分の一にものぼり、サプブライム問題で大きな損失を被った。運用成績は悪化。二〇〇八年の年初からの利回りがマイナス一〇%を超えるファンドが増えた。高リスク・低りターンになり投資家が逃げ始めた。

 資金繰りも厳しい。公的資金を投入された銀行の融資はは投機より実業が優先。ファンドはレバレッジ(外部負債)で利回りが高められないだけでなく、解約に備えた借り入れすらできない。

 ビジネスモデル自体も限界に来ている。運用手法はブラックボックスとしてきた。しかし、中身が見えず高利をうたったサブプライム商法は破綻。当局は投資家に中身の見えない商品に投資するなと呼びかけている。

 多くのファンドが租税回避地(タックスヘブン)に籍を置く。規制と税金逃れが目的だが、金融サミットは不透明で不公正な取引にはメスを入れる方向を示した。

 こうした要因が重なり清算や償還停止したファンドは〇八年に入って七十を超える。運用規模は百五十兆円台まで減り、百兆円程度までの縮小予想も出ている。

 投資家が逃げ始めたファンドは保有資産を投げ売っている。それが世界的な株安の一因だ。

 ヘッジファンドには機関投資家が投資していた。その価値が下がり、機関投資家の含み損が拡大。金融不安を増幅する要因になっている。

 一部外資系金融機関は富裕個人にヘッジファンドヘの投資を勧めている。情報の非対称性を利用して、売り技ける狙いとみられる。厳しい規制が欠かせない。(花盗人)
(「日経 夕刊」20081128)

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金融危機
インタビュー
投資家
ジョージ・ソロス氏

「政府の役割」拡大不可避

 世界的な市場混乱が続き、日米欧は同時不況の様相を強めている。危機の原因はどこにあり、政府はどんな役割を果たすべきか。国際的な投資家のジョージ・ソロス氏に聞いた。

 ──金融市場と景気の現状をどうみますか。

 「(世界恐慌後の)一九三〇年代以来、最悪の金融危機だ。悲観的にみていた私の見通しをも上回る厳しさである。当局は市場安定化策をとり、銀行間の取引金利はやや落ち着いたが、他の市場は混乱が続いたままだ」

 ファンド急減ヘ

 ──投資家であるヘッジファンドの行方は。

 「ファンド全体で運用資産の二〇%かそれ以上、たぶん二五%の損失を被り、解約の圧力に直面している。このままいけば運用資産規模は少なくとも半減する。四分の三減ってもおかしくない」

 ──金融当局の対応をどうみますか。

 「資産バプルを制御するのは当局の責任だ。だがグリーンスパン、バーナンキの両米連邦準備理事会(FRB)議長はインフレには責任を負うが、資産バブルに対する責任については明白に拒否してきた。金融当局は信用の増減や資産価格の動きに目を配るべきだ」

 ──資産価格を制御する政策手段は。

 「マネーサブライ(通貨供給量)や金利の調節では十分でない。株式取引の担保の掛け目や必要な最低資本の管理といった手段も活用すべきだ。バブルが膨らむと強気心理がまん延するので、担保の評価を下げるなどしてブレーキをかける。バブルが崩壊し弱気になっているときには緩和する対応が必要だ」

 ──ファンド規制論も出ています。

 「ファンドは借り入れなど信用を元手に活動する。信用は制御されるべきだ。従ってファンドも規制される必要がある。リスクの高いファンドヘの融資には、より多くの準備金を積ませるという形で、銀行を通じて規制することが可能だ」

 ──政府は市場に対しどう臨むべきですか。

 「政府の介入なしには市場が崩壊してしまう局面にある。市場は政府の積極的な介入を必要としている。オバマ次期大統領が言っているのもそんなところだ。ポールソン財務長官は場当たり的で、常に後手に回っていた。オバマ政権の政策はもっと一貫性のあるものになると予想している」

 ──オバマ政権は大きな政府になるのでは。

 「政府の役割が大きくなるのは避けられない。民間需要がない現状では、政府だけが有効需要を創造できる。財政赤字は増加するだろう。FRBの資産規模も拡大する。マネーの供給を増やしても信用乗数が落ち込んでいるので、信用収縮を食い止めるのは難しい。円を除く通貨に対してドルがむしろ堅調なのは、米国の信用が収縮しているからだ」

銀行資本増強を

 ──ビッグスリーの救済論議については。

 「今のままの経営形態で再建できるかどうか疑問だ。公的資金で救済する道理はない」

 ──銀行システムも揺らいでいます。

 「銀行への公的資金の注入は正しい選択だし、私は早くからそう主張してきた。日本の銀行危機が十年間も長引いたのは、銀行が不良債権をバランスシート(貸借対照表)に抱え込むことが許されたからだ。今また米国の銀行が保有資産を時価で洗い替えせずに、満期まで保有することが容認されれば、同じ道をたどる。金融機関は評価損の計上を急ぎ、資本を増強する必要がある」(聞き手はニューヨーク=編集委員 滝田洋一)
(「日経」20081124)

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Q ヘッジファンド
A 闇に包まれた投機専門集団。大銀行が巨額融資

 大金持ちや金融機関が私募形式(公募ではなく「仲間うちで」、と思えばよいでしょう)でお金を出し合い、投機のプロをマネージャ一とする投機専門のグループです。

 しかもアメリカの証券取引委員会(SEC)の規制をうけないように少人数で組織し、税金のかからない国(タックスヘイブン)に設立されるのが特徴で、実体は闇に包まれています。

 マネジャーは実績に応じて非常に高額な報酬を手にします。もうけを出すためにありとあらゆる投機のテクニックと莫大な資金をつかって投機を繰り返し、97年タイから始まったアジアの通貨危機を引き起こしてもうけたり、サブプライムのギャンブルでも主役の仲間に入ったり、原油や穀物など生活必需品の高騰を招くことでも悪名を高めました。

 ヘッジファンドは世界に1万社近く存在し、1兆4千億jの資金を運用している(06年末)といわれていますが、最大の20のヘッジファンドが総資産の3分の1を動かしているといわれます。

 彼らの役割がいかに大きいか。ニュ一ヨ一ク、ロンドンなどの株式市場での40〜50%はヘッジファンドの取引といわれています。東京はもっと高いかもしれません。株の値動きは、ほとんどヘッジファンドが仕掛けていると思ってよいでしょう。

 問題は、ヘッジファンドが、なぜこれはどの大規模な投機をおこなうことができるのか、ということです。今回の金融危機で、米欧の超一流銀行がヘッジファンドに巨額の融資をし、彼らとほとんど一体化していた実態が浮かび上がってきました。金融の巨人である大銀行が銀行や証券会社の垣根を超えた「巨大複合金融機関」となり、自らギャンブラーとなって今回の金融危機の主犯ともいえる役割を果たしたのです。
(「女性のひろば」2009年1月号 日本共産党中央委員会 p26-27)

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◎「巨大複合金融機関」と。