学習通信081215
◎結婚のメリットとデメリット……

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争論
結婚って必要なの?

 二〇〇五年の国勢調査によると三十〜三十四歳の未婚率は男性47%、女性32%と十年前よりそれぞれ10%前後上昇。生涯未婚の人も増加の一途だ。結婚は必要か。〇七年に金婚式を迎えた識者と、未婚の論客に考えを聞いた。


作曲家 神津 善行氏
他人と暮らし自分知る

──結婚五十年の感慨は。

 「家族の誰も大病をせず大きな事故にも遭わず、大過なく過ごせたという点で運のいい夫婦だと思う。小さな問題は夫婦で乗り越えてきた。子どもたちが独立した今は、それぞれが自分の仕事を持ち、夕飯のときだけ顔を会わせる生活をしています。いつも手をつないで、ではなく、お互い別々の人生を全うする。その上で、いっとき時間を共にする。最近、二人で夕飯を食べながら、この時間が持ちたくて結婚したのかなあと思う」

──それは夫婦でないと得られない時間か。

 「親友でも仲の良いきょうだいでも無理でしょうね。何でもないような時間だけど、長年一緒に暮らし、苦楽を共にした者同士だからこそ持てる濃厚な時間なんです」

──そういう関係は望まれていないのか。

 「そんなことはない。未婚者のほとんどはいい人がいたら結婚したいと思っている。いつか現れると思っているうちに年齢を重ね、そのうち一人のほうが自由だし、無理して結婚しなくてもいいやとなる。自分を大事にしてくれる人に出会えたら結婚しますよ。見つからないだけなのに、人に聞かれたら、結婚しない主義ですと言っている。僕はそう思います」

──なぜ出会えないのか。

 「昔は身近な狭い世界しか見えなかったから、近所の人とか知り合いの紹介とかで出会って、小難しく考えずに結婚した。結婚生活は探り探りやっていくものだとも思っていた。今は情報があふれ、特に女性はテレビや雑誌でかっこよくて若くして高給をとる男性の話を見聞きすると、普通のサラリーマンじゃつまらないと思ってしまう。相手に求めるレベルが高くなってしまったんです」

──未婚者への助言は。

 「自分は結婚しないと決め付けないで、常にチャンスがあると思っていないと、気持ちがすさんでくる」

──結婚しないと不幸か。

 「不幸だし不自然。人間は結婚して子どもを育て、次の世代も結婚して子どもを育ててきた。その繰り返しの輪の中に私は入りませんというのは、人間として面白いことが少なくなるし、人生のどこかでミスが出てくる」

──輪の中に入れと。

 「人間は一人では生きられない。私は亡くなった兄に妻を頼むと言われ、義姉の面倒を二十年近くみています。結婚によって縁が生まれた義姉にやっていることは、私の子どもたちに感性として伝わっていく。そういう人間社会の営みの輪を自分一人でつくれると思ったら大間違いです」

──輪は煩わしくもある。

 「完ぺきな相手なんていない。私は自分を百のうちせいぜい五十の人間と思っている。結婚すると隠されていた面が見えてくるし、親せき付き合いも煩わしい。それを我慢するのは嫌だというのではなく、どこまでが許容範囲か自分を知ることが必要です。人のせいにしないで謙虚にならないと。人は人と折れ合って暮らしている。調和する力がないと、結婚以外のほかの場面でもうまく生きていけないと思う」

──結婚はすべきか。

 「絶対に一度はするべきです。輪の中に入る気持ちを持ったことがあるかないかでは全然違う。他人と暮らして自分を知り、輪の存在を実感する。うまくいかなければ別れればいい。結婚しなければ何にも分からない。失敗は経験。うかつに結婚できないと思わずに、一度は手を打ってみることです」

タレント 遙 洋子氏
既婚も未婚も息苦しさ

──結婚は人間社会の当然の営みか。

 「営みの輪からどうして独身を外すのでしょうか。なぜ夫婦というセットでなければいけないのでしょうか。結婚が万人に適しているとは限らない。結婚しているかどうかで輪に入れたり外したりするのは疑間」

──未婚者への圧力は。

 「これまで多くの人に結婚しなさいと言われてきました。以前はただのおせっかいだったのですが、今は少子化も家族の崩壊も未婚者のせいだという、いらだちが加わった。独身者には厳しい時代になりました」

──結婚しない選択は理解されにくいか。

 「理解しない人はどんなに説明されても理解できない。私は理解してくれとは言わない。生き方は自由、その建前だけは守ろうよと言っている。それさえ共有できないのでしょうか」

──今まで結婚の機会は。

 「初めから意図して結婚を回避したわけではない。かつては結婚願望がありました。結婚したいと思う男性にも巡り合いました」

──結婚しなかったのは。

 「自分のほしかったものではないと気付いたから。私は自由が好きだと。結婚したら家族に私の時間をあげなくてはならない。独身なら一日二十四時間が私のもの。結婚すると何かを断念したり背負ったりは仕方ない」

──世の夫婦を見て。

 「本当に仲がよくて心から信頼し合っている夫婦って、どれだけいるでしょうね。私の見たたくさんのご夫婦のうち、うらやましいと思ったのは少数。その確率では、人生をかけるにはリスクが高い選択肢に映ります」

──独身は気ままか。

 「いいえ。結婚生活に妥協があるように、独身も仕事や私生活で妥協だらけです。独身が生きにくい社会で、自由を選択することと自由を謳歌(おうか)することは違う」

──老後の不安は。

 「家族が老後を保障するとは限らない。父は私たちきょうだいで介護しましたが、家族による介護がいいとはいえない。本人が嫌がっているのに、善かれと鼻にチューブを突っ込むんですから。親が子に結婚を望むのも、その向こうに幸せがあると信じているからでしょうが、親でも幸せは保障しきれませんしね」

──家族でなければ誰と。

 「私は弱音を吐ける友人たちとネットワークをつくって苦しいときにも支え合っている。介護はそういう関係の延長上にあると思う。危機がきたときに頼れるのは心が優しく強い人。それは別に家族でなくてもいい」

──結婚とは何か。

 「制度です。今までの法律や習慣は多数派の既婚者に合わせてできていた。結婚する理由の一つとして制度としての利用価値も無視できません」

──未婚者は増えるか。

 「増えるでしょうね。多数派になれば制度は未婚者に歩み寄らざるを得なくなるでしょう。だからといって生き方が理解されるとは思わない。未婚者の数が増えて、理解する人としない人がいる。それだけのことです」

──結婚制度は滅ぶか。

 「人は結婚すべきだという画一化がいけないのであって、結婚したい人はぜひしてほしい。でも本当に大事なことは、結婚している人もしていない人も自分のしたい生き方ができているかどうか。今の社会は既婚者にも未婚者にも息苦しさがある。いい夫選びやいい企業選びにとらわれるのではなく、本当にしたいことは何かを自間して、後悔のない自分オリジナルの人生を歩んでほしい」

後記
 かつては誰もがするのが当然だった結婚が、個人の選択に委ねられるようになった。そこで浮上してきたのが結婚のメリットとデメリット。どちらを重視するかの違いが、神津さんと遙さんの意見の相違だろう。かみ合わないように見える二人の論には、実は共通するキーワードがある。「自立」だ。神津さんは互いに独立した夫婦関係を実践し、遙さんは家族に頼らない生き方を選ぶ。結婚するかしないかの選択は自立していることが前提。既婚者か未婚者かを問わず、個人の意思を優先する流れは加速するだろう。(共同通信編集委員・宗像道子)
(「京都新聞」20081213)

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 未来社会での新しい両性関係──一夫一婦婚の完成

 では、その家庭での男性と女性の関係はどうなるのか。

 この問題については、未来社会の新しい土台のうえで、そこに生きる新しい世代が解決し、本当の平等・対等の立場にたった新しい両性関係を築いてゆくだろう、というのがエンゲルスの基本的な見方です。しかし、文章の頭にある、「男性の地位はいずれにしても大きく変えられる。だが女性の、すべての女性の地位も、いちじるしい変動をこうむる」という文章には、エンゲルスの予見の方向は、かなり鮮明に示されているようです。

 最後に、結婚の形態という視点から、未来社会での男性と女性の関係について考察したエンゲルスの文章を紹介しておきます。これも、一八九一年の書きだしの部分にある文章です。


『起源』からの抜粋(その五)
未来社会における結婚の形態。

 未来社会では、一夫一婦婚は、「消滅するどころか、むしろはじめて完全に実現されるであろう」(同前一〇三ページ)。そこでは配偶者の選択に影響をおよぼす経済的顧慮がすべて取りのぞかれ、「相互の愛情以外にはもはやどんな動機も残らない」ことになる(同前一一一ページ)。

「一夫一婦婚からまったく決定的になくなるだろうものは、一夫一婦婚が所有関係から発生したものだということがそれに刻印した一切の性格である。そしてその性格は、第一に男性の優位であり、第二に、婚姻の解消不可能である。結婚生活における男性の優位は、男性の経済的優位の単なる結果であり、後者がなくなればおのずとなくなる。

……きたるべき資本主義的生産の一掃のあとの両性関係の秩序についてわれわれが今日推測できる事柄は、主として消極的な性質のものであって、おおむね、なくなる事柄に限られる。だが、なにがつけ加わるだろうか?

 それは、新しい一世代が成長してきたときに決定されるであろう。すなわち、その生活中に金銭ないしその他の社会的な権力手段で女性の肌身提供を買いとる状況に一度もであったことのない男性たちと、真の愛以外のなんらかの顧慮から男性に身をまかせたり、あるいは経済的結果をおそれて恋人に身をまかせるのをこばんだりする状況に一度も出あったことのない女性たちとの一世代が、それである」(同前一一二〜一一三ページ)。


 以上で、『起源』で展開されたエンゲルスの女性解放論のあらましの解説を終わります。
(不破哲三著「社会進歩と女性」日本共産党新婦人内後援会 p42-43)

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◎結婚……「相互の愛情以外にはもはやどんな動機も残らない」と。